2015年08月19日

日立と東芝の明暗なぜ?ライバルを比べよう

テーマ:経済

ニュースのポイント

 日立製作所と東芝は、総合電機メーカー最大のライバルです。不正会計問題で揺れる東芝に対し、日立の業績は絶好調。家電や発電システムなど幅広い分野で事業が重なる両社の明暗はどこで分かれたのでしょうか。ライバル同士を比べるのは、とても有益な企業研究の手法ですよ。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、経済面(6面)の「東芝 課徴金に焦点/ライバル日立と業績明暗/日立 リストラから回復/東芝 抜本策なく水増し」です。総合面(3面)に関連記事「東芝、568億円追加損失」が載っています。
 記事のうち、東芝と日立を比べた部分の内容は――東芝、日立はともにリーマン・ショック時は巨額の赤字を計上したが、足元の業績は明暗がわかれる。リーマン・ショック後の2009年3月期、純損益の赤字額は、東芝の3435億円(当時の発表)に対し、日立は7873億円にのぼった。東芝の不正会計はこのころから続いていたとみられ、18日に発表した2015年3月期決算の「業績予想」では、営業利益は前年を下回る1700億円、純損益は赤字の見通しとした。一方の日立は円安などの恩恵もあり、営業利益は過去最高の6004億円、純利益も2413億円をあげた。日立のV字回復の出発点は、副社長ら6人で意思決定できる仕組みを整え、不採算事業にメスを入れたリストラ策。テレビ事業は自社生産から撤退、携帯電話や中小型液晶パネルは合弁会社などに切り離し、ハードディスク事業も売却、社会インフラなどで安定した利益を稼げる事業構造をつくりあげた。東芝もテレビやパソコン事業で海外事業の撤退や拠点の再編などに取り組むが、抜本策まで至らず懸案のままだ。2006年に米原子力発電大手ウェスチングハウスを買収して事業強化を急いだが、2011年の原発事故で事業の先行きも不透明になった。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 三菱電機とともに「重電3社」と呼ばれる日立と東芝は、自他共に認める長年のライバルですが、リーマン・ショック後の対応策で大きな差がつきました。東芝が18日に発表した2015年3月期の売上高6兆6600億円に対し、日立は9兆7619億円。過去最高の営業利益を記録した日立に対し、東芝は純損益が赤字に転落しそうです。東芝は、社外取締役を増やすなどの新体制を発表。室町正志会長兼社長は「140年の創業以来最大の危機的状況という認識だ。内部統制、企業風土の改善をやることで、再発防止策に注力する」と強調しました。

 今日の記事では、日立と東芝の社風、風土の違いも伝わってきます。明暗がはっきりしているだけに、日立の良さばかりが目立つ記事ですが、日立と比べることで東芝がどんな課題を抱えているのかも浮き彫りになっています。東芝をめざす人には「なぜこの厳しい時期にあえて志望するのか」を考え、志望動機を深める材料にもなります。

 このように、ライバル社と比べるのは有効な企業研究なのですが、個別の会社のホームページには他社との比較は基本的に載っていません。ここで役に立つのが新聞記事です。経済面のトップや準トップの大型の記事は、業界全体の動向をまとめたり、ある話題の企業を紹介する記事にもライバル社との比較が載ったりします。たとえば日本航空(JAL)を取り上げる記事には、多くの場合、ライバルの全日空(ANA)も登場し比較、分析されます。新聞記事を読むと、業界全体の様子やライバル企業との違いや動向も同時に知ることができるわけです。ライバル社と比べて志望企業をより深く知れば、志望動機の補強にもなります。面接で聞かれる「なぜ○○社じゃなくてウチなの?」という問いに答えるヒントがここにあります。

 電機メーカー志望の人は、日立、東芝以外の大手電機8社(ソニー、パナソニック、富士通、三菱電機、NEC、シャープ)についても、過去の新聞記事で調べてみましょう。他の業界志望の人も、自分のめざす会社がリーマン・ショック以降どんな取り組みをしてきたのか、ぜひ調べてみてください。その際には、大学や自治体の図書館にある新聞記事データベースの活用をオススメします。

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