ニュースのポイント
「この男、即戦力。世界一即戦力な男から人事担当者の君へ」と題したサイトを立ち上げ、3週間で内定を勝ち取った男性がいます。実は引きこもり経験があり、人と話すのは大の苦手。それもさらけ出したユニークな就活です。明日深夜にはフジテレビ系列で、この男性の就活ドラマが放映されます。
今日取り上げるのは社会面(37面)の「ニュースQ3/『世界一即戦力な男』の就活成功物語」です。
記事の内容は――昨年2月、東洋大3年だった菊池良さん(26)が立ち上げた「超上から目線」な自己PRサイト。動画で「僕の力を存分に活用できる企業があれば、日本で就職しても良いかな」「クリエーティブの申し子」「僕ってソーシャルのかたまり」と自信満々にPRを展開し、企業が面接を申し込む仕掛けだ。今春就職したウェブ制作会社LIGに本人を訪ねると物静かで人見知りな新入社員だった。小さい頃から人と話すのが苦手で、高校時代から6年間引きこもり、ネット世界に浸った。大検(当時)を取って東洋大文学部に入学。就活シーズンになったが「自分がまともに勝負できるわけがない」とサイトをつくった。公開するとツイッターやフェイスブックで拡散。約50社から“エントリー”があり、15社と面接、4社から内定を得た。LIGの副社長は即戦力じゃないのは分かっていたが、自ら企画しキャラクターを作って世の中に発信した実行力を評価したという。菊池さんの就活物語はフジテレビがドラマ化し、動画配信サイトでの視聴数は累計75万回を超えた。菊池さんは「強気になれというよりは、いろんな方法があると伝えたい。従来型がつらければ別のやり方を探して欲しい」と言う。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
菊池さんのサイトを見てみると、記事を読んだ印象とはちょっと違いました。「超上から目線」の人物を無理やり演じていることを、あえて分かりやすく伝えているのです。自己PRの動画では、「クリエーティブ」「イノベーション」「ワールドワイド」「ソーシャル」などとカタカナ言葉を並べますが、インタビュアーに「イノベーションってどういう意味ですか?」と突っ込まれて答えに詰まります。資格を問われると「ん?ん? 簿記検定3級の試験は受けました」。「合格したんですか?」と追及され「ほんとナンセンスですよねえ。あなたってほんとオールドタイプですね。全然だめだなあ……」とごまかすところで終わります。
このほか、「即戦力な経歴」欄には「6年間引きこもり活動に従事」の記述。「即戦力なTOEICスコア」と題して160点の証明書を見せ、「通常、試験というものは100点以上は取れないが、菊池は160という数字を叩き出した」とユーモアたっぷりに紹介。菊池さんは自らの個性、弱み、強みをよく理解して自分をさらけ出したうえで、一つの作品を作り上げました。自虐ネタ満載の凝った作りで、とても面白く、よく出来たサイトです。個性豊かなユニークな人物像が伝わり、私も会ってみたいと思いました。WEB制作会社に内定したのもうなずけます。
みなさんに見習ってほしいのは、菊池さんが他の人と同じ戦い方をしてもかなわないと考え、サイトをつくるという独自の工夫をして内定を獲得した点です。みんな面白サイトを作りましょうという意味ではありません。どうしたら自分が魅力的に見えるか分析し、どう自分を表現するか、工夫の仕方はいろいろあるはずです。良い面も欠点も含めて、「自分らしさ」をいかに伝えるかがポイントです。
日々面接が続いています。いい結果が出ずに落ち込んでいる人もいると思います。いっとき肩の力を抜いて、菊池さんのサイトやドラマを単純に楽しむのもあり。気分を入れ替えて、次の面接に臨みましょう。
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