ニュースのポイント
ウクライナ東部上空でマレーシア航空機が撃墜され、乗客乗員298人全員が亡くなる大変痛ましい事件が起きました。欧州から東南アジアへ夏休みの旅行へ行く家族が多く、80人以上の子どもが犠牲になったとみられています。昨年末から混乱が続くウクライナで今何が起きているのでしょうか。
今日取り上げるのは、1面の「安保理、撃墜非難の決議案/オバマ氏 ロシア批判強める」です。総合面(3面)にも「ロシア包囲 強める豪・欧/旅客機撃墜 制裁強化論も」が載っています。
記事の内容は――マレーシア機撃墜事件で国連安全保障理事会は親ロシア派に対し、国際調査団の無制限の立ち入りを認めるよう要求する決議案を採決する予定。事件への非難も盛り込む。オバマ米大統領は緊急演説で「プーチン大統領とロシアはウクライナ政策を今こそ転換すべきだ」と強調した。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
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ウクライナ情勢については、3月3日から5日の3日間、「今日の朝刊」で基本的な対立構図や各国の立場、日本への影響などについて書きました。経緯をおさらいします。
欧州とロシアの間にあるウクライナは1991年に旧ソ連から独立。欧州の仲間になろうという「親欧州派」と、ロシアと仲良くしたい「親ロシア派」の政争が続いてきました。2013年11月、ロシアに近いヤヌコビッチ大統領(当時)が、欧州連合(EU)と関係を強める協定を見送ったことから、首都キエフで大規模な反体制デモが起き、今年2月に政権は崩壊。親欧米の暫定政府ができると、ロシアがウクライナ南部のクリミア半島を支配下に置き、併合を宣言しました。南部と同様にロシア系住民が多い東部でも、ロシアへの編入を求める動きが強くなり、ウクライナ政府軍対親ロシア派の戦闘が激しくなっていました。
親ロシア派の武装勢力にはロシアから武器が流れ込んでいると言われ、実際に地対空ミサイルで政府軍機を撃墜していました。今回の現場は武装勢力の支配地域でもあり、旅客機を政府軍機と見誤ってミサイルを発射したのではないかとの見方が有力です。このため国際社会は、親ロシア派を支援しているとみられるロシアへの批判を強めています。
クリミア併合後、主要7カ国(日米英仏独伊加)は、主要国首脳会議(G8)からロシアを排除して「G7」に戻りました(3月26日の今日の朝刊「G8崩壊!G7、G20、Gゼロ…世界はどうなる?」参照)。ただ、当初からロシアに強硬姿勢を示してきた米国に対し、欧州は天然ガスの供給を依存するなどロシアとの経済関係が強く、対ロ経済制裁を強めることには慎重で、必ずしも足並みはそろっていませんでした。
ところが、今回の事件の犠牲者の多くが欧州の人だったこと、さらに親ロシア派が遺体を乱雑に扱ったり事故の調査を妨害したりしているとのニュースが伝わり、欧州世論の対ロ感情が急速に悪化。欧州の首脳も対ロ強硬姿勢を強めています。日本はどうかというと、事件を強く批判しつつ、北方領土問題の進展を重視する安倍首相は「プーチン大統領との対話を続けていく」と語るなど微妙な立場です。
欧米対ロシアの構図は国際情勢の基本です。世界の経済情勢を左右し、日本の経済にも波及します。みなさんが目指す様々な業界にも少なからず影響します。基本構図を押さえたうえで、業界や企業にどんな影響があるのか調べたり考えたりしてみてください。
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