2014年07月15日

「介護ロボ」で考える 人にしかできないこと

テーマ:医療・健康

ニュースのポイント

 寝たきりの人をベッドから起こして車イスに乗せる介護ロボットなどが次々と開発されています。産業向けで培った技術を応用しています。高齢化でもっともっと働く人が必要になるのに、人手不足が続く介護や医療業界。ロボットと人間の役割分担について今日は考えてみましょう。

 今日取り上げるのは、経済面(6面)の「人手不足列島/介護ロボで負担軽減/産業向け技術活用/人相手に試行錯誤」です。
 記事の内容は――介護現場で働く人の負担を減らそうと、大手メーカーがロボットや機器の開発に乗り出している。高齢社会で慢性的な人手不足に悩む現場も期待を寄せる。介護分野の2013年度の有効求人倍率は1.91倍で、全国平均のほぼ2倍。団塊の世代が75歳以上になる2025年には最大100万人が不足するとの試算もあり、安倍政権は成長戦略で介護ロボットの開発強化を打ち上げた。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 今日の記事も含め、最近の朝日新聞から介護や医療ロボットを開発した企業をまとめて紹介します。

◆産業用ロボットの安川電機(北九州市)→ベッドから車イスへの移動を助ける介護ロボット(右の写真)を開発。実証実験で改良を重ね2016年発売を目指す。食品業界向けでは、材料を機械に入れたり食品を運んだりできるアーム型ロボットも手がける。
◆自動車部品の東海ゴム工業(愛知県小牧市)→移動を助ける介護ロボット。独自開発した電気を通すゴムを活用。アーム部分をゴムで覆って本物の腕に近い感触に仕上げた。2015年度の商品化を目指す。
◆パナソニック→ベッドが車イスに変身する「リショーネ」の受注販売を6月に開始。病院で薬などを運ぶ搬送ロボット「ホスピー」も販売。10年前に発売したが2台しか売れず、病院のニーズを探り直して改良した。薬が届く時間は看護師が運ぶときの3分の1以下に。1台1000万円で導入費用はシステムを含めて数千万円と、気送管など従来の搬送システムの半分以下、維持費も5分の1ほどに抑えた。
◆衛生陶器大手TOTO→トイレまで移動せずに使える「ベッドサイド水洗トイレ」を2013年9月に発売。
◆トヨタ自動車→歩行が不自由な人のリハビリを支援するロボットを、今秋から病院やリハビリ施設に販売開始。レンタルも。脳卒中などの後遺症で足にまひが残った人などの歩行に役立てる。足に取り付けて歩行練習を支援するものと、体の重心移動を支援するものの2種類。

 介護は、高齢化でこれから需要が増えるのは確実な業界です。腰をかがめる作業で腰痛に悩む人が多いのですが、介護ロボの導入で2人がかりの作業が1人でできるようになれば、働く環境もよくなるでしょう。ただ介護は、製品をつくる工場とは違い、生身の人間が相手。安川電機は自動車の溶接ロボットのモーター技術を生かして、運ばれる人が不安を感じる揺れを極力抑えたとのことですが、誤作動はケガにもつながりますから、細心の配慮が求められます。

 将来、介護ロボットが普及して力仕事はロボットに任せるようになると、人間は何に注力すべきなのでしょう。よりきめ細やかにお年寄りの要望に応えたり、心のケアを担ったり……。パナソニックのホスピーの開発者は「大事なのはロボット技術を極めることではなく、ロボットでなければ解決できない問題を見つけ、解決策を示すことだった」と語っています。ロボットに任せていくことと、人間にしかできないことを考えることは、仕事とは何かを考えることでもあります。関連メーカーや介護業界志望者だけでなく、いろいろな業界に関わることなので、ぜひ考えてみてください。

 産業用ロボットについては、業界トピックス(6月24日)「人手不足 ロボット導入広がるか」でも説明しています。こちらもどうぞ。

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