2014年08月20日

銀行・証券一体の投資増作戦 なぜ?

テーマ:経済

ニュースのポイント

 預金や融資による利息で堅実に利益を上げる銀行と、株式の売買を軸に積極的な営業が持ち味の証券会社――こんなイメージで語られてきた銀行と証券の連携が深まっています。どんな事情があるのでしょうか。

 今日取り上げるのは、経済面(6面)の「新トップ2014 三菱UFJモルガン・スタンレー証券社長 長岡孝氏(60)/投資残高50兆円 銀行と狙う」です。
 記事の内容は――長岡社長は「銀行と一体となって、預金から投資へお金を移す。証券会社の商売を劇的に変化させることが、我々の役割だ」と語る。メガバンク最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の預金量120兆円に対し、投資信託や株の残高は36兆円。1割を投資へまわし、残高50兆円を達成したい考えだ。グループでは証券から銀行へ約700人が出向。窓口で投資信託などを売る「仲介」や、銀行が顧客を証券に取り次ぐ「紹介」も実績が広がりつつある。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 「(銀行と証券会社では)仕事への考え方や経営の仕方が相当違う。銀行は融資をすれば黙っていても利息が入ってくる。証券は毎日顧客をまわって、ゼロから取引を獲得していく競争の激しい世界」
三井住友銀行副頭取からSMBC日興証券社長に就いた久保哲也さんは、以前の朝日新聞のインタビューでこう語りました。

 同じ金融業界にありながら、全く異なる手法で利益を上げてきたのが銀行と証券会社。その両者間で最近目立つのは、同じグループに属するメガバンクと大手証券による連携です。大手銀行グループ3社では、以下の組み合わせです。
◆三菱UFJFG→三菱東京UFJ銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券
◆みずほFG→みずほ銀行、みずほ証券
◆三井住友FG→三井住友銀行、SMBC日興証券

 これまでも銀行の窓口では、銀行員が証券会社の投資商品を勧める「仲介」をしていました。そこで売るのは外国の政府や企業が借金のために発行する債券(外債)が中心です。さらに、投資の専門家である証券会社員を銀行が「紹介」すれば、債券より損失リスクが高い株式などの投資商品も売りやすくなります。いまメガバンクの窓口では顧客に「余裕のある資産を投資などで運用してはいかがでしょうか。グループの証券会社を紹介させていただいてもよろしいですか」などと勧める営業が始まっています。同意を得られれば、約束した日になじみの銀行員が証券会社員を連れて顧客の自宅を訪ねます。みずほFGでは、銀行の支店内に証券の支店を置く方法も進めています。

 なぜこんなことをするのでしょう。もらえる利息は少なくても基本的に預けたお金が目減りする「元本割れ」はしない預金を扱うのが銀行です。一方で、常に損失をかぶるおそれがある株式などを扱うのが証券会社。顧客にとって銀行の方が安心感や信用度が高いのが一般的でしょう。そこで、銀行の顧客を共有してお金を投資に振り向けるように促し、グループ全体のもうけを増やす狙いです。

 背景にあるのは「日本では、多額の金融資産が預金として眠っている」との指摘です。日本の個人金融資産は1650兆円にのぼりますが、半分以上が現金か預金で、株や債券などの投資にまわっているのは16%。米国の5割強、欧州の約3割に比べると低い水準にとどまっているからです。もっと投資にまわれば、経済が活性化する可能性があります。

 先日、メガバンクに勤める大学時代のゼミの同期生と話をしたら「最近、グループ内の交流が当たり前になり、周りに証券関係者が増えた。若い行員は証券の知識も求められる」と言っていました。これからは銀行志望者は株などの投資について、証券志望者も銀行の業務について知っておいた方が良さそうです。

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