就活する企業や業界の将来をイメージするにあたっては、急激にすすむ少子化の影響を考える必要があります。人口が減るわけですから国内の市場だけを相手にしている産業は苦戦が予想されますが、追い風になる産業もあります。自分の志望企業はどうなりそうか、ぜひ考えて就活に臨んでください。(編集部・福井洋平)
(イラストはPIXTA)
人口が減れば、必然的に多くの業界で国内を相手にした市場は縮小することになります。たとえば鉄道、スーパー、建設といった分野は厳しい状況になるでしょう。また、人口減少は働き手の減少にも直結します。人手に頼る構造となっている産業は、存続が難しくなっていきます。
一方で、海外市場は今後も伸びが期待できます。また、デジタルなどを活用した生産性の向上も進み、少ない働き手で多くの生産が可能になる業界も出てくるでしょう。業界の情勢が俯瞰でチェックできる『業界地図』(東洋経済新報社)の2024年版には、人口減少で「浮かぶ業界、沈む業界」という記事が掲載されています。2040年の業界ごとの就業者数と市場規模(=実質生産額)をもとにいくつかの業界をピックアップし、今後の展望を予測しています。2040年の日本全体の就業者数は全体で5664万人と2017年比で25%減少しますが、市場規模は同31%増の1310兆円になると同書は予測しています。つまり、人口が減るからといって、必ずしも悲観的な見通しではないのです。むしろ人口減が追い風となる業界もあります。
人口が減るにもかかわらず生産額を伸ばすためには、グローバル化はもちろん、国内での需要の掘り起こしやデジタルなどを活用した生産性の向上は必須と考えられます。そこに対応できない産業は苦境に陥る、とも言えるでしょう。
人口減により打撃をうけるのはインフラ産業です。たとえば鉄道業界は沿線人口の減少が収益減に直結し、これまで通りのサービスを提供することが年々困難になっていくでしょう。すでに、地方では鉄道や路線バスの赤字路線の廃止・縮小という形で問題は顕在化しています。
電器やガスといったエネルギー系インフラももちろんですが、上水道も苦境に立たされそうです。人口減少で使用量が減少する一方で、高度経済成長期に増設した施設は更新期を迎えて修繕費用が増えていきます。同書では、2043年までに料金が全国平均で40%上がるとしています。一方、施設の更新、改良需要の高まりは、水処理プラントを手がける会社にとっては長期的に安定収益を得られることにつながり、今後はビジネスチャンスが広がるとも考えられます。人口減少にまつわる志望業界の動向を広くチェックしていくと、こういった成長分野の種を見つけることができるかもしれません。
少子化は当面、一直線に進みます。そこに対応していない業界や企業は早晩苦境に立たされます。業界全体は逆風でも、どこかに商機を見いだす企業はあるでしょう。業界研究の際にはぜひ人口減少というキーワードを折り込んで情報をチェックしてください。
(写真・老朽化により崩落した和歌山市の六十谷(む・そ・た)水管橋。断水は6万世帯に及び、ほぼ1週間続いた=2021年/朝日新聞社)
◆朝日新聞デジタルのベーシック会員(月額980円)になれば毎月50本の記事を読むことができ、スマホでも検索できます。スタンダード会員(月1980円)なら記事数無制限、「MYキーワード」登録で関連記事を見逃しません。大事な記事をとっておくスクラップ機能もあります。お申し込みはこちらから。
2025/04/02 更新
※就活割に申し込むと、月額2000円(通常3800円)で朝日新聞デジタルが読めます。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10