就職活動が本格的に始まりました。今年は選考開始が6月に前倒しされ、説明会を聞いてから選考までの期間が昨年より2カ月短くなっています。そうなると困るのが、会社選びではないでしょうか。志望業種はなんとなく選んだのですが、その中でもどこの会社に行くべきなのか、そもそもA社とB社は何がどう違うのか…… 悩んでいる人も多いんじゃないでしょうか。
ある都内の女子私大生さんは、エクセルにぎっしりと「自動車部品」「総合重工」「エアコン」「鉄鋼」といった志望業種とそれぞれの業種ごとに志望する会社名をまとめていました。
「営業、特にBtoB(企業間取引)をやりたいのと、海外に行きたいのでその両方にあてはまりそうな業界をピックアップしています。市場が国内に限られていたりBtoC営業の仕事が多そうな業種は、ちょっと……」
そんな彼女の悩みはずばり、「業界は絞ったんですが、会社はどこを選んだらいいのでしょうか」ということでした。
「業界地図は買って読んでいるんですが、たとえばその業界の上位何社まで受けた方がいいとか、あるんですか?」
……難しい質問です。確かに、業界トップや2番手企業は経営的に安定しているとは言えますが、だからといってその会社が10年後も安泰とは限りませんし、はたまた今は小さな会社が一気に成長企業になったり、業態を変えて大発展したりするケースもないとは言えません。そもそも、そこの社風が自分とあわなかったら元も子もありませんね。
「とはいっても、会社をどう選べばいいかわからないんです。会社のホームページ見ても情報量が多すぎて、どこから見たらいいかわからなくて……」
と悩みのとまらないこの女子学生に送ったのは、こちらのイヤァオ!です。
「黙って新聞を読め!!」」
「就活ニュースペーパー」内では何度も繰り返してきていることですが、就活では新聞が有効活用できます。特に使えるのがこういった、企業選びの参考情報集めの時です。企業のホームページには確かにいろいろな情報が載っていますが、いきなりそれを見に行っても目がくらくらするだけでしょう。
例えば彼女が志望している「鉄鋼」業界。国内トップの会社は新日鉄住金です。この会社名を、まずは朝日新聞の記事データベース「聞蔵(きくぞう)」(きっとみなさんの大学図書館などで使うことができます)に入れて直近1年間の記事をピックアップしてみます。例えば、こんなニュースを見つけることができます。
「鉄冷えに挑む 新日鉄住金、日新製鋼の買収決定」(2016年2月2日)
業界4位である日新製鋼の買収を決めたニュースです。背景には、中国で鉄材を大量に作りすぎたために鉄の値段が下がり、世界中の鉄鋼メーカーが採算悪化に苦しんでいることがある、と記事中にあります。記事中で新日鉄住金の社長は「(中国鉄余りの)問題解消には相当の年月がかかる」と言っています。
この記事をざっと読むだけでも、鉄鋼メーカーが「鉄冷え」の現状にどう対応しているかについて調べる必要がある、とわかるはずです。
2位のJFEスチールはどうか。調べてみると、こんなニュースがありました。
「保育所 工場や製鉄所にも」(2016年1月14日)
千葉市にあるJFEスチールの独身寮跡地に保育所を作るというニュースです。狙いは、製造現場に女性社員をもっとたくさん入れること。特に女子学生にとっては知っておいて損はなさそうなニュースですし、同業他社に「JFEにはこういうニュースがありましたが、御社はどうですか?」という質問もできそうです。
朝日新聞デジタルの有料会員(就活割で月2000円)になれば1年分の記事を検索できます。新聞の検索システムが手元にない場合は、とりあえずグーグルのニュース検索にかけるだけでも結構な数のニュースを拾うことができます。少しニュースの数が多いので整理が難しいかもしれませんが、慣れてくれば就活に使えそうなネタをピックアップすることはできるはずです。いま新日鉄住金で検索してみると、「平成29年度の採用780人減」(産経ニュース)という気になる報道がひっかかってきました。こういった情報一つひとつが、会社選びや比較の際の参考になるのです。
ちなみに冒頭の女子学生、行きたい業界として電子部品業界もピックアップしていました。
ふ「どういう会社があるか知ってる? 例えば『京セラ』とか」
学「ああ、なんか聞いたことはあります」
ふ「京セラの稲盛和夫名誉会長の名前は聞いたことある?」
学「稲盛、知らないですね~」
ふ「それだと京セラは落ちるな……」
稲盛氏は京セラを創業したカリスマ経営者でもあり、近年では経営破綻した日本航空(JAL)の立て直しに尽力した人物でもあります。ニュースをチラチラみる習慣があれば稲盛という名前を知り、京セラを受ける際にはもっと詳しく調べてみよう、と思えるようになるはずです。選考開始まで3カ月、企業選びのきっかけに、新聞をはじめとするニュースをフル活用してください。ちなみにくわしいニュースの検索方法や活用方法は、木之本敬介あさがくナビ編集長の著書『最強の業界・企業研究ナビ2017』に書いていますので、どうぞご一読を。