2015年01月28日

アウシュビッツ解放70年から今を学ぼう

テーマ:国際

ニュースのポイント

 第2次世界大戦中、ユダヤ人ら110万人が犠牲になったポーランドのアウシュビッツ強制収容所がソ連軍に解放されてから70年が経ちました。ナチス・ドイツによる600万人のホロコースト(ユダヤ人大虐殺)は歴史上の出来事ですが、今起きているテロ事件や反イスラムデモなどとも無縁ではありません。被害者が同時に加害者だったり、加害者が被害者になったりすることも多く、歴史は単純ではありません。それでも、歴史を知ることは今を学ぶことでもあります。(写真はアウシュビッツ解放から70年の1月27日朝、収容所跡の正門から外に出る元収容者ら)

 今日取り上げるのは、国際面(10面)の「民族排斥 悲劇は二度と/アウシュビッツ解放70年で記念式典/過激主義拡散に元収容者ら警鐘/歴史認識対立 超える努力も」です。
 記事の内容は――アウシュビッツ収容所解放70年の27日、収容所跡で記念式典があった。パリの連続テロや反イスラムデモなど今なお世界各地で憎悪が広がる中、元収容者らは過激主義に警鐘を鳴らした。世界ユダヤ人会議のハンガリー人副議長は「ユダヤ人もイスラム教徒も移民も守られるべき社会の一員――それがアウシュビッツで問われたことへの答えだ」と言う。だが、地元ハンガリーではホロコーストを巡り歴史認識論争が。ハンガリー政府が昨年、ナチス・ドイツによる被害を強調する記念碑を首都ブダペスト中心部に建立したことに、ユダヤ系団体がハンガリー政府自身の責任を否定するものだと猛反発。アウシュビッツで殺害されたユダヤ人約100万人のうちハンガリーから移送された人たちが約40万人を占めるからだ。1995年には、自国の立場を「占領の犠牲者」と強調するポーランド政府に反発したユダヤ人団体が、アウシュビッツ博物館とは別に解放50年の式典を開いたことも。1941年にユダヤ人を焼き殺した事件について大統領が謝罪し、2005年の解放60年では統一した式典が開かれた。博物館の日本人ガイドは「欧州では統合拡大の中でホロコーストをめぐりさまざまな認識がせめぎ合ってきた。違いや分裂が強調されるが、議論をぶつけ合って乗り越えてきたことも知ってほしい」と話す。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 十数年前の真冬にアウシュビッツを訪れました。おびただしい数の髪の毛だけが集められた部屋がありました。靴が積み重なった部屋も。すべて収容者たちのものです。その一つひとつに尊い人生があったのだと考えると、その場からしばらく動けなくなりました。

 アウシュビッツなどで行われたホロコーストについては、「アンネの日記」を読んで知った人も多いでしょうし、アカデミー賞映画「シンドラーのリスト」を見たり、多くのユダヤ人を救った日本人外交官・杉原千畝(ちうね)から知った人もいると思います。唐沢寿明さん主演の映画「杉原千畝」が今秋公開される予定です。私が一番好きな映画「ライフ・イズ・ビューティフル」もホロコーストの厳しい環境の下での家族愛を描いた映画です。こうした身近に接することができる題材から関心を持つのも大切なことです。

 さて、今日の記事にも、パリの連続テロや反イスラムデモの話が出てきます。ホロコーストに代表されるユダヤ人差別とそれに伴うユダヤ人民族意識の高まりは、イスラエル建国を経て今日に至る中東情勢の混迷の一因となっています。フランスの連続テロ事件やイスラム国による日本人人質事件も、こうした大きな歴史の流れの中にあります。その大きな節目として、アウシュビッツもあったわけです。

 当時、歴史的な悲劇の被害者であったユダヤ人ですが、いまパレスチナ問題では多くの国から「加害者」として批判されてもいます。パレスチナ問題については、2014年7月24日の「今日の朝刊・繰り返されるガザの悲劇…新聞で現代史を知ろう」を読んでみてください。

 この欄で何度も書いているように、世界はつながっています。そして、当然のことながら、歴史も今につながっています。歴史を知らなければ、いま世の中で起こっていることを理解することはできません。新聞は今起きていることを伝えるメディアですが、今日のような記事からは歴史を学ぶこともできます。採用試験の時事問題対策になるだけでなく、これからの面接などで話題になるかもしれませんよ。

 最後に朝日新聞社からのお知らせを二つ。こうした時事問題対策のための「マスコミ就職模試2016」を3月19日に東京、大阪で実施します。もう一つは、今日の社会面(37面)にお知らせ記事が載った「就活生向け『学生キャリア塾』2月コース募集」です。詳しくは下記のリンクからご覧ください。

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