ニュースのポイント
このところテレビや雑誌で、地域ならではの食生活や、一風変わった風習などを取り上げる番組や特集が人気です。たとえば名古屋では開店開業の祝い花は通行人が勝手に持ち帰ったほうが喜ばれる、といった「へぇー」な話が満載で、楽しいですよね。新聞にも、47都道府県を色分けした地図がときどき登場します。今日は「
公示地価」についてのニュースで日本地図が載っていました。新聞の地図は見るだけでも社会の動きを知るいい手がかりになります。ぜひチェックするようにしましょう。(副編集長・奥村 晶)
今日取り上げるのは、総合面(1面)の「商業地 地価下げ止まり/7年ぶり/宅地 7年連続で下落」です。
記事の内容は――国土交通省が2015年1月1日時点の「公示地価」を発表した。商業地の全国平均が前年調査から横ばいとなり、7年ぶりに下落が止まった。東京、大阪、名古屋を合わせた3大都市圏は住宅地、商業地とも2年連続で上昇。金融緩和で市場に流れ出たお金や、中国など海外の「外資マネー」が国内の不動産に投資されている。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
「地価」は、家を買う、親から土地を相続するなど、特別なライフイベントにかかわるもの、不動産をもっていない自分には関係ないと思っていませんか。志望企業が不動産業界でなくても、金融業界であれば土地を担保にした融資、メーカーや小売りでも工場や店舗の立地など、さまざまな業種で地価が影響してきます。
そもそも一口に地価といいますが、今回のように国土交通省が調べ、毎年3月に発表する「公示地価」、国税庁が調べ7月に発表する「路線価」、各都道府県が調べたものを国交省がまとめて9月に発表する「基準地価」の3種類があります。公示地価は土地の持ち主が市町村に納める「固定資産税」の基準に、路線価は土地を相続する際に納める相続税の基準になります。「いちからわかる!/土地の値段って色々あるの?」(2面)にも詳しい解説があるのでぜひ目を通しておいてください。
地価でわかることは主に人口の増減や景気の良し悪しです。高齢化や人口減少が続く地方の自治体では下落が続き、都市部など人口が流入している自治体では景気の回復などを背景に上昇します。そのほかにも北陸新幹線開通への期待で金沢市の一部で上昇したり、土砂災害のあった広島市安佐南区の一部で下がったり、ということもあります。
しかし今回、都市部でみられた公示地価上昇の理由はそれだけではありません。台湾や中国、シンガポールなど、アジア系の投資ファンドが、東京や大阪の一等地のホテルや高層ビルを次々と高額で買収しているのです。不動産サービスのJLL によると、都内で2014年に売買された不動産の約2割は海外投資家が買ったといいます。円安により、海外からは日本の土地が「割安」に見えます。そして、売る日本側は、購買意欲の高いアジアの富裕層や投資ファンドに高めの値付けをする、ということで「実力」以上に地価が上昇している面もあるのです。「すでに投資ではなくギャンブルの域にある」という鑑定担当者もいます。
にもかかわらず、商業地の全国平均は上昇に転じたわけではなく横ばい、住宅地の全国平均は下げ止まってすらいません。地方の景気回復がいかに遅れているのが、この指標からよくわかります。
さて、みなさんの気になる地域は何色でしたか。
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