ニュースのポイント
小売り最大手のイオンがダイエーを子会社にします。売上高は6兆円を超え、2位のセブン&アイ・ホールディングス(HD)を引き離しにかかります。スーパーの買収で規模拡大をはかるイオンと、コンビニ中心で稼ぐセブン&アイ。異なる戦略で戦う「小売り2強」の今後に注目です。
今日取り上げるのは、経済面(6面)の「シニア向け店舗で再生/イオン、ダイエーTOB完了」です。
記事の内容は――イオンがダイエーへの株式公開買い付け(TOB)を終え、27日付で子会社にすると発表した。規模が大きくなれば1商品当たりの仕入れ値や輸送費などを下げることができる利点を生かし、イオン、ダイエー共同セールも始めた。ダイエーは小規模で老朽化した店舗が多いが、都市部で駅に近い店が多い点は強み。イオン出身の村井正平ダイエー社長は「駅前の立地は郊外の大型店に押されて不利だったが、今後は高齢化などで人口が都市に集中するので有利になる。シニア対応を強化した新しい店舗に変えていく」と話す。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
2013年2月決算の売上高は、イオンが約5兆7000万円、セブン&アイHDが約5兆円。3位以下はユニーグループHD約1兆円、4位ダイエー約8000億円、以下イズミ、ライフコーポレーションが5000億円強で2強が突出しています。このダイエー分がイオンに上乗せされるため、セブン&アイとの差が開くことになります。
ただ2強の戦略は対照的です。イオンは中小の食品スーパーなどの買収を繰り返すことで販売規模を拡大してきました。スーパーは値下げ競争が激しいため、規模拡大で自主企画のプライベートブランド(PB)の調達コストをさらに下げて低価格競争を勝ち抜く考えで、今春も食品スーパー「ピーコック」を子会社化したばかり。一方のセブン&アイは、あまり値下げ競争をしないコンビニ展開が中心。本業のもうけを示す営業利益(2013年2月決算)は、イオンの約1900億円に対し、セブン&アイは約3000億円。1.5倍以上の差をつけています。営業利益の約7割を、値下げの少ないコンビニで稼いでいるからです。
セブン―イレブンが好調なのは、自宅近くで総菜や食品を買う需要が都市部で高まっているからだといわれています。大駐車場を備えた郊外型スーパーが主力のイオンは高齢化も見据え、ミニスーパー「まいばすけっと」の都市部出店を急いでいます。ダイエーの子会社化でさらに「都市シフト」を強化する方向。こうした戦略から、各企業が世の中をどう見ているのか、何を実現しようとしているのかが見えてくることがあります。日々の記事から戦略を読み解いてみましょう。
このニュースからは、業界の栄枯盛衰ぶりも伝わります。ダイエーはかつて国内小売り売上高トップでした。「価格破壊」を掲げて業界をリードしましたが、バブル崩壊後に借金返済が滞って行き詰まりました。近年は丸紅のもとで再建を図ってきましたが、赤字が5年続き、イオンの傘下に入ることに。イオンの岡田元也社長は「かつてはライバルだったが、恩讐(おんしゅう)を超えて交われば、効果がある」と語っています。小売に限らず、どんな業界でも合従連衡が当たり前の時代。志望企業の業界地図の変遷は、一度必ず調べてみてください。
小売業界では、小売り世界最大手米ウォルマート傘下の西友も、派手な値下げPRをしています。来年4月予定の消費増税も見すえ、スーパー各社の競争は激しくなりそうです。
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