ニュースのポイント
日本銀行の黒田総裁が確信を持って政策を進める重要性をピーターパンの言葉を使って、国際会議で訴えました。信じる道を揺らぐことなく進めば、うまくいくのだという意味です。就活でも、ぶれないことは大事です。会社によっては採用時にグループ討論やグループでのゲームを課すことがありますが、その際会社が見ている要素の一つは「リーダーシップ」。その「リーダーシップ」を発揮するための大事な要素とは、「ぶれないこと」なのです。就活そのものでもしっかりした初志を持ち、できるだけ初志を貫く気構えが大切だと思います。(朝日新聞教育コーディネーター・一色清)
今日取り上げるのは、経済面(9面)の「『疑った瞬間、永遠に飛べなくなる』/日銀総裁、国際会議でピーターパン引用」です。
記事の内容は――「飛べるかどうか疑った瞬間に永遠に飛べなくなってしまう」――。日本銀行の黒田東彦総裁(くろだ・はるひこ 写真)は6月4日、都内で開いた日銀主催の国際会議で、ピーターパンの物語に出てくる言葉を引き、物価や景気が思い通りでなくても世界の中央銀行が「前向きな姿勢と確信」をもって政策を進める重要性を呼びかけた。会議には世界の中央銀行関係者が出席した。黒田総裁は、大量に市場に資金供給をする量的緩和などを各国で続けていても景気回復が緩やかで、かじ取りが難しいことを指摘。「ピーターパン」を持ち出し、課題の克服を訴えた。日銀が目指す前年比2%の物価上昇率も、2016年度前半ごろまでは実現が難しいと日銀自身が認める。だが、人々に「物価が上がる」と思ってもらうことが重要だとして、黒田総裁は強気なメッセージを出し続け、政策への信頼をつなぎとめようとしてきた。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
「疑った瞬間、永遠に飛べなくなる」というのは、ピーターパンの物語の中で作者が語っている言葉です。小さなピーターパンが空を飛んで枝に降り立ちました。ピーターパンは空を飛べるのが当たり前だと思っているのに、生き物はみんな彼を避けます。ピーターパンはそれを悲しみます。作者は、自分は人間だと彼が気づかなかったのは幸いだった、と書きます。というのも気づいていたら、飛べるという自信をなくしていたでしょうから。飛べるかどうか疑いを持った時は、もう永遠に飛べなくなってしまっているものなのです、と書いています。英文では、The moment you doubt whether you can fly, you cease forever to be able to do it.です。
この文意は、みなさんもよく分かるのではないでしょうか。ちょっと俗っぽい言い方ですが、「信じる者は救われる」なんていうのも、同じような意味です。疑いというのは不安と同じです。自信が揺らぎ始め、不安が生まれ、不安が不安を呼び、どんどん弱気になっていく。そんな心理状態では、手が届く望みにも手が届かなくなっていきます。
就活において、大切なのは自分を信じること。初志を立て自分のありのままの姿を見てもらえば、必ず道は開けると確信することです。そして、不採用はその会社とは合わなかっただけ、と思うことです。そうした自分を信じる姿勢は、人にも見えるものです。そのうち初志の範囲内の会社から内定の知らせが来ると思います。
自分を疑うようになれば、弱気のサイクルに入ることがよくあります。なかなか内定が取れないときに、自分を信じ続けるのが難しいことはよく分かります。情勢に応じて初志を変えていくことが必要な時もあるでしょう。ただ、それでもいったんリセットして新しい状況に対応した自信を持ちましょう。「飛べる飛べる I can fly、I can fly」と声に出して言ってみるのもいいかもしれません。
ピーターパンの作者の言葉で、ちょっと違うなと思う点もあります。「永遠に飛べなくなる」というところです。人間は努力によって自分を変えることができる存在です。いったん自信をなくしても、努力と時の経過で再び自信を取り戻すことはできます。この名言から「永遠に」はとってほしいですね。
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