ニュースのポイント
来年の参院選から18、19歳も投票できるようになります。みなさんの中にも新たに選挙権を得る人がいるでしょう。すでに選挙権がある人にとっても、若者の政治参加は身近なテーマです。周りの大学生はどう考えているのでしょう? いろんな意見を知って、自分の考えを磨いていください。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、1面トップの「一票 18歳から/70年ぶり引き下げ 来夏参院選から/公選法改正/有権者240万人増」です。関連記事は、1面の天声人語、総合面(2面)「の時時刻刻・10代の声どう反映」「いちからわかる!」、オピニオン面(16・17面)の社説と識者3人に聞いた「耕論」、社会面(39面)「18歳の選択」です。
記事の内容は――選挙権年齢を現在の「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法が全会一致で可決、成立した。参政権の拡大は1945年に20歳以上の男女と決まって以来70年ぶり。新たに有権者となるのは18、19歳の計約240万人で全有権者数の約2%。国立国会図書館の調査では、世界約190カ国・地域のうち、約9割で「18歳以上」の選挙権年齢を採用している。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
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先日、ある大学で講演した際に、「18歳選挙権」に賛成か反対か聞いてみました。50~60人のうち半数以上が「反対」。「政治のことが何もわからない」「投票しろと言われても正しい選択ができない」といった意見でした。賛成の学生からも「学校で選挙や政治についてもっと教えてくれないと」という声があがりました。
もっともだと思います。オピニオン面の耕論で日本大学教授の広田照幸さんは、若者の政治離れ、無関心は大人が作り出したと指摘しています。一つは、旧文部省が学園紛争が盛んだった1969年に出した通達。教師が政治的事象を取り扱うことに「慎重に」とクギを刺し、高校生らの校外での政治的活動を「教育上望ましくない」として政治から遠ざけました。二つ目は、学校や親が生徒に「受験勉強に打ち込め。他のことは考えるな」と言い続けたことだといいます。
今回、選挙権年齢は引き下げられましたが、政治参加の意識を高める「主権者教育」のあり方などについては十分議論されていません。文部科学省と総務省は選挙制度や選挙の意義などを解説する副教材を作成し、全国の高校生に配布する方針ですが、「政治的中立」を保ちながらどう教えるかはこれからの課題です。
5月11日の朝日新聞のフォーラム面では、法政大学でこのテーマを取り上げた講義の内容を紹介しました(図は参加学生へのアンケート結果)。ここでも教育のあり方を問う指摘が多くありました。アンケートでは過半数が18歳選挙権に「賛成」でしたが、「テキトーに投票してしまう人が多くなる」「選挙は政治や世の中に意見を述べるようなもの。その分、社会的な責任がついて回る」「責任を持てないなら安易に投票してはいけない」との慎重な意見も目立ちました。無関心なのではなく、「社会的な責任」を強く意識するからこそ「テキトー」を心配する真面目な考え方です。
ただ大人だって、世の中のこと、政治のことをすべて理解して投票している人なんてほとんどいません。投票直前になって、新聞や
選挙公報を引っ張り出して誰に入れるかを考える人も多いと思います。そもそも、テストと違って選挙には「正しい選択」も「正解」もありません。国民一人ひとりが、どの政党、誰に入れるかを、それぞれできる範囲で考えて投票した集大成が選挙結果=
民意です。18歳選挙権を機に政治に関心をもつ若い世代が増え、人口が多く投票率も高い高齢者向けの政策を重視する「シルバーデモクラシー(高齢者の民主主義)」が見直されるきっかけになればいいと思います。
フォーラム面には他にもたくさんの学生の意見が載っています。今日の社会面「18歳の選択」では高校生の声を集めています。多様な意見に触れて、あなたの考えの参考にしてください。
「大人は20歳から」としている民法の成人年齢や、少年法の適用年齢などについての議論はこれからです。この点は3月6日の今日の朝刊「18歳選挙権 大人?子ども?…あなたの考えは?」で取り上げています。
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