2015年08月18日

ロッテ、大塚家具のお家騒動…同族経営の功罪は?

テーマ:経済

ニュースのポイント

 親子対立でもめた大塚家具に続き、ロッテホールディングス(HD)の兄弟対立が注目されています。創業者の子どもが社長に就き、創業家が経営の実権を握り続ける「同族企業」のお家騒動が目立ちます。でも、実は日本の企業の多くが同族企業。デメリットばかりではありません。その功罪を考えます。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、経済面(7面)の「ブランド回復 険しい道/ロッテHD『次男体制』固まる」と「大塚家具前会長 株4.9%売却へ」です。
 記事の内容は――【ロッテ】兄弟対立が続くロッテHDは、創業者の次男で代表取締役副会長の重光昭夫氏(60)を中心とする経営体制が続くことが固まった。昨年までは、創業者の武雄氏(92)のもとで、韓国事業を次男が、日本事業を長男の宏之氏(61)が引っ張ってきたが、17日の臨時株主総会で次男主導の会社提案が可決された。「お家騒動」で日本と韓国をまたぐグループのブランドは傷ついており、回復は簡単ではない。
【大塚家具】創業者の大塚勝久・前会長(72)が、保有する同社の95万株(発行済み株式総数の約4.9%)を売却することがわかった。売却益は勝久氏が家具販売などを目的に設立した新会社の運営資金に充てるとみられる。大塚家具では、経営方針をめぐって勝久氏と長女の久美子社長(47)が対立し、3月の株主総会で久美子氏の社長続投で決着したものの民事訴訟で争うなど対立が続く。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 お家騒動はとりあえず、大塚家具は娘、ロッテは弟の「勝利」で決着したようです。
 同族企業は、同族会社、同族経営、ファミリー企業などとも呼ばれます。一般的には、親族やその関係者が経営権を握っている会社のことを言い、法人税法では親族などが株式や出資金額の半分以上をもっている企業と定義されています。国税庁の統計によると、同族企業の数は国内すべての企業の96%にあたる248万社に上ります。

 どの会社も、最初は誰かが起業して始まります。会社が成功して大きくなるにつれ社員や株主の意見が強くなり、一般の社員出身の「サラリーマン社長」が出るようになると同族企業ではなくなるわけですね。だから、大手企業ほどサラリーマン社長の企業が多くなる傾向があります。

 それでも、歴代社長や会長が世襲されてきた大企業もたくさんあります。イオン、ワコールHD、スズキ、ミズノ、YKK、キヤノン、キッコーマン、竹中工務店などなど。トヨタ自動車は創業家以外の社長が3代続いたあと、今は創業家出身の豊田章男氏が11代目の社長に就いています。サントリーHDは代表的な世襲企業でしたが、昨秋、前ローソン会長の新浪剛史氏が社長に起用され注目を集めました。パナソニックや武田薬品工業は創業家が長く経営の中枢にいましたが、今は一線から退いています。

 同族企業の一般的なメリット、デメリットは以下のようなものでしょう。
【メリット】
・株式買収などで経営権が奪われるリスクが低く、短期的利益を求めず長期的に安定した経営ができる
・社長交代など経営陣の移行がスムーズで、次期社長をめぐる派閥抗争も起きにくい。次期社長候補として経営者のキャリア形成が、早い時期から計画的にできる
・トップの影響力が強いため、経営方針などの決断が早く、社内の団結力が高まりやすい
【デメリット】
・不公平な人事や、会社の資産と個人資産の混同などワンマン運営の弊害が起きやすい
・経営能力に欠ける人物が社長に就くリスクがある
・トップに就けない一般社員のモチベーションに影響

 サラリーマン社長の代替わりより、親子での継承のほうが経営方針などで対立しやすいとの見方もあります。ただ、この点について、星野リゾートの4代目で先代の父と対立の末に社長に就いた星野佳路氏は今年6月の朝日新聞の記事で、「親子だと、経営方針で違いがあると、互いに譲らない」「他人どうしで会社を継ぐのとくらべて(お互いの意見を取り入れて)中庸(ちゅうよう)に陥らないのが、親子のいいところ」と語っています。中途半端にならず、リスクをとって思い切った策をとれるのが、同族企業のメリットだという考え方です。

 志望する企業が同族企業の場合、トップの影響力が圧倒的に強いわけですから、その人の考え方や個性などを企業ホームページや著書などから、できるだけ知っておくことが大切です。そこに共感できるかどうかは、大きなポイントですよ。

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