ニュースのポイント
キリンビールやキユーピーが新しい健康食品を発売しました。健康への効果を企業の責任で表示できる「機能性表示食品」という新しい制度に基づく初めての商品です。国からお墨付きをもらう「特定保健用食品(トクホ)」より手軽なため、食品メーカー各社は大きなビジネスチャンスとみて、新商品を続々投入します。制度の課題も押さえておきましょう。(編集長・木之本敬介)
(写真は、店頭に並んだキリンの「パーフェクトフリー」)
今日取り上げるのは、総合面(3面)の「機能性食品 店頭に/『体にいい』届け出だけで表示OK/トクホより手軽 安全性に懸念も」です。
記事の内容は――「健康に効果がある」と企業の責任で表示できる機能性表示食品の店頭での販売が始まった。キリンビールが16日に発売したノンアルコールビール「パーフェクトフリー」は、「難消化性デキストリン」という成分で、脂肪の吸収を抑えて糖の吸収を穏やかにするとうたう。トクホは消費者庁の審査に最短でも1年かかるが、機能性表示食品は発売前に消費者庁に届け出るだけ。アサヒビールも同様のノンアル「アサヒスタイルバランス」を売り出す。生鮮食品の機能もうたえるため、浜松市のJAみっかびは三ケ日みかんに含まれる「β-クリプトキサンチン」には骨の密度の低下を抑える効果があるとして、今秋に売り出す計画だ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
機能性表示食品の発売第1弾は、表にもあるキユーピーのサプリメント「ヒアロモイスチャー240」です。6月12日からインターネットと電話で通信販売が始まりました。通販サイトには、
ヒアルロン酸ナトリウムを含み「肌の水分保持に役立ち、乾燥を緩和する機能があることが報告されています」と表示しています。続いて店頭発売も始まったというのが、今日の記事です。
「機能性」とは、食品に含まれる成分の健康へのはたらきのこと。「おなかの調子を整える」などと機能性をうたう食品には、今も「トクホ」と「栄養機能食品」がありますが、安倍政権の成長戦略の一環として第3の制度が設けられました。機能性表示食品については、2015年3月3日の今日の朝刊「食品志望者は注目!健康食品表示に新制度」でも取り上げ、「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」との違いなどを説明しています。こちらも読んでみてください。
機能性表示食品はすでに約200件が消費者庁に届け出られています。食品メーカーが競うように新商品を開発する背景には市場拡大への期待があります。民間調査会社シード・プランニングによると、2013年の健康食品の市場規模は約1兆8388億円で2007年より少し減りましたが、新制度で2016年には2兆円を超えるとみられています。
中には引き続きトクホを重視する会社もあります。サッポロビールは「国のお墨付きの方が信頼される」からと、トクホのノンアル「サッポロプラス」を5月に発売。機能性表示食品は考えていないそうです。
一方、記事の後半では新制度の問題点を指摘しています。国は効果や安全性を審査せず、企業が届け出た情報を公開して消費者らのチェックに委ねる仕組みです。届け出には、人が食べて効果を確かめた試験の結果や学術論文など、科学的根拠を添付しなければなりません。資料はWEBサイトで公開され、消費者庁は「消費者自らが情報を調べて商品を選べる制度」と説明しますが、全国消費者団体連絡会など消費者団体は、安全性の根拠に乏しいと批判しています。食品だけに健康被害などが出たら大変です。機能性表示食品を売る企業は、大変重い責任を負っているわけです。面接などで話題に出たら、各企業の新商品や戦略に語るとともに、こうした企業側の課題についても意見が言えるといいですね。
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