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125カ国中で日本のエンゲージ社員率は最低
働く人のエンゲージメントは、企業の業績や株価に影響を及ぼします。厚生労働省の令和元年版「労働経済の分析」によると、働きがいを表す「ワーク・エンゲージメント・スコア」(WEスコア)が高ければ高いほど個人の労働生産性は向上し、また企業の労働生産性もWEスコアが伸びればより高くなる、という関係があるといいます。モチベーションエンジニアリンク研究所は2023年に、従業員のエンゲージメントスコアが高い企業ほど、企業の稼ぐ力を指標化したROE(自己資本利益率)や、これから成長すると期待される企業ほど高くなるとされるPBR(株価純資産倍率)の数値が高いとする調査結果を公表しました。「従業員のエンゲージメントが高いほど、資本をより効果的に活用し収益につなげられる可能性が高まる」と指摘しています。
従業員満足度とエンゲージメントは違う
最近、人材を給料を払わなければいけない「コスト」ではなく、「投資」により価値を高められる対象としてとらえる「人的資本経営」というキーワードが注目を集めるようになりました。従業員のエンゲージメントは、この人的資本経営の指標として重要視されるようになってきています。そう考えると、冒頭の調査結果はかなり衝撃的な数字です。なぜここまで日本の従業員エンゲージメントは低いのでしょうか。
まず抑えておく必要があるのは、従業員エンゲージメントはいわゆる「従業員満足度」とは違う、ということです。従業員満足度は企業が従業員に何かを与え、それに対して従業員がどの程度満足するかを表す数値で、福利厚生や働きやすい環境を整備することで上下します。これに対して従業員エンゲージメントは、会社と従業員とが同じ目的に向かって成長していくという関係をベースにした指標です。福利厚生が充実して従業員満足度が高くても、従業員エンゲージメントは低いという可能性もある、ということです。経済産業省が2020年に出した「人材版伊藤レポート」では、従業員エンゲージメントを「企業が目指す姿や方向性を、従業員が理解・共感し、その達成に向けて自発的に貢献しようという意識を持っていること」としています。
「成長を実感できる」機会乏しいとエンゲージメント下がる
さまざまな日本企業が従業員エンゲージメントを高める施策を打っていますが、興味深い取り組みをしているのが大手製薬メーカーのアステラス製薬です。世界中の従業員のエンゲージメントを測定するなかで、「ホワイトスペース」が足りないという課題が見えてきたといいます。
ホワイトスペース(余白)とは、新しいアイデアを考えるための時間、個人や組織がイノベーティブになるために必要なリソースのことです。アステラス製薬の副社長は朝日新聞のインタビューで、「ホワイトスペースを確保することで、本来自分がやるべき仕事、やりたかったことに使える時間を社員に戻そうとしています」と説明しています。会議に大勢の人を呼んだり、資料やリポートをつくりすぎたりといった社風を改め、複雑すぎる社内の規則も見直すなどして、ホワイトスペースをつくりだしているといいます。
(写真・アステラス製薬本社の看板=東京都中央区/朝日新聞社)
福利厚生だけではエンゲージメントは高められない
アステラス製薬の取り組みは、上から指示されたり周りの雰囲気に流されたりして自分の意志ではない仕事をする機会を減らし、自分の意志で取り組む仕事を増やす目的があります。そうすることが従業員エンゲージメントの向上につながる、というのです。
企業を選ぶ際に、福利厚生面が充実しているか、賃金カーブはどうなっているかをチェックすることは重要です。一方で、企業と自分がいっしょに成長できる環境を求める際には、この「エンゲージメント」をどの程度企業が重視しているかもチェックしたいポイントです。福利厚生を手厚くする以外にどうやって従業員の前向きなやる気を引き出しているか、それを適正に評価しているか、社員の人に話を聞く機会があればそういった観点から質問をしてみてもいいかもしれません。エンゲージメントという言葉をぜひ抑えて、就職活動に臨んで下さい。
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