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就活する企業や業界の将来をイメージするにあたっては、急激にすすむ少子化の影響を考える必要があります。人口が減るわけですから国内の市場だけを相手にしている産業は苦戦が予想されますが、追い風になる産業もあります。自分の志望企業はどうなりそうか、ぜひ考えて就活に臨んでください。(編集部・福井洋平)
(イラストはPIXTA)
人口減少が志望業界に与える影響は?
統計を発表した厚生労働省の担当者は、出生数や出生率が下がり続けるのは「経済的な不安定さ、仕事と子育ての両立の難しさなど、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が複雑に絡み合っている」としています。政府は改正子ども・子育て支援法を成立させて児童手当の大幅拡充や保護者が働いていなくても一定時間保育所を利用できる「こども誰でも通園制度」などを制定。合計特殊出生率が0.99とはじめて1を割った東京都では、都独自の支給金や高校授業料の実質無償化などの施策をうち、独自のマッチングアプリの開発もすすめています。いずれにせよ、ここまで出生数が減った以上、たとえ合計特殊出生率が下げ止まったとしてもこれから人口が減り続けていくことは避けられません。将来をみすえて就活をすすめるうえで、日本の人口減が自分の志望業界や企業にどういう影響を及ぼすかは考えておく必要があるでしょう。
(図表・朝日新聞社)
人口は減るが市場規模は増える予想
人口が減れば、必然的に多くの業界で国内を相手にした市場は縮小することになります。たとえば鉄道、スーパー、建設といった分野は厳しい状況になるでしょう。また、人口減少は働き手の減少にも直結します。人手に頼る構造となっている産業は、存続が難しくなっていきます。
一方で、海外市場は今後も伸びが期待できます。また、デジタルなどを活用した生産性の向上も進み、少ない働き手で多くの生産が可能になる業界も出てくるでしょう。業界の情勢が俯瞰でチェックできる『業界地図』(東洋経済新報社)の2024年版には、人口減少で「浮かぶ業界、沈む業界」という記事が掲載されています。2040年の業界ごとの就業者数と市場規模(=実質生産額)をもとにいくつかの業界をピックアップし、今後の展望を予測しています。2040年の日本全体の就業者数は全体で5664万人と2017年比で25%減少しますが、市場規模は同31%増の1310兆円になると同書は予測しています。つまり、人口が減るからといって、必ずしも悲観的な見通しではないのです。むしろ人口減が追い風となる業界もあります。
人口が減るにもかかわらず生産額を伸ばすためには、グローバル化はもちろん、国内での需要の掘り起こしやデジタルなどを活用した生産性の向上は必須と考えられます。そこに対応できない産業は苦境に陥る、とも言えるでしょう。
半導体業界、人材業界は追い風
人口減が追い風になりそうな業界としてあげられているのは、たとえば半導体業界です。前述のとおり、労働力減少にともなってDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性は年々高まっています。それを支えるのが、半導体産業です。半導体の製造分野は世界に水をあけられている日本ですが、製造装置や材料については日本勢に強みがあり、すでに市場からも高評価を得ています。また、すでに顕在化している人手不足を背景に、人材業界も追い風を受けています。求人広告件数や転職紹介実績といった数値が右肩上がりに伸びており、活況を呈しています。今後は少子化に伴い、「副業」や「リスキリング」といった分野への進出がさらなる成長のカギになりそうです。
(写真はPIXTA)
インフラは危機も施設更新、改良事業に商機
人口減により打撃をうけるのはインフラ産業です。たとえば鉄道業界は沿線人口の減少が収益減に直結し、これまで通りのサービスを提供することが年々困難になっていくでしょう。すでに、地方では鉄道や路線バスの赤字路線の廃止・縮小という形で問題は顕在化しています。
電器やガスといったエネルギー系インフラももちろんですが、上水道も苦境に立たされそうです。人口減少で使用量が減少する一方で、高度経済成長期に増設した施設は更新期を迎えて修繕費用が増えていきます。同書では、2043年までに料金が全国平均で40%上がるとしています。一方、施設の更新、改良需要の高まりは、水処理プラントを手がける会社にとっては長期的に安定収益を得られることにつながり、今後はビジネスチャンスが広がるとも考えられます。人口減少にまつわる志望業界の動向を広くチェックしていくと、こういった成長分野の種を見つけることができるかもしれません。
少子化は当面、一直線に進みます。そこに対応していない業界や企業は早晩苦境に立たされます。業界全体は逆風でも、どこかに商機を見いだす企業はあるでしょう。業界研究の際にはぜひ人口減少というキーワードを折り込んで情報をチェックしてください。
(写真・老朽化により崩落した和歌山市の六十谷(む・そ・た)水管橋。断水は6万世帯に及び、ほぼ1週間続いた=2021年/朝日新聞社)
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