ニュースのポイント
業界や職種を選ぶとき、エントリーシート(ES)の志望動機や自己PRを書くときには、自分自身に対して「それはなぜ?」という問いかけをしてみてください。営業がしたい→それはなぜ?→人と話すのが好きだから、OB訪問で会った人が魅力的だったから……といった具合に、一つの「なぜ」に対し、いくつも答えが出てくると思います。何度も「なぜ」を繰り返しましょう。なんとなくだったり、あやふやだったりする志望動機や自分の考えが、だんだんはっきりしてくるはずです。
今日取り上げるのは、12面の「オーサー・ビジット2013」特集のうち、小説『ストロベリーナイト』や「武士道シリーズ」などで有名な小説家・誉田哲也(ほんだ・てつや)さんが和歌山県立田辺高校で行った授業「なぜ?から描く『起承転結』」です。
記事の内容は――誉田さんが近著『幸せの条件』を書いたのは、ある「素朴な疑問がきっかけ」だった。疑問を解決するために主人公を設定し、さらに「人は何のために働くのだろう?」という疑問が生まれたと話した。次に「必要とされる人間になりたいから」という解答を導き、さらに面白く読んでもらうために「起承転結を利用しながら話を肉付けしていった」という。リアルで面白い話にするには事実の裏付けも必要だ。ミュージシャンになる夢に見切りをつけ、それでも何かを書きたいと小説を書き始めた誉田さんは「才能があるかどうかなんて、その時はわからない。でも、なぜその道を?という疑問に、好きだからと言う答えがあれば頑張れる」と語った。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
オーサー・ビジットは、人気の本の作者(オーサー)が小中高校の教室を訪れて(ビジット)、独自の授業をする読書推進事業(朝日新聞社主催、出版文化産業振興財団協力)で、今回は5人の授業を紹介しています。
誉田さんは「伝えたいことを『疑問』と『解答』で考え、起承転結で肉付けしていく。この方法は何か書く時の助けになりますよ」と話しています。誉田さんの手法を整理すると、①疑問が生じる→②解答を導く→③面白く読んでもらうために起承転結を利用しながら話を肉付けする→④リアルで面白い話にするには事実の裏付けも必要、という流れです。ESに当てはめると、①何をしたいのか、それはなぜか→②なぜに対する解答をいくつか出したり、それぞれを深掘りしたりする→③読み手にわかりやすく伝えるためにストーリーにする→④説得力をもたせるため具体的な事実で裏付けする、ということになります。さらにESでは、いくつも出てきた解答の中から、より相手に魅力的に伝えられるもの、伝わるものを取捨選択して言葉にしましょう。
総合商社に憧れている人の場合、たとえば、商社マンになりたい→なぜ?→解答A:海外で活躍したい、解答B:得意な英語を生かしたい。解答Aをもっと掘り下げます。なぜ海外で?→旅行で訪れたアジアの国で衛生事情の劣悪さを目の当たりにして改善したいと思ったから。ここに、発展途上国のインフラが整備されていないというデータや、自分がいつどんな理由でその国を訪れ、何を感じたかという具体的なエピソードを加えれば、立派な志望動機になります。解答Bの場合は、なぜ英語を生かしたいのか掘り下げ、英語がどのくらい得意なのか、留学経験などの根拠を加える必要があります。Bだけでは、商社を志望する理由としては弱いですよね。取捨選択できるように、「なぜ」に対する解答を作り上げる作業を繰り返せば、きっと伝わる言葉が見つかります。
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