2016年03月11日

東日本大震災から5年 「継続」の大事さを思う(奥村晶の「今日の朝刊」ウイークエンド)

テーマ:経済

ニュースのポイント

 東日本大震災から5年。東日本大震災では、中小企業を中心に、さまざまな企業が貴重な人材を失ったり、設備を失ったりしたことで廃業に追い込まれました。被災の影響が少なかった企業でも、復旧が遅れ、自分の製品やサービスを利用者に供給することができず、その結果、顧客が離れ、事業を縮小せざるを得なくなったケースもありました。どうすればこういった事態を防げるのか、東日本大震災の教訓を生かす企業が増えつつあります。(副編集長・奥村 彰)

 今日取り上げるのは、経済面(8面)の「教訓生かす被災工場/必要物資を高所に 液状化防ぐ地盤改良/立ち直り 地域経済に貢献」、その関連記事「広がる事業継続計画 課題も」です。
 記事の内容は――東日本大震災では、工場や店舗も大きな被害を受けた。多くは苦難を乗り越えて立ち直り、再び地域経済に貢献している。教訓をもとに防災の取り組みも進んだ。宮城県石巻市の日本製紙石巻工場では、工場のあちこちに津波の高さを示す看板を立て、災害時に必要な物資を高いところに置く。コスモ石油の千葉製油所は17基ものガスタンクが爆発した経験を踏まえ、液状化を防ぐよう地盤を改良した。ローソンは、配送網が寸断されたときに備え、災害時などに店内調理ができる設備を備えた店舗を全国約3100店に増やすなどしている。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 もう5年、まだ5年、それぞれの思いを持ってこの日を迎える人も多いでしょう。「節目」の日というのは、マスコミなどで大きく取り上げられます。朝日新聞でもこの時期には、復興の現状、被災者の思いなど、多くの紙面を使って紹介しています。ただ、当たり前のことですが、人間の営みは続いています。「節目」の日だけ意識するのではなく、支援も対策も被災地への共感も、「継続」することに意味があるのだと思います。「今日の朝刊」でも、企業の被災地での社会貢献や、災害時に被災者にとって役立つインフラづくりなどをこれまで何度も取り上げてきました。

 就活生のみなさんのなかにも、「被災地の役に立ちたい」あるいは、「社会に貢献したい」という人がいることと思います。実際、ESや面接などで、「御社の被災地での取り組みに共感して」「御社の○○という事業を通じて社会の役に立ちたい」といった志望動機をアピールする学生を見かけます。しかし、事業を継続できている企業というのは、あえて社会貢献をうたわなくても、その事業を必要とする人、商品やサービスの受け手がどこかにいるわけで、業界、業種にかかわらず、何らかの社会貢献をしているものです。視野を広く持ちましょう。

 目の前の事業を、たとえ緊急事態が起きても「継続」する。そのこと自体が社会に役立つこと、という考え方もできます。そのために必要なものが、今回取り上げたような対策、「事業継続計画」(BCP)の策定です。BCPとは、「Business Continuity Plan」の略で、緊急事態が発生した場合にも、事業の損害を最小限にとどめ、中核となる事業を継続、あるいは早期に復旧するため、平常時に行うべきこと、緊急時の対応などを事前に取り決めておく計画のことです。

 内閣府の調査によると、このBCPを策定済みと回答した企業は、震災前の2009年度は、回答した大企業約1000社のうちの3割弱だったのが、2013年度に初めて半数を超えました。もちろん、緊急事態はBCPの想定通りに発生するはずもなく、完璧ということはありえませんが、それでも、あらかじめ対処法について検討を重ね、日ごろから継続的に訓練しておくことが大事なのです。

 エネルギー、運輸、交通、通信といったインフラやライフラインを担う企業で、このBCPが重要視されているのは当然のことですが、メーカーも、生産拠点や調達先を分散させたり、緊急時の代替生産先を確保したりしています。新聞社も、緊急事態のときは同業他社と互いに紙面制作、印刷を代行するといったBCPを策定しています。

 どんな企業に就職したとしても、緊急事態のとき、どうすれば顧客に迷惑をかけないで済むのか、事業の継続はもちろん、「働き手」としての自分自身の身を守れるのか、頭の片隅に置いておくことが大事です。「節目」をただの「節目」にしないようにしたいですね。

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