2015年07月31日

就活終える時期、自分が納得できるかどうかで判断を(一色清の「今日の朝刊ウィークエンド」)

テーマ:就活

ニュースのポイント

 経団連加盟の大手企業などを中心に8月1日から採用選考が始まります。いよいよ就活本番スタートといいたいところですが、ご存じのように外資系企業や中小企業、あるいは経団連加盟企業でもかなりの会社で実質的な選考はすでにスタートしています。逆に話題は「就活終われハラスメント」(オワハラ)という、ゴールを巡るトラブルに移っています。(朝日新聞教育コーディネーター・一色清)

 今日取り上げるのは、社会面(38面)の「就活オワハラ相談/大学・短大の7割に/昨年度上回る/文科省調査」です。
 記事の内容は――大学と短大の7割近くが、就職活動中の学生から企業のハラスメントを受けたと相談されていたことが、文部科学省が30日発表した調査でわかった。内定と引き換えに就活を終えるよう迫られる「就活終われハラスメント」(オワハラ)だという。国公私立の62大学と20短大、そこに通う来春卒業予定の3934人に、7月1日時点の状況を尋ねた。3~6月に学生から相談を受けたのは82校中56校(68.3%)。昨年度(1年間)の37校(45.1%)を大きく上回った。内容は「面接で内々定を出す代わりに他企業に断りの電話をするよう強要された」「(選考が解禁になる)8月1日に合わせて合宿参加を義務づけられた」などだった。学生への調査では、7・8%がオワハラを経験したと答えた。5月1日時点の状況を尋ねた前回調査では2.1%だった。大学などでつくる「就職問題懇談会」は7月30日、緊急メッセージを出し、正式内定の10月より前に意思確認する書類を提出させることなどの自粛を求めた。座長の吉岡知哉・立教大総長は記者会見で「企業にとっても本来の志望ではない学生を採用するのは望ましくない」と話した。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 今日の記事では、オワハラを経験した学生は7.8%となっていますが、これは7月1日時点の調査です。8月1日の一部大手企業のスタートを前に、オワハラが横行していると言われていますので、実際にははるかに多い学生がオワハラを経験していると思われます。

 オワハラへの対処は、7月23日の「今日の朝刊」で、詳しくかつ丁寧に書いています。そちらを参照の上、すこしダブるかもしれませんが、わたしの考えも読んでください。

 まず、オワハラが横行しているというのは、今の就職戦線が売り手市場、つまり学生側に余裕のある状況で動いているということです。アベノミクスによる企業業績の向上や復興需要、東京オリンピック・パラリンピックに向けた需要、少子化などで、日本は人手不足に陥っています。企業は、いい学生をたくさんとりたい、あるいはとらなければならないと意気込んでいます。学生には内定が出やすい状況にあります。一方で、8月正式スタートとなったため、就活戦線がはっきり2段階に分かれ、相撲の取り組みのように、大物や人気者はあとから登場する恰好です。しかも長丁場になっています。早めにスタートした外資系や中小企業、人気薄の大企業などは、ここで学生を確保しておかなければならないと必死になるのでしょう。

 古い話ですが、1980年代後半から90年代初めのバブル景気の頃の就職戦線と似ています。あの頃、金融機関や商社などでは内定者を旅行や合宿に連れて行くのが流行りました。中にはハワイに連れて行ったという話もありました。他社を受けさせないためです。今年も「8月1日に内定者を洋上に招待する」といった話が報じられています。

 オワハラが問題になるのは、「今が学生にとっていい時代だから」とまずは喜ぶべきでしょう。5~6年前の就職氷河期などといわれた頃、オワハラなんて言葉は生まれていませんでした。

 次に、学生は就活の時だけはウソをついても許されると思いましょう。よく「首相は衆院解散についてはウソをついてもいい」などといわれるのですが、同じようにいうと、「学生は就活についてはウソをついてもいい」ということです。就活終了と内定がセットだと企業からいわれた場合、「就活を終えます」とウソを言って内定をもらうことに罪悪感をもつことはありません。もちろん、別の企業に入ることが決まったときには、内定をもらっていた企業に丁寧な断りを入れるのは、人間として当たり前の行動ですが。

 最後に、「オワハラ」に屈して就活をやめるのも、それはそれでいいと思いましょう。その就活生が自分の中でより優先順位の高い会社に行きたいという思いが弱かったり、自信が揺らいでいたり、就活に疲れを感じていたりする結果ですから。就活とか結婚とか人生の大きな決断も、「ま、いいか」と思ってすることが少なくありません。でも、そんな軽い決断でも幸せな人生を歩んでいる人はいくらでもいます。先日会った東大生は、「マスコミ志望だったのですが、先に決まったベンチャーに口説かれて、ま、いいかと思って就活を終えました」とサバサバと話していました。結局、自分が決めたことに納得できるかどうかを胸に手を当てて考えながら、進んでいけばいいと思います。

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