2016年03月22日

「女性にやさしい」企業はもう古い? 女性活躍先進企業のホンネを知ろう

テーマ:就活

ニュースのポイント

 働く女性に大きな影響のある「女性活躍推進法」の施行が4月1日に迫りました。従業員301人以上の企業は自分の会社で女性が活躍できているかどうか、採用者に占める女性の比率や勤続年数の男女差、さらに管理職に占める女性の比率などを把握しなくてはなりません。1986年に男女雇用機会均等法が施行されてちょうど30年。女性が結婚しても出産しても「働き続けられる」仕組みはようやく整ってきました。そういった「女性にやさしい」企業がいま、そのさらに「先」を模索しています。(副編集長・奥村 晶)

 今日取り上げるのは、25面の「女性と企業フォーラム/育児もキャリアも/ダイバーシティー 私が進める」です。
 記事は2月20日に東京都内で開催されたシンポジウム「『女性にやさしい』その先へ!」の詳報です。女性の活躍先進企業の一つである資生堂の魚谷雅彦社長の基調講演に始まり、今後の女性の活躍のあり方について、流通や金融など女性が多く働く企業のダイバーシティー推進担当者、ジャーナリストやNPO法人理事が参加したパネルディスカッションの内容を紹介しています。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 昨年秋、資生堂は子育て中の女性に対し、遅い時間の勤務や週末出勤を促す取り組みを始めました。そのことがニュースで大きく取り上げられ、「資生堂ショック」と注目を集めたのを覚えている人もいるのではないでしょうか。育児休業や時短勤務など子育て中の女性に「やさしい」制度を持つ同社が女性に「厳しい」企業に後退したという批判もありましたが、実際に制度を変えた側である資生堂トップのホンネを読めば、そう単純な話ではないことがわかります。

 パネルディスカッションでは、働く女性の置かれている現状についてさまざまな角度から意見がありました。女性がキャリアアップできなかった理由について、とてもわかりやすく説明しているコメントがあったので抜粋します。

 21世紀職業財団会長の岩田喜美枝さんは、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長を最後に退官した後、資生堂に入社し、同社の両立支援策を充実させた立役者の一人です。女性として初めて、同社で副社長にまで上り詰めました。それでも、反省をこめてこう言います。
 「一つ目はこれまでの両立支援が間違っていたということです。仕事を免除するタイプの両立支援策ではキャリアが停滞してしまいます。例えばベビーシッタ-ー代を補助するなど、フルタイムで働きながら育児ができるような支援を会社がつくるのです。または在宅勤務やリモートワークを導入して労働条件の柔軟性を高めること。二つ目は、最大の障害である長時間労働。そのままで女性たちに早くフルタイムに戻ろうと言っても無理ですよね」

 家庭での子育てや家事責任を女性が主に背負っている現状では、女性のキャリアアップなど、いかに絵に描いた餅か、よくわかります。女性のキャリアアップは、家庭に育児・家事に積極的なパートナー(イクメン)がいて、職場に長時間労働をよしとしない、部下の私生活に配慮できる上司(イクボス)がいないことには始まりません。

 企業も変わり始めています。
 パネリストのセブン―イレブン常務の藤本圭子さんは「男性が家事・育児に参加しやすいよう育児休暇制度を作りました。年間で5日間取得でき給料も出ます。若い男性陣はこぞってとり始めました」と話しています。みずほフィナンシャルグループ・ダイバーシティ推進室長の五十嵐伊津子さんは「最近はわりと時間管理が厳しくて、部下が帰った後に時間制約のない上司が仕事を引き受けて残業している。業務量の削減や仕事のやり方の見直しの方へ、上司の意識を変えていく必要がある」と指摘しています。実際に長時間労働を解消するため、部下の労働時間を管理職の評価項目にする企業も増えています。
 
 女性が働きやすい企業は、男性にとっても自分の時間を大事にしながら働き続けられる企業です。男性が育児や介護のために休みを取りやすい企業は、女性にとっても働きやすい企業です。

 女性活躍推進企業が注目され、どういう取り組みをしているか各企業が積極的に発信しているいまの状況は就活生にとっては大きなメリットです。「女性に手厚い」→「男性が不利」という短絡的な発想でなく、男性もこの「追い風」を企業研究に生かしましょう。

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