2023年01月13日

ユニクロ最大4割賃上げ、初任給30万円 どこまで広がる?【イチ押しニュース】

テーマ:経済

 「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングが3月から国内の正社員約8400人の年収を最大40%引き上げると発表し、大きなニュースになっています。新入社員の初任給も25万5000円から30万円に大幅にアップします。グローバル企業の同社は欧米の正社員の年収が日本に比べて高く、思い切った賃上げで優秀な人材を獲得する狙いです。ほかにもキヤノン日揮ホールディングス(HD)など、大手企業で大幅な賃上げ表明が相次いでいます。近く本格化する賃上げ交渉「春闘」でどこまで広がるか注目されます。歴史的な物価高が続き実質賃金は大きく下がっているので、多少の賃上げでは暮らしは楽になりません。初任給を含め、給料はみなさんの企業選びのとても大事なポイントです。志望業界や企業の給料について調べてみましょう。(編集長・木之本敬介)

(写真・ユニクロの店舗=東京都渋谷区)

グローバル競争のため

 ファーストリテイリングは能力や実績などに基づく約20の等級に応じて基本給を決めており、この水準を引き上げ、ボーナスも含む年収の引き上げ幅で数%~40%になる見込み。入社1~2年目で就く店長の収入は月29万円から39万円にアップします。国内のパート従業員とアルバイトの時給は昨年9月に平均約2割上げており、特定の地域で働く「地域正社員」の賃金は今後上げるそうです。もともと同社の国内従業員の平均年収は959万円で高い水準ですが、それでも海外のグローバル企業と比べると見劣りします。海外支店が1585店と国内の倍近くになるなどグローバル展開を進めており、売り上げ規模で「ZARA」のインディテックスとH&Mに続くアパレル世界3位。競争に勝つには、人材獲得競争で負けない給与水準が必要と判断しました。正社員の賃金制度を国内外で統一し国際水準に近づけることで、国内人材を海外へ、海外人材を国内へと柔軟な異動も可能になるとみられます。

(写真・ファーストリテイリングの柳井正・会長兼社長)

物価高支援と人材獲得競争

 ユニクロだけではありません。物価高での生活支援や、人手不足の中で優秀な人材を確保するためです。キヤノンは1月、20年ぶりに賃金体系を底上げするベースアップ(ベア)を実施。全従業員約2万5000人の基本給を一律で月額7000円引き上げました。昇給額と合わせると3.8%程度のアップで、「生活の基盤となる急激な物価上昇に対応し、従業員の生活の安定に寄与する」ために決めたそうです。4月に月額10%ほど賃上げ予定のプラント大手・日揮HDは優秀な人材確保や社員のモチベーション向上が理由で「脱炭素などに向けた新たな取り組みをするために必要」(広報担当者)としています。

 ほかにも、通常は4月のベアを前倒しする企業や、給与制度を見直して賃上げにつなげる企業もあります(表参照)。
 初任給についても、NTTがグループの主要会社の新卒(大学卒)で14%引き上げ21万9000円から25万円に、専門性が高いと判断した人材は24%引き上げ27万2000円以上とすると昨年発表。島田明社長は「ICT(情報通信技術)の分野は非常に競争が激しい。デジタル人材をしっかり確保しなければビジネスにならず、魅力ある会社にする」と話しました。通販大手のジャパネットHDは約2万円引き上げ約23万3300円(長崎を拠点に勤務する総合職)に、大和ハウス工業も2万円引き上げ24万円にします。

4~5%の賃上がらないと実質マイナス

 物価高はまだまだ深刻です。厚生労働省によると、2022年11月の物価の影響を考慮した「実質賃金」は前年同月比3.8%減で、減少は8カ月連続。減少幅は消費増税直後の2014年5月以来、8年半ぶりの大きさです。パートを含む働き手1人あたりの現金給与総額は同0.5%増の28万3895円。一方、実質賃金の計算に用いる消費者物価指数の上昇率は同4.5%で約40年ぶりの高さでした。

 賃金が4~5%上がらないと実質マイナスということです。労働組合の中央組織・連合は、今春の春闘で5%程度の賃上げ目標を掲げ、岸田文雄首相も1月4日の記者会見で「インフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたい」と求めました。近年の全体の賃上げ率は2%前後で、昨年は2.2%でした。原材料費の高騰で経営が厳しい中小企業も多く、民間アナリストの多くは2%台後半まで伸びるものの3%は超えないと予想しています。ファーストリテイリングなどの大幅アップで、賃上げの機運が広がることに期待したいと思います。

30年ぶりの物価高 「明るい物価上昇」のカギは賃金アップ【時事まとめ】も読んでみてください

志望企業の調べ方

 初任給や、業界によって大きく異なる給料の話は、2022年4月に書きました。
初任給アップする企業続々 業界でこんなに違う!給料の比べ方【イチ押しニュース】

 東洋経済新報社の「業界地図」に載っている業界別の年収ランキングのトップ10(2023年版)を抜粋します。(東洋経済が集計した国内上場企業の40歳推計年収)
①総合商社 1319万円
②コンサルティング 1146万円
③海運 935万円
④半導体・製造装置・材料 835万円
⑤不動産・戸建て・マンション 822万円
⑥建設 814万円
⑦医薬品 814万円
⑧ソフトウェア 809万円
⑨ゲーム 794万円
⑩ITサービス・クラウド 785万円

 ダントツの総合商社、コンサルはさらに伸び、デジタル・トランスフォーメーション(DX)需要でソフトウェアやIT関連が好調です。全業界の平均は662万円で、500万円を下回る業界もいくつかあります。各企業の初任給は募集要項に必ず載るのでわかりますが、その後の給料の上がり方は様々。確認方法のヒントも「初任給アップする企業続々 業界でこんなに違う!給料の比べ方」に書きました。参考にしてください。

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