2014年01月29日

マスコミ志望者必見!NHK会長発言で考える「公共放送」

テーマ:メディア

ニュースのポイント

 NHK新会長の就任会見での発言が問題になっています。公共放送と政権との距離が問われています。そもそも公共放送って、国営放送とどう違うの? NHKに報道の自由はあるの?

 今日取り上げるのは、総合面(3面)の「NHK会長の発言問題/経営委 進退は問わず/『政治的中立、信頼揺らぐ』」です。
 記事の内容は――NHKの籾井勝人(もみい・かつと)会長は就任会見で、首相の靖国神社参拝、特定秘密保護法など議論がある問題について政府寄りの発言を繰り返した。NHK経営委員会で籾井氏は「個人的な見解を発言したことは不適切だったと反省している」と述べた。経営委の委員長は籾井氏の発言が「(政治的中立を疑われる)危険がある」と報道陣に語り、安倍首相は衆院本会議で「新会長はじめNHKの職員にはいかなる政治的な圧力にも屈することなく、中立、公平な放送を続けてほしいと願う」と答弁した。もともとNHKは政権の意向に左右されやすい側面が指摘されてきた。予算が国会で承認され、会長の任免権を握る経営委員も国会の同意を経て任命されるためだ。経営委員12人のうち、昨年11月に同意を得た5人には首相の再登板を支援した3人が含まれる。政権との距離を置くことに腐心してきた英国の公共放送BBCは、籾井氏の発言を「衝撃的」と報じた。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

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 国営放送といえば、アナウンサーが金正恩第1書記をほめたたえる北朝鮮の朝鮮中央テレビや、中国の国営中央テレビの映像がよくニュースで流れますよね。日本を声高に非難することもあります。国営ですから、政府の宣伝機関であり、政府を批判するようなニュースは一切流れません。

 では、公共放送って何でしょう。NHK幹部は「NHKは独裁国家の国営放送でなく民主主義国家の公共放送。編集権は政府から独立している」と話します。今日の記事に「公共放送」のキーワード解説が出ているので抜粋すると「営利を目的とせず、国営放送とは異なり国家による管理や統制から自立した放送で、政府からの独立性や政治的な中立性を確保するため受信料、寄付などで運営される。日本の放送法はNHKの番組編集は何人からも干渉されないと定めている。NHKの海外向けの国際放送は国が要請した内容を放送するための交付金が割り当てられている」。一方の民放各社は企業からのスポンサー収入で成り立っています。

 放送法は「表現の自由の確保」を大原則として掲げ、放送番組は「公正・中立」でないといけないことになっています。ということは、公共放送であれ民放であれ、政府に対しては是々非々の立場で、問題があれば指摘する責任があるわけです。それなのに、籾井氏は「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」「(特定秘密保護法は)これが必要というのが政府の説明ですから」と政府に寄り添うような発言をしたため、問題になっているのです。NHKには「考え方が政府よりで公共放送トップにふさわしくない」「偏った放送になるのが心配」といった視聴者の声が多数寄せられました。籾井氏は個人的見解を番組に反映させることはないと言う一方、「ボルトとナットを締め直すのが主たる任務」とも述べ、制作現場への管理強化とも受け取れる発言もしています。NHKの番組の編集権は会長にあります。「現場が萎縮して自主規制する可能性」が指摘されています。

 背景には、前会長時代のNHKの原発報道などが「偏っている」、つまり「政府に批判的だ」との不満が安倍政権内にくすぶっていた事情があります。政府が首相に近い人を経営委員会に送り込んだのもこのためです。「NHKスペシャル」など民放にはない素晴らしい番組があるNHKは、強い影響力をもった報道機関です。テレビ局を目指す人やマスコミ志望者ではない人も、今後の報道ぶりを注目してください。

 今日の紙面には、報道の自由、報道と政権の距離に関わる記事が他にもあります。マスコミ志望者は必読ですよ。
◆国際面(13面)「世界発2014/南方週末事件1年/報道監視 強める中国」
◆同面「特派員メモ・情熱が回す輪転機」
◆社会面(37面)「メディアタイムズ・秘密法諮問会議/座長に読売トップ 是非は」

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