2015年10月09日

2020年には自動運転?無人運転?自動車の未来考えよう(一色清の今日の朝刊ウィークエンド)

テーマ:経済

ニュースのポイント

 東京モーターショーが10月29日から始まります。燃料電池車や電気自動車といった次世代の車が展示されます。これらは、エネルギー源をガソリンから水素や電気に置き換えるものです。一方で、技術的には運転手がいなくても走る無人運転車の開発が急ピッチで進んでいます。どうやら、自動車業界は大きな変化のまっただ中にあります。大手自動車メーカーに就職するのも「チャレンジ」という時代なのかもしれません。(朝日新聞社教育コーディネーター・一色清)

 今日取り上げるのは、経済面(10面)の「エコで楽しい次世代カー/若者にもアピール/東京モーターショー29日から」です。
 記事の内容は――29日から始まる東京モーターショーで、国内自動車大手8社の出展内容が8日、ほぼ出そろった。燃料電池車(FCV)や電気自動車(EV)では、ためた電気を住宅などで使える技術をアピール。若者をひきつけようと、車の構造をむき出しにしたり、新たな楽しみ方を提案したりする試作車が出展される。トヨタ自動車の目玉は、昨年発売した燃料電池車「ミライ」を発展させた試作車「FCVプラス」だ。水素エネルギーが家庭に普及した十数年後をイメージし、FCVに搭載された水素を使う発電機を取り外して持ち運べるようにし、家庭用の発電機としても使えるようにした。「走っていないときでも社会に役立てる」と開発担当者は言う。日産自動車は軽の試作EV「テアトロ フォー デイズ」を公開。2020年以降に運転免許を持つようになる若者向けで、社内で映画や画像を楽しめる。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 先日、自動車メーカーの役員と話しました。環太平洋経済連携協定(TPP)が大筋合意された翌日でした。日本とアメリカの間で懸案になっていた自動車分野で、「乗用車の関税は15年目から削減を始め、20年目で半減、25年目で撤廃」となったことについて、この役員は「25年後の自動車なんて想像もできない。だいたい、今の自動車メーカーがつくっているのかも分からない。そんな先のことを決めて意味があるのかな」と言っていました。

 私も同感でした。今の自動車の変化は、ガソリンにかわって電気や水素がエネルギー源になるということもありますが、それよりずっと大きな変化は無人運転時代がやってきそうなことです。トヨタ、日産、ホンダなどの日本メーカーも欧米の自動車メーカーも、開発に力を入れています。ただ、研究が最も進んでいるのは、自動車メーカーではなくIT企業のグーグルです。グーグルと自動車メーカーとでは、同じ技術開発でも表向きの目的が違います。自動車メーカーは、運転手のサポートをして交通事故を減らすための「自動運転」を当面の目的にしています。トヨタは6日、高速道路の自動運転システムを2020年をめどに投入すると発表しました。一方グーグルは、運転手のいらない「無人運転」を最初から目指しています。

 この戦略の違いは、グーグルに軍配が上がると私は見ています。これからの社会でもっとも不足する職業は運転手です。ネット通販などがもっともっと盛んになるのは必定で、配送手段の確保がカギになります。でも労働力人口の減る日本で、運転手のなり手は減る一方。外国人労働者に頼るといっても、彼らが運転免許を取るのは簡単ではありません。このボトルネックを解消するのは無人運転以外にはないわけです。大きな構造は、アメリカでもヨーロッパでも中国でも同じです。

 自動車メーカーは、今も「無人運転」については否定的です。道路交通法などを変えないといけないとか人々の意識がそこまでいっていないなどを理由に挙げますが、本音は「無人運転時代になると、IT企業に業界の主導権をとられる」と警戒しているのです。
 ただ、その自動車メーカーもここにきて、無人運転時代を視野に入れてきた観があります。そう遠くないうちに、まずは高速道路に限って無人運転が認められると予想してきたようです。大型トラックが何台も連なって同じレーンを無人で走り、高速道路上の拠点から拠点まで荷物を運びます。それを小分けして、有人運転の小型車が各家庭まで届けるという姿です。もちろん、高速限定時代を経て、そのうち一般道も無人運転になる日が来るのは間違いありません。

 私は遅くとも2020年代には無人運転が始まると考えています。2030年代には、自動車の概念は、自由に移動する箱になるでしょう。今の自動車とはまるで違うものです。
 TPPで合意された「乗用車の関税撤廃は25年目」というのは、時期としては2040年以降のことになります。そのころの自動車は、乗用車とよばれるモノでしょうか。そして、造っているのは、今の自動車メーカーでしょうか。今日と同じ明日が続くと考えてはいけません。自動車メーカーは、魅力的な就職先でしょうが、この先にはいろいろな試練が待ち受けているということも頭に入れておきましょう。

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