ニュースのポイント
ゲーム大手の任天堂とDeNAが手を組み、スマホ向けのゲームを共同開発します。スーパーマリオなどの人気キャラクターがスマホゲームに登場することになりそうです。マリオファンにとってはうれしい話ですが、ゲーム専用機に注力してきた任天堂がなぜ方針を変えたのでしょう? ゲーム市場や業界地図がどうなるのか、注目です。
今日取り上げるのは、1面の「任天堂・DeNAが提携」です。経済面(8面)には「任天堂、スマホへ動く/DeNAと提携/家庭用不振 響く」も載っています。
記事の内容は――任天堂とDeNAは17日、業務・資本提携することで合意した。互いに株式を持ち合い、任天堂のキャラクターを活用したスマートフォン向けゲームを共同開発する。ゲーム専用機に注力してきた任天堂にとっては大きな戦略転換になる。任天堂がゲームの企画・開発を担い、DeNAはサーバー開発や利用者サービスなどの運営に徹する。任天堂の人気キャラクターを用いた最初のゲームを年内に出す方針。任天堂のゲーム機利用者向けに、新たな会員制サービスも共同開発する。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
今はあまりゲームをしない私ですが、三十数年前の大学生のとき「ドンキーコング」にはまったことがあります。マリオは実は、このゲームでデビューしたキャラクター。本当に息が長いですよね。当時は喫茶店やゲームセンターのテーブル型の据え置きゲーム機でした。ファミコン、DS、Wiiなど、ゲーム機の形は変わり、性能や画質は格段に進歩しました。我が家では、子どもたちがマリオカートなどで遊んでいます。ずっと人気者であり続けるマリオは不滅のキャラクターなのかもしれません。
マリオを生み出した任天堂は、スマホゲームへの参入にはずっと消極的でした。スマホゲームは競争が激しいうえに、はやりすたりが早く、勝ち組は一部です。そこへマリオなどの人気キャラを投入しても、すぐに消費し尽くされて飽きられることを心配していたからです。
その任天堂が方針を変えた背景には、ゲーム市場の劇的な変化があります。2007年に7000億円あった家庭用ゲーム機などの国内市場は6年間で4000億円に縮小。一方でスマホ向けゲーム市場は急成長しており、1兆円強のゲーム市場全体の半分を占めるまでになりました。スマホゲームは、一般的にゲーム自体は無料で、早く先に進むのに必要なアイテムなどに1回数百円程度課金する方式が主流です。DSやWiiなどのゲーム機と専用ソフトを売る任天堂のビジネスは苦戦が続き、2014年3月期決算まで3年連続の営業赤字です。
ゲーム専用機の一方の雄であるソニーコンピュータエンタテインメント(SCE)はどうか。据え置き型ゲーム機「プレイステーション(PS)4」の累計販売台数は任天堂「Wii U」の約2倍にのぼり、インターネットを通じた定額制のゲーム配信など安定収益を得られるサービスを拡充しています。PS4は高画質でスマホゲームと差別化しやすく、任天堂のほうがスマホゲーム拡大の影響を大きく受けるわけです。
DeNAも、従来型のガラケー向けゲームサイト「モバゲー」でヒットを飛ばしましたが、その分スマホへの転換で出遅れ、昨年3月期の売上高は1813億円で前年より10%減るなど、この数年減収傾向にあります。
そこで今回の提携です。スマホゲームが主流になり、さらに拡大するとみられる中、任天堂もこれ以上指をくわえて見ているわけにはいかず、自社キャラクターを成長市場で広めてゲーム機やソフトの売り上げにつなげる方針に転換したのです。任天堂の強みは、ゲーム専用機やソフトの開発と、マリオなどのキャラクターのブランド力。DeNAは、IT(情報技術)に強く、利用者の動向を分析して日々調整するなどスマホ向けのサービス運営ノウハウが豊富です。両社の強みが補完し合う関係にあるため、うまくいけば大ヒットゲームが生まれるかもしれません。
ただ、はやりすたりの早い業界です。ヒットを生んだとしても、すぐに飽きられたり、無料スマホゲームに人気が集まることで家庭用ゲーム機市場の利用者が減ったりする可能性もあります。ゲーム業界の「王者」とも呼ばれる任天堂のスマホゲーム市場参入は、ゲームのあり方やゲーム業界全体の行く末にも大きな影響を及ぼしそうです。
ゲーム業界に限りません。就活では、自分が志望する業界の最新動向を新聞記事などで把握し、市場や「業界地図」の変化を追っておくことをおすすめします。
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