2014年12月17日

原油安、どうして?どうなる? 国際経済を知ろう

テーマ:環境・エネルギー

ニュースのポイント

 ガソリンや化学製品などのもとになる原油がどんどん値下がりしています。エネルギーを輸入に頼っている日本の経済にはプラスですが、産油国であるロシア経済への不安が高まり、世界で株価が下がるなど、国際経済は混乱気味です。原油安の原因と影響から国際経済を学びます。

 今日取り上げるのは、1面の「ロシア通貨 暴落/1日で2割」です。総合面(3面)の「ロシア、大幅利上げ不発/原油安、懸念拡大」、経済面(9面)の「10年債の利回り 終値が過去最低/ロシア経済不安で」も関連記事です。
 記事の内容は――16日の欧州外国為替市場でロシアの通貨ルーブルが売られ、一時1ドル=79ルーブル近辺に暴落し対ドルの過去最安値を更新した。最近の原油価格値下がりを背景にルーブルは下落傾向にある。ロシア中央銀行の第1副総裁は「近い将来、状況は(金融危機だった)2008年に匹敵するものになると思う」と話した。通貨安は資源国全体に広がり、原油が下がり始めた夏以降、ブラジルやメキシコ、オーストラリアなどの通貨は対ドルで下落を続けている。資源国や新興国の通貨に対する不安が広がれば、さらなる通貨安や景気後退を招きかねない。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

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 グラフを見てください。原油の価格はこの数年1バレル100ドル前後でしたが、今年の夏から急落。12月に入って60ドルを割り込み、15日には5年7カ月ぶりに55ドル台にまで下がりました。なぜ値下がりしているのでしょう。

【原因1】米国などの「シェール革命」でシェールオイルの生産が急増し、原油が供給過剰気味に(2014年1月22日の「商社志望者も必見!『シェール革命』で潤う日本企業はどこだ?」参照)
【原因2】欧州や、中国など新興国の景気減速によるエネルギー需要の伸び悩み
【原因3】11月末、中東などの産油国12カ国でつくる石油輸出国機構(OPEC=オペック)総会で減産見送り

 OPEC総会では加盟国の一部から、原油が値崩れしないように生産を減らそうという意見が出ていましたが、サウジアラビアなど中心的な国は世界市場でのシェア確保を優先して減産しないことにしました。シェールオイルは地下1000メートル以上の地層を水圧破砕して取り出すため、従来の原油に比べて開発に費用がかかります。サウジアラビアが米国のシェールオイルを減産に追い込むために価格競争を仕掛けたという見方もあります。

 ロシアは輸出の7割以上を石油やガスなどの天然資源に頼る資源大国です。ウクライナ危機をめぐる欧米の制裁で苦しんでいるところに、OPECの減産見送りによる原油安が重なり、ルーブルが急落したわけです。これを受け、日本をはじめ世界で株安が進みました。一方で原油安は、世界経済を引っ張る米国の消費者には朗報です。年末商戦の売り上げも好調と言われています。車社会だけに今回のガソリンの値下がりは米国の消費者にとって約750億ドル(約8.9兆円)分の減税と同じ効果があるという見方もあるほどです。ロシアの苦境と米国の好景気……世界経済の動きは複雑です。

 原油安の日本への直接の影響はどうでしょう。国内でもガソリンや灯油の値下がりが続いています。火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)は原油価格に連動しているため、電気・ガス料金が来年から安くなるかもしれません。原発事故以来、LNG輸入量が急増して膨らんできた貿易赤字も減る方向です。原油安が長く続けば、プラスチックや化学製品など原油を原料とする商品の価格も下がりそうです。たとえば、紙をつくるのに重油を大量に使う王子ホールディングスは、1バレルあたり1ドル値下がりすれば年間2億円の増益効果があるといいます。物流コストも下がるので、多くの産業にプラスとなりそうです。

 でも、良いことばかりではありません。トヨタ自動車の米国での販売は11月、前年より3%増えましたが、日本から輸出するプリウスは13.5%も減りました。米国では原油価格が下がるとすぐ、燃費のいい小型車から大型車に売れ筋がシフトする傾向があるからです。日本車の売れ行きが鈍るかもしれません。

 原油価格、株価、円相場などの国際経済の動きは、みなさんが志望する業界にも波及します。これからの記事にも注目し、志望企業にどんな影響があるか考えてみましょう。

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