2015年01月09日

電力、ガス、通信…融合・競争の新時代へ

テーマ:環境・エネルギー

◆ニュースのポイント

 東京電力が2017年にも家庭向けに電気とガスのセット販売を始めます。2016年の家庭向け電力小売り自由化に続き、2017年にはガスの小売りも自由化される方向。ガス会社が電力を売り、電力会社がガスも売る時代がやってきます。インターネット料金も含め、セット割引などさまざまなサービスが広がる見通しで、電力、ガス、通信各社の間で連携、競争が激しくなりそうです。

 今日取り上げるのは、1面の「東電、ガスをセット販売/家庭向け17年にも」です。経済面(6面)には「ガスと統合『世界の潮流』/数土・東電会長インタビュー/業種超えた競争へ」が載っています。
 記事の内容は――東電の数土文夫会長は、早ければ2017年から全国で家庭向けに電気とガスのセット販売に乗り出す方針を明らかにした。携帯電話会社などと連携し、通信サービスをセットで売ることも検討している。ほかの電力やガス、通信会社も同様の事業に乗り出す可能性が高い。電気、ガス、インターネット料金のセット割引など、さまざまな組み合わせのサービスが生まれ、家庭にとっては選択肢が増え、料金が安くなることも期待される。今はガス事業法で、家庭向けの都市ガス販売は地域でひとつのガス会社が独占することになっているが、政府は2017年をめどに家庭向けガス販売を自由化する考え。東電は2015年中にも各家庭につながるパイプラインを持つ都市ガス会社の中から提携先を探し、セット販売の体制を整える方針だ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

◆就活アドバイス

 電気やガスは、生活や産業に欠かせません。戦後しばらくは停電などを起こさずに安定的に供給することが重視され、地域ごとに電力会社やガス会社を一つにしぼる「地域独占」事業でした。これを担ってきたのが電気は東電、関西電力など大手10社、ガスでは東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの大手3社などです。その後、産業向けについては徐々に自由化が進み、電力大手は火力発電のために調達した液化天然ガスを企業向けに販売したり、ガス会社が自前の火力発電所で大手企業に電気を売ったりしてきました。

 政府は家庭向けも自由化しようと、まず2014年に電気事業法を改正し、2016年4月から家庭でも自由に電力会社を選べるようにしました。コンビニなど小さな商店も対象なので、新たに7.5兆円の市場が誕生するといわれています。政府は続いて、今月始まる通常国会にガス事業法改正案を出し、2017年にもガス会社も自由に選べるようにする考えです。

 すでに、東京ガスなどガス大手は、家庭向けの電力市場への参入をめざし、ガスと電気のセット販売に乗り出す準備を進めています。さらに、石油元売り大手のJX日鉱日石エネルギーが参入を表明したほか、鉄鋼会社、商社など異業種やベンチャー企業にも動きが広がっています。家庭向けのガスでも同様の動きが出てきた、というのが今日のニュースです。数土会長はインタビューで「通信ではスマートメーターと融合しやすいので研究している」と述べ、携帯電話会社など通信会社との連携にも積極姿勢を示しました。

 独占事業は競争原理が働かないため、料金が高止まりしがちです。これから各業界、企業がお互いに参入すれば、価格競争が起きて、料金が下がるとみられています。私たち消費者にとっては大きなメリットですね。でもこれから就活をするみなさんは、こうした「消費者目線」だけでなく、今後どんな組み合わせの新たな事業展開が考えられるのか、自由化が各業界・企業にどんな影響を及ばすのかなど、「ビジネス目線」を意識するようにしてください。

 ただ、大手10社が独占する電力業界と違って、ガス業界は全国に200社以上あり大手は3社のみ。中小企業も多くあります。自由化にあたっては、こうした事業者にどう影響するかも焦点です。今後の報道に注目してください。

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