ニュースのポイント
「ベア」「春闘」「連合」という言葉がニュースに多く登場しています。学生のみなさんにはあまりなじみがないと思いますが、これからの日本経済の行方を左右する大事なテーマです。ベースアップ(ベア)を実施する企業は業績が好調だということもわかります。企業研究の参考にしてください。
今日取り上げるのは、1面トップの「時時刻刻/春闘幕開け/ベア 広がり焦点/大手に前向き姿勢も/中小や非正規は高い壁」です。
記事の内容は――経団連と連合の労使首脳による会談で春闘がスタートした。上昇し始めた物価にあわせ、企業は賃金体系を底上げするベースアップ(ベア)を認めるのかが焦点。会談で連合は5年ぶりにベアを要求。経団連会長は「業績改善が賃上げにつながる好循環をつくり出すべく努力したい」と理解を示した。2002年以降、春闘の平均賃上げ率は2%を下回り、ベアゼロの状態が10年以上続く。連合は賃金が上がらないことが購買意欲を失わせ、物価が下がるデフレを長引かせたとして「ベア1%以上」を求める。ただ、中小企業、パートや派遣社員などの非正規労働者を取り巻く環境は厳しい。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
「今年の春闘、かなり期待している。最近覚えた単語は『ベア』」。昨日の夕刊にこんな声が載りました。好業績の建設会社に勤めるサラリーマン(42)ですが、入社して約20年ベアは一度もなかったとのこと。久しぶりに賃上げに向けて盛り上がっていることがわかります。
「春闘」とは、給料アップや働く時間の短縮といった労働条件の改善を求めて、毎年2月から3月にかけて、全国一斉に企業の労働組合が経営側と交渉するもので、「春季闘争」の略です。企業ごとの労組では力が弱いため、歩調を合わせて交渉することで補っているのです。
「連合」は、各企業の労働組合が加盟する国内最大の団体で、日本労働組合総連合会の略。労働者の代表として、大企業の経営者の集まりである「経団連(日本経済団体連合会)」と交渉して大きな方向性を決めます。その後、各企業の労組と経営側による団体交渉で賃金水準などを決めていきます。労組側はストライキを行って要求の受け入れを迫ることがあります。最近は少なくなりましたが、かつては春闘の時期に鉄道会社や航空会社の労組がたびたびストをしたため、電車や航空機がストップして通勤、通学が大混乱することがありました。労組に入っている人の数は、年々減って、今では働く人の2割に届きません。春闘は、この2割の人たちの給料を決めるに過ぎませんが、労組がない企業や労組に入っていない人の賃金水準にも影響するので、毎年注目されます。
給料が上がる仕組みには、主に次の3種類があります。
◆定期昇給(定昇)=年を取ったり働いている年数が増えたりすると、仕事の能力が高まったとみて賃金を上乗せする。入社から定年退職までの平均的な賃金水準を試算したものを「賃金カーブ」といい、緩やかに上がるカーブを描く
◆ベースアップ(ベア)=全社員の定昇の水準を一斉に引き上げること。賃金カーブの線を全体的に上にずらす。物価上昇を賃金に反映させたり、会社の業績がいい時にもうけを従業員に分けたりするときに行う
◆賞与(ボーナス)アップ=ベアは将来にわたって企業の人件費を増やすことになる。このため先行きがわからない企業は、ベアではなく直近の好業績を賃金に反映させるボーナスアップで働きに報いようとすることが多い
※定昇とベアの違いは、下の「ニュースがわからん!」の記事のグラフを見てみてください。
これからの春闘本番では、たくさんの企業名が記事に登場します。各企業の最近の業績や特徴に触れる記事も多いので、志望企業の動向は見逃さないようにしましょう。ベアと日本経済の大きな流れについては、昨年10月18日の今日の朝刊「ベアってなんだ? アベノミクス成功のカギ」でも解説しました。読んでみてください。
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