2013年12月19日

スバル快走、「世界シェア1%の誇り」独自戦略に注目

テーマ:経済

ニュースのポイント

 「スバル」で知られる乗用車メーカー、富士重工業の業績が伸びています。国内大手8社中、販売台数は最下位ですが、2年連続の過去最高益を見込み、利益率はトップのトヨタ自動車を上回ります。その原動力は、ライバル他社とは一線を画す独自の戦略。無理をしてトップメーカーと同じ道を目指すようなことはしない。富士重工業ならではの生き方とも言えます。

 今日取り上げるのは、経済面(10面)の「スバル、我が道快走/脱「軽」 米国に照準/拡大は100万台まで」です。
 フル生産が続く富士重工業の群馬製作所の工場では、今年8月の増強に続き、来夏さらに年2万台分の増産を計画している。この工場は軽自動車の専用ラインだったが、同社は軽自動車の生産から昨年2月に撤退した。「軽の本質はコスト競争。規模の小さな会社が大手と同じようにやっていたら、厳しくなる」(吉永泰之社長)。ライバルが力を入れる新興国ではなく、あくまで米国に目を向け続けているのも特徴だ。「フォレスター」「レガシィ」などの車体を米国向けに一回り大きくして販売。1~11月の米国での販売は、市場全体の8%の伸びを大きく上回る28%増。2013年度の世界販売台数は過去最高の80万7000台になる見込みだ。営業利益は2730億円で2年連続の最高益を見込み、上半期の営業利益率は約13%で10%のトヨタを上回った。17年度をめどに100万台生産体制にする方針だが、吉永社長は「100万台まで。それ以上増やすと、事業構造を壊してしまうことになりかねない」と話す。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

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 富士重工業は、戦前の航空機メーカー「中島飛行機」を前身として1953年に設立されました。1958年に発売し、大ヒットした「スバル360」は軽自動車の草分け。軽自動車の累計生産台数は9車種800万台超にのぼる「老舗」でした。いま軽自動車は国内新車市場の3割強を占め、ホンダが5年ぶりに新型車を出すなど各社が品ぞろえを増やしています。そんなときに富士重は昨年、軽の開発・生産から思い切って撤退しました。軽は低価格で利幅が薄く、開発費がかさむ割に1台あたりのもうけは少ないのが難点。軽から乗用車まで自前で開発するのは重い負担になっていたためです。

 中国などの新興国重視の販売をせず、「年産100万台まで」とも明言。世界各地に展開し世界初の年産1000万台をめざすトヨタとは対照的です。こうした戦略には、国内でさらに軽人気が高まったり、米国の景気が急減速したりしたときの危うさもありますが、何にでも手を出すのではなく得意分野に経営資源を集中投資する「選択と集中」を徹底しているわけです。同社が販売台数では国内8位なのに、売上高では6位に位置しているのもこのためです。採用ホームページで吉永社長は「世界シェア1%の誇り」について語っています。

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