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今回の震災に対してはすでにさまざまな企業が支援体制をとっています。非常時に企業や国・自治体がどのような対応をしているかを見れば、その組織の性格を知る手がかりにもなります。また大災害は、地方や日本全体が抱えているさまざまな問題をあぶり出すきっかけにもなります。就活生が災害を機に、自分の進路を考え直したというエピソードもあります。市民として、また就活生として、高い関心をもって地震について考えてほしいと願い、今回の地震について2つの観点から整理しました。(編集部・福井洋平)
(写真・石川県産業展示館には全国からの支援物資が山積みにされていた=1月7日、金沢市)
観点1・企業の震災支援
1月6日の朝日新聞には、被災地を支援する企業の動きが本格化しているという記事が載りました。食品や日用品大手の物資支援だけでなく、中には自社の「強み」を生かした取り組みもあるといいます。地震発生の翌日から動いたのは食品大手です。パン大手の山崎製パンやフジパン、敷島製パンなどがパンを、日清食品ホールディングス(HD)やエースコックなどがカップ麺を、日本コカ・コーラやサントリーHDなどが水を被災地に届けています。日用品大手では、ユニ・チャームが生理用品やおむつを届けました。
この取り組みは、被災地からの声かけを待たずに必需品を届ける「プッシュ型支援」の一種です。国が業界団体を通じて企業に支援を求め、かかった費用は国があとで支払う仕組みになっています。2011年の東日本大震災後に仕組みが整えられ、2016年の熊本地震でも使われました。
(写真・届けられたパンを運び出し、積み上げる自衛隊員=1月3日、金沢市)
企業の強み生かした支援も
国の要請に基づく動き以外にも、
・カセットコンロを手がける岩谷産業がカセットコンロ1万台、カセットボンベ15万本などを支援すると表明。
・アウトドア用品大手のモンベルは創業者の辰野勇会長を代表とする「アウトドア義援隊」を発足。物資を配布したり、被災地支援に向かう団体をサポートしたりする。
・生活用品大手のアイリスオーヤマは自社製の水や使い捨てカイロ、簡易トイレ、ブルーシートを石川県七尾市に送付。仙台に本社があることから、東日本大震災時の経験をもとに必要物資を選んだ。
といった動きがあります。また、大企業トップが集まる恒例の年始イベントは、今年は祝賀ムードを排して行われ、参加した企業からは「(コンビニの)地域のインフラとしての使命を再認識した」(ローソン・竹増貞信社長)、「営業職員がお客さん一人ひとりと対面で会い、不安な気持ちを聞くなどの支援も続けていきたい 」(明治安田生命保険・根岸秋男会長)といった声もありました。
今後は長期的な支援が求められる
震災はインフラや生活基盤を広範囲に破壊します。そのため、求められる支援の幅も広くなります。また、地域の経済が大きく冷え込んでしまうことから、再び地域を活性化させていくために長期的な視点で支援を考える必要もあります。東日本大震災から3年後の2014年3月、朝日新聞に「企業の支援、自立に軸足/震災3年 被災地を後押し」という記事が載りました。▼大手食品メーカーが被災地の企業と共同で、地元のカキやサンマを使った特製スープを開発 ▼大手小売業が衣服を宮城の衣料品店に寄付し、地元で売ってもらう といった、単純なものの支援ではなく地域の経済全体を底上げできるような支援にシフトしている、という内容です。
自分が志望する業界や企業は、今回の震災でどういった動きをしているでしょうか。また、過去の災害時にどのような動きをしていたでしょうか。大規模災害はどんな業態であっても影響は免れません。今回の震災をきっかけに、ぜひ自分にひきつけて考えてみてください。
観点2・自分は震災とどう向き合うかを考える
2011年に起きた東日本大震災により、自分のライフプランを考え直した――。そんなケースもありました。
「就活ニュースペーパー」では過去、第1志望の会社に就職した男子学生が入社4年で退職し、学習アプリを展開する東北の会社に転職したという例を紹介しています。東北出身で、就活生のときから被災地の役に立ちたいという希望をもち、復興ボランティアにも参加していました。最初の会社に入社後もその思いを強め、アプリを使って地方と都会の教育格差を改善したいという志をもって転職したそうです。これは出身地に戻る「Uターン就職」の例ですが、被災地出身ではない学生が被災地の企業に就職するという例も朝日新聞の記事には紹介されています。
震災は地方や日本の課題をあぶり出す
震災などの大災害は、地方や日本全体が抱える課題をときにあぶり出します。今回の能登半島地震では道路が寸断され、過疎化が進んでいた地域への支援到達が遅れているとみられます。今後過疎化はどの地域でも深刻化する一方で、そういった地域が災害に耐えられるのかは重大な問題になります。過疎化の原因のひとつは、地元に仕事が少ないことです。海産物や名産品、観光名所の多い能登半島でも例外ではなく、若い層を中心に人口が流出し、この10年で約17%人口が減っています。また、今回は目立った被害はありませんでしたが、能登半島には原子力発電所もあります。原発は、誘致することで交付金が得られるため、人口減に悩む地域にとっては町おこしの切り札だった時期もあります。
地方の経済がこのまま縮小していっていいのか、災害大国の日本で原発をこのまま再稼働させていいのか――。日本がかかえるいろいろな課題が、今回の震災から浮かび上がります。自分のこれからの仕事を考えるうえで、こういった課題について考えてみることはきっと意味があるはずです。
(写真・大きく陥没し、通行できなくなった道路=1月5日、石川県志賀町)
ボランティアはまずインターネットで情報収集を
被災地はこれから復興に向け人手が必要になってきます。ボランティアの役割も、増してくるでしょう。ボランティアとして現地に足を運び、実際に被災地で何が起きているかを体感することは、自分の人生にとってもおそらく大きな経験になります。ただし、やみくもに現地に行くことはNGです。
石川県では1月8日時点で、県外からのボランティア受け入れは行っていませんが、事前登録ははじめています。インターネットの特設サイトから連絡先や活動可能な曜日などを登録することで、後日、活動依頼がメールで届くとのことです。電話での問い合わせは迷惑になりますので、石川県やそれ以外の県でもボランティアについて調べるときはインターネットを使いましょう。東日本大震災の直後には、十分な食料やガソリンがなかったり、道に迷ったりするボランティアが相次いだといいます。焦って現地に行こうとせず、受け入れ体制が整ったことを確認して動いてください。
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