◆ニュースのポイント
さて問題です。
「 」の意味を表す語句として最も適当なものを、(1)~(5)のうちから一つ選びなさい。
「病気の急性期を過ぎた高齢者が、自宅に戻って生活できるよう、リハビリなどを受ける介護施設。病院と自宅の中間的な位置づけ」
(1) 特別養護老人ホーム(特養)
(2) 有料老人ホーム
(3) グループホーム
(4) 介護老人保健施設(老健)
(5) 介護療養型医療施設
「介護」や「高齢者」、「福祉」という文字を新聞や雑誌で見かけても、まだピンと来ない人が多いかもしれません。ですが、介護・福祉サービスの市場は現在8兆円規模と年々巨大化しています。厚生労働省の試算では、団塊世代が75歳を迎える2025年には介護サービスの利用者が600万人を超えるとみられています。少なくとも、特養と老健の違いくらいはスラッと言えるようになっておきたいですね。
(副編集長・奥村 晶)
今日取り上げるのは、総合面(5面)の「リハビリ専門職 多/老健の介護報酬 増/厚労省案 在宅復帰促す」です。
記事の内容は――介護保険サービスの値段である「介護報酬」の2015年度からの改定で、老人保健施設(老健)について、リハビリを担う専門職を数多く配置している施設などへの加算を手厚くする案を厚生労働省がまとめた。老健は、介護が必要になった人が自宅に戻ることを前提にリハビリなどをする施設だが、2013年の平均退所日数は約311日と長期化している。リハビリ専門職員数が多いほど在宅復帰率が高いという。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
◆就活アドバイス
冒頭に紹介したのは、「就活ニュースペーパーby朝日新聞」の時事・一般常識ドリルの問題の一つ。正解は、今回取り上げた(4)介護老人保健施設です。
医療や年金、介護など社会保障の給付額は100兆円を超え、国の一般会計予算をも上回っています。保険料だけでは支えられず、国と自治体からの公費の投入は40兆円に達しています。そういった背景もあり、政府は介護給付費の抑制や、在宅での介護を重視する方針を打ち出しています。つまり、高齢者にがんばってリハビリしてもらって、できるだけ早く施設から自宅へ帰ってほしい――。今回のニュースもその一環です。
老健の定員はあわせて約35万人。介護が必要なお年寄りのための介護保険施設の一つである特別養護老人ホームの入居者数約52万人と並んで施設介護の中核を担っています。
一方、老健入所者のうち、リハビリを終えたら家に帰りたい、と望む入所者が約3割いるのに対し、自宅に戻ってくることを希望する家族は1割もいません。高齢者本人と家族の思いのズレは深刻です。
政府、高齢者、家族の思いのズレをいかに解消していくか、今日の朝刊(2014年7月15日付)でも紹介しましたが、さまざまな業界が知恵を絞っています。介護の大手が、あえて介護保険制度の対象にならない高齢者見回りや家事代行といったサービスに注力したり、大手メーカーが介護機器や介護ロボットを開発したりしています。
介護福祉業界を志望している人に限らず、金融、製造、流通、食品に不動産、どんな業界に就職したとしても、何らかの形で介護や高齢化を意識したビジネスに携わる可能性が大いにあります。もちろん、みなさん自身が家族の介護に直面することもあるでしょう。
自身がリアリティーを持ちにくい分野だからこそ、意識的に敏感になっておきましょう。
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