2015年01月27日

ギリシャ総選挙をホームドラマ風に解説してみた

テーマ:国際

ニュースのポイント

 とても乱暴なたとえになりますが、ちょっと想像してみてください。兄弟姉妹の多い一家の末っ子が、勤めている会社の経営が思わしくなく借金まみれになってしまいました。5年ほど前のことです。末っ子といってももう大人です。
 兄も姉も決して裕福な暮らしではありませんが、仕方がないので、お金を貸してあげます。放っておくとその子の借金はふくらむ一方で、家族にもっと迷惑をかけるかもしれないし、お金を貸さないことに腹を立てて、兄弟と縁が切れてしまったら、その子がもっと大変な状況になるのは目に見えています。兄や姉は「そのかわり節約して使うのよ、わかった?」と言い聞かせます。最初は素直に末っ子も節約をしました。
 ところが、末っ子の暮らしはますます苦しくなるばかりです。ついに末っ子は「こんな生活やってられるか!金は天下のまわりもの。使ってナンボじゃ」「借金も少し棒引きしてよ」と言い出します。さあ、この物語の結末はどうなるでしょうか。(副編集長・奥村 晶)

 今日取り上げるのは、総合面(1面)「ギリシャ反緊縮で連立/新政権 EUと摩擦の恐れ」、同(2面)「時々刻々/緊縮の反動 市場警戒/失業率25%不満噴出」です
 記事の内容は――25日投開票のギリシャ総選挙(一院制、定数300)で、緊縮財政反対を掲げる野党「急進左翼進歩連合(SYRIZA)」が149議席を獲得、第1党になった。同党のチプラス党首(40)が首相に就任、同じく、反緊縮を掲げる党「独立ギリシャ人」と連立することで合意した。一方、ギリシャを経済支援する欧州連合(EU)は緊縮路線の継続を求めており、交渉が不調に終わると、債務不履行(デフォルト)や、ユーロ圏離脱に追い込まれる可能性も指摘されている。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 冒頭のたとえ話の「末っ子」はギリシャ、兄や姉はドイツなどEUの中心になる国です。2009年秋、ギリシャで巨額の財政赤字が発覚したのをきっかけに「ユーロ危機(欧州債務危機)」が起きました。アイルランドやポルトガルなどに飛び火して、財政破綻への懸念から、主に南欧諸国の国債の価値が暴落。欧州の景気は一気に冷え込みました。

 EUや国際通貨基金(IMF)の金融支援策でギリシャは財政破綻を免れましたが、緊縮政策により公共事業や企業支援などの景気浮揚策が取れない一方で、税金だけが上がり続け、ますます景気が悪化します。失業率約25%と、貧富の差も広がり、国民には不満がたまっていました。だからこそ「緊縮より成長」を訴えるSYRIZAが支持を集めたのです。

 一方で、最大支援国のドイツは2000年代、高失業率に苦しみながら失業手当の削減など「痛みを伴う改革」で経済の立て直しに成功しました。それだけに、巨額支援を受けながら緊縮策に反発するギリシャへの視線は厳しく、現在の支援の枠組みが期限を迎える2月末、反緊縮を訴えるギリシャ新政府とEUとの交渉が簡単にまとまるとは思えません。
 新政府は、ユーロ圏からの離脱までは訴えていませんが、万一、交渉が決裂して財政支援が打ち切られた場合、ギリシャの中央銀行による民間銀行への資金支援が滞り、銀行が破綻するなど、ギリシャ発の信用不安が欧州に広がるおそれがあります。

 欧州経済の悪化は、世界経済、特にEUと関係の深い中国経済に波及します。中国は日本の最大の貿易相手国(輸出入とも)です。中国経済が悪化すれば日本経済にも影響が及ぶでしょう。詳しくは2013年9月24日の「今日の朝刊」の記事「ドイツの総選挙が就活を左右する?」を読んでみてください。

 ヨーロッパの一国の選挙結果なんて就活には関係ないと思わずに、欧州経済のアキレス腱ともいうべきギリシャの今後に注目してください。

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