ニュースのポイント
今の大学3年生と大学院1年生の就活スケジュールについて、経団連は採用選考(面接)を2016年6月にスタートすると発表しました。昨年の8月開始から2カ月前倒しになります。来年の選考は本当のところどうなりそうなのか。実態を予想します。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、1面の「就活選考 6月に前倒し/経団連 不満受け1年で転換」です。総合面(3面)には「就活前倒し 混乱の末/政府・経団連 責任あいまい/再来年の日程は未定」もあります。
記事の内容は――2017年春卒業予定の学生が来年取り組む就活について、経団連は、企業の採用選考開始を8月から6月に前倒しする方針を発表した。今年、従来の4月から8月に日程を遅らせたばかりだが、学生や企業の不満を受け、1年で方針転換する。月内に政府や大学側と調整した上で、会員企業向けの指針に盛り込む。会社説明会を始める時期(大学3年の3月)、正式な内定解禁(大学4年の10月)は今年と同じ。再来年以降の日程は引き続き検討する。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活スケジュール
今年の就活日程について関西の有名私大のキャリアセンター長は「7月後半の前期試験の最中に事実上の選考をした企業があった。これは絶対に避けてほしい」と話していました。正式な採用選考なら欠席届を出せば別日程で試験を受けられるよう配慮できるが、8月にならないと面接をしてはいけない大手はこれを「面接」とは認めず、「面談」「ジョブマッチング」「面接練習」などとしか言いません。届けを出せず試験を受けられなかった学生もいたというのです。
この面では7月選考開始とならなかったのは良かったと思います。ただ、大学関係者による就職問題懇談会は「6月は授業期間の真っ最中で、学生にとっては出席はもとより学ぶ時間の確保が一層困難になる恐れがある」と批判のコメントを出しました。6月は面接で欠席する学生が続出して、大学の授業が成り立たないことも予想されます。東京の有力私大のキャリアセンター長は「8月選考開始だと海外留学から戻ったあとでも選考に間に合ったため、今年は留学志望者が増えたのに……」と残念がります。
採用選考の時期は、早くすると3年生になったらすぐ就活のことを考えなければならなくなり、遅くすれば抜け駆けする企業が続出して混乱するため、昔から前倒し、後ろ倒しを繰り返してきました。選考時期が春や夏の長期間の休み中に行われれば一般的には学業への支障は少ないのでしょうが、「3年生の春休みでは早すぎる」との意見が多く、今年のように4年生の夏休みにしたら「酷暑での就活」「中小企業の選考が大手の前になり内定辞退が続出」「理系学生は、夏休みがヤマ場となる研究ができない」といった悲鳴が上がり、とりあえず来年はその間に落ち着いたわけです。
6月選考開始が学生にもたらすプラス、マイナスの影響については、イラストを見てください。
経団連に加盟していない外資系企業なども含めた就活スケジュールの実態はどうなるのでしょうか。まず今年の実態を大まかに整理すると、以下のようになります。
①3年の冬=IT、ベンチャー、外資系企業など一部企業が選考開始~春までに内々定
②3年の3月=大手のプレエントリー、会社説明会開始
③4年の4~7月=中小が選考~内々定、大手の一部も事実上の選考~内々定、オワハラ(就活終われハラスメント)続出
④4年の8月=大手が選考~内々定、内々定辞退続出
⑤4年の10月=大手も中小も内定式、内定辞退続出
⑥それ以降=学生を採りきれなかった企業の選考続く
次に来年です。②までは変わらず、③以降は以下のように大きく変わると予想されます。
③4年の6~7月=大手が一斉に選考~内々定
④4年の7~8月=中小の選考~内々定がピークに
⑤4年の10月=大手も中小も内定式
⑥それ以降=学生を採りきれなかった企業の選考続く
オワハラと内定(内々定)辞退は、来年は今年ほど多くならないのではないかと思います。経団連指針に反して5月以前に選考を始める大企業が少なくなり、選考が「大手→中小」の順に戻るため、いくつも内々定を持ったまま、より志望度の高い企業を受け続ける学生が減ると考えられるからです。
今の大学2年生のスケジュールはまた変わる可能性がありますから、注視してくださいね。
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