ニュースのポイント
東京電力が、関西と中部エリアの家電量販店に電気を供給します。逆に関西電力、中部電力はもう首都圏に参入済み。2016年からは家庭向けも含め電力の小売りが全面的に自由化されます。長く地域独占で競争がなかった電力業界ですが、新たに参入する他業界も含めて本格的な戦国時代に突入します。
今日取り上げるのは、経済面(9面)の「域外売電 競争が本格化/都市部で大手電力攻勢」です。
記事の内容は――東京電力は10月から、ヤマダ電機の関西・中部地方の62店と、ケーズホールディングスの関西の20店に電気を売る。電力最大手の東電が他のエリアに参入するのは初めて。10年後には域外での売上高1700億円をめざす。競合する地元の関電、中部電より数%安く売るため、家電量販店は電気代を節約できる。これに対し、子会社を使って首都圏に進出している関電、中部電も攻勢を強める考えだ。2016年の電力小売り全面自由化をにらみ、3大都市圏での競争が本格化してきた。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
日々の生活やモノづくりなどの経済活動に欠かせない電力は戦後、安定的な供給が重視され、北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄の電力10社による「地域独占」が続いてきました。
企業など大口向けの電力販売自由化が始まったのは2000年から。電力会社は地域に関係なく売れるようになりましたが、他地域への進出は進みませんでした。全国の料金差がほとんどないうえ、どの大手電力も他の地域に攻め込むよりは自分の地盤を守り業界秩序を維持する方が得策と考えてきたからです。自由化で工場、商業施設、ビルなどは大手電力会社以外からも電気を買えるようになりましたが、大手のように電気を安定供給できる会社はほとんどなく、これも広まりませんでした。
ところが2011年の東日本大震災の原発事故を機に、大手電力は相次いで電気料金を値上げ。原発依存度などによって価格差が生まれました。さらにガス会社、太陽光や風力など自然エネルギーの事業会社などによる新規参入が盛んになり、競争機運が高まりました。中部電は昨年10月、新規参入組のダイヤモンドパワー(東京)を買収して首都圏に進出。関電も子会社「関電エネルギーソリューション」を設立して今年4月から首都圏で販売を始めました。今回の東電も、子会社「テプコカスタマーサービス(TCS)」を通じて販売します。エリア外で現地の電力会社より安く電気を売ることができるのは、発電所や送電線などの初期コストをかけず、地元の工場の自家発電などから余剰電力を仕入れるためです。
2016年の全面自由化に向け、今後は異業種からの参入もさらに増えて競争が激しくなりそうです。電気とガスをまとめて買える商品、スマホやケーブルテレビとの「セット割引」など、新たなサービスも登場すると言われます。東京ガス、石油元売り大手のJXホールディングス、太陽光発電に熱心なソフトバンク、IT企業の楽天などが次々と電力やエネルギーの新部門を立ち上げ、参入に意欲を示しています。
競争は電気料金の値下げにもつながる歓迎すべき動きですが、就活に臨むみなさんはこうした「消費者目線」だけでは足りません。新聞記事などを通じて、様々な業界や企業の動きや影響などを「ビジネス目線」で捉えることも必要です。
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