ニュースのポイント
コンビニの
フランチャイズ(FC)店主たちは労働者なのか、事業者なのか。店主たちで作る労働組合とコンビニ会社の間で、
団体交渉に応じるかどうかに関して、論争が起こっています。この論争はコンビニの店主という特定の立場の人たちの問題ではありますが、「なぜ会社は労働組合との交渉を嫌がるのか」とか「労働組合は何のためにあるのか」といった問題を考えるきっかけになります。会社選びの時に、労働組合のことは考えない人が多いでしょうが、志望する会社に労働組合はあるのかどうか、ある場合は会社とどんな関係にあるのかなどについて関心をもっておいた方がよいでしょう。(朝日新聞教育コーディネーター・一色清)
今日取り上げるのは、総合面(3面)の「ファミマ側は反発/都労委「店主は労働者」/経営の裁量権に限り」です。
記事の内容は――コンビニ大手ファミリーマートが、フランチャイズ(FC)店主らでつくる労働組合との団体交渉に応じないのは不当労働行為にあたるとして、東京都労働委員会は16日、応じるよう命じた。弱い立場とされる店主側の交渉力が高まる可能性があるが、会社側は命令に反発している。都労委に救済を申し立てていたのは、FC店主ら17人で作る「ファミリーマート加盟店ユニオン」。契約をめぐって2012年に団体交渉を求めたが、会社側は応じず、「店主は独立した事業者であり労働者ではない」と主張していた。都労委は、会社側が店主らに就業時間を示したり、マニュアルにもとづく清掃を求めたりしていたことから、店主が「労務」を提供していたと判断。「店主は顕著な事業者性を備えているとは言えない」として、組合法上の労働者であると判断した。ユニオンは、あらためて団体交渉を申し入れていくという。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
労働組合と聞くと、「古くさそう」とか「文句ばっかり言ってそう」とか「会社のいいなり」とか、あまりよくないイメージを持っている人がいるかもしれません。実際、労働組合に入っている労働者の割合(組織率)は年々下がっていて、昨年6月段階では17.5%です。ただ、非正規労働者はほとんど組合に入ってないので、正社員に限ればもっと高くなりますし、大企業に限ればさらに高くなります。
労働組合が「ある会社」と「ない会社」はどちらがいいかということですが、働く者にとってはやはり「ある会社」のほうがいいと私は思います。まず、「ない会社」で多いのは、まだ新しい会社です。新しい会社には可能性に満ちたやりがいのある会社もありますが、いわゆるブラック企業は「労働組合のない新しい会社」に多いと言われます。明らかに理不尽な働き方を強いられているとか不当に解雇されたとかいう場合に、個人で会社と闘うのは大変です。労働組合があれば、そうしたおかしな働き方は未然に防げるでしょうし、仮に行われたとしたら、闘ってくれるはずです。
最近は、会社とは関係なく個人で入ることのできる労働組合もあります。申し込みはインターネットでOKだったり、月額1000円ほどの組合費で一緒に闘ってくれたりしますので、組合のない会社に勤めていたり非正規だったりする人の強い味方になっています。
労働組合がない会社は、福利厚生が充実していないケースも多いと思います。経営者は会社を大きくするのに懸命ですから、労働者からの要求が届かなければ福利厚生は後回しにしがちです。「ワーク・ライフ・バランス」を考えるのなら、労働組合のある会社の方がいいでしょう。
ただ、労働組合の存在が会社の成長にマイナスになることもないとはいえません。アマゾンのジェフ・ベゾスCEOの口癖は「懸命かつ猛烈に長時間働く」だそうです。労働組合がその方針に異議を唱えて闘っていれば、今のように成長していないかもしれません。日本でも、大和ハウスや任天堂、出光興産など、創業者がカリスマ的な存在で家族主義的な考え方をとりいれているところは労働組合がなくて大企業になりました。
また、労働組合は組合員全員のためにありますから、どうしても要求が平等になります。能力に自信があったり、やる気満々だったりする人には、悪平等と映ることがあるかもしれません。
もうひとつ付け加えれば、最近では少なくなりましたが、組合によっては政治的な運動に駆り出されることもあります。
労働組合の有無についてメリット、デメリットを書いてきました。ベンチャー精神にあふれた若者にとっては、やはり「労働組合なんていらない」と思うことでしょう。ただ、なぞなぞのようですが、私は労働組合を「いいときにありがたみが分からなくて、よくないときにありがたみが分かるもの」だと思っています。会社が下り坂になったり、自分に不調が襲ったりしたときに「労働組合があってよかった」と思うものです。そう思うと、会社選びの時に「労働組合の有無」も考慮した方がいいと思います。
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