ニュースのポイント
地球温暖化対策に世界で取り組む会議「COP(コップ)21」がパリで始まりました。このまま何も対策をとらなければ今世紀末には地球の気温は最大4度ほど上がり、海面上昇や食料不足など私たちの生活や生態系に深刻な影響を及ぼすと言われています。議長国フランスのオランド大統領が「パリで地球の将来を決める」と宣言したほど大事な会議です。温暖化とCOP21の「基本のき」を押さえておきましょう。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、1面トップの「温暖化防止 新枠組み焦点/COP21開幕/150カ国首脳が出席」です。総合面(2面)の「時時刻刻・COP21 主役は米中」「いちからわかる!パリでCOP21 どういう会議じゃ?」も関連記事です。
記事の内容は――国連のCOP21が30日、約200カ国・地域が参加してパリで開幕した。温暖化に伴う地球の異変を防ぐため、すべての国が参加する新しい国際枠組みづくりを目指す。最終日の11日までに、京都議定書にかわる2020年からの法的拘束力のある合意文書採択を目指す。フランスのオランド大統領は、気温上昇を産業革命前から2度未満、できれば1.5度未満に抑えるために各国が掲げる削減目標を5年ごとに点検し引き上げていく仕組みが必要だと指摘した。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
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二酸化炭素(CO₂)、メタンなどの温室効果ガスが増えると気温が上がって地球温暖化が進み、「海面上昇・高潮」「食料不足」「大都市の洪水」「水不足」「インフラの機能停止」「漁業への被害」「熱中症」「生態系の損失」の八つのリスクをもたらすと言われています(2015年4月15日の今日の朝刊「進む温暖化 志望業界への影響を調べよう」参照)。米国の研究団体は、
産業革命前と比べて気温が4度上がると、海水の膨張、氷河の融解、グリーンランドと南極の氷の減少で海面が8.9メートル上昇し、世界で6億2700万人の住む地域が海に沈むという衝撃的な予測を発表しました。それによると、日本でも東京、大阪などで人口の4分の1にあたる3400万人が住む地域が影響を受けることになります。こうした事態を防ぐための国際会議が始まったわけです。
これまでの経緯と各国の立場を整理します。
【COP21】国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議。COPは、条約を結んだ国の会議を意味する英語の「Conference Of the Parties」の略。条約は1992年に採択され、COPはその最高意思決定機関。1995年から毎年開かれている。
【京都議定書】1997年に京都で開かれたCOP3で採択された温室効果ガスの削減をめざす国際的取り決め。先進国だけに減らす義務を課し、先進国の技術やお金とともに義務を発展途上国に広げる狙いだったが、米国は「不公平」として参加しなかった。CO₂の2大排出国である米国・中国が参加しない枠組みは実効性を欠いた。COP21は京都議定書にかわる新たな国際枠組みづくりを目指す。
【新興国・発展途上国と先進国の主張】新興国・途上国は、今の温暖化を招いたのは石炭、石油などの化石燃料を使いたい放題に使って先に経済発展を遂げた先進国の責任――との立場。温暖化対策の取り組みに差を設けることと、経済的支援や技術移転を求める。一方、先進国は経済成長した新興国などに対し国力に応じた責任の分担を求める。
【米国】オバマ大統領が2009年に就任後、温暖化対策に積極姿勢に転じた。オバマ氏は米国初の削減目標を掲げたほか、
再生可能エネルギー導入支援やCO₂排出量が多い石炭火力発電所への規制強化などを導入。国産の天然ガスを低価格で使えるようになった「
シェール革命」や、太陽光や風力発電でCO₂排出を減らしながら経済成長する見通しが見えてきたことが背景にある。
【中国】最大のCO₂排出国であることに加え、「米中2大国」で枠組みづくりをリードする思惑もあって積極姿勢に。国内の大気汚染が深刻なため、エネルギー源を石炭から天然ガスなどに切り替えることは国民生活の切実な課題でもある。
【日本】京都議定書をまとめる議長国だったが、先進国だけに削減を義務づけ、途上国支援を迫る議定書は不公平だとして、2013年に枠組みから抜けた。東日本大震災後、CO₂排出量が少ない原子力発電所が止まる一方、石炭火力発電所の建設を進めているため、国際的には温暖化対策に後ろ向きのイメージを持たれている。
200もの国・地域の利害が衝突する国際会議での合意は簡単ではありません。ただ、各国の危機感がこれまでより強いことに加え、米中が積極的になったことで、新たな枠組みへの期待感も高まっています。COP21は、私たちの未来の暮らしを左右するのはもちろんですが、エネルギーや気候、食料の話ですから、さまざまな業界にも影響を与えます。就活でもどこかで話題にも出るでしょう。今日の「基本のき」を押さえたうえで、これからたくさん報じられるCOP21関連のニュースに注目してください。
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