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男性が育児休業(育休)を取りやすくすることをめざす改正育児・介護休業法が6月3日に成立しました。まだ7%台の男性の育休取得率を上げようと、会社側から「育休はいつ取るの?」などと社員の意思を確認するよう義務づけます。父親が子の出生直後に「男性産休」を取れる新制度も盛り込まれました。会社選びでは、「どう働くか」とともに、「どう休めるのか」もとっても大切です。でも、OB・OG訪問などで「ほんとに休めますか?」って聞いてもいいのでしょうか。男性にとっても女性にとっても、働きやすくて休みやすい会社選びのポイントについて説明します。(編集長・木之本敬介)
(写真は、父親と母親がそろって育休を取ることを勧める「ペア休プロジェクト」がYouTubeに公開中の動画から)
(写真は、父親と母親がそろって育休を取ることを勧める「ペア休プロジェクト」がYouTubeに公開中の動画から)
夫婦交互に休んでの育児が可能に
育休は子どもが1歳になるまで夫婦のどちらも取れることになっていますが、2019年度の厚生労働省の調査では母親の取得率83.0%に対し、父親は7.48%。2020年末に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画では、「2025年に30%」を目標に掲げました。計画は、男性の取得率が低い背景には、「男性は仕事・女性は育児」といった性別役割分担意識や、長時間労働や転勤などを当然視する労働慣行があると指摘。その結果、女性が育児などを多く担い、働く場での活躍が困難になる場合が多いとして、男性が子育てを担うことは「男女が共に暮らしやすい社会づくりに資する」と指摘しました。中でも根深いのは、職場の育休制度への無理解や、上司に言い出しにくい「職場の雰囲気」。そこで、企業の側からの働きかけを義務づけて取得のハードルを下げることを狙ったのが、今回の法改正です。
制度の主な変更点は……
●父親が、通常の育休とは別に生後8週まで最大4週(分割可)取れる「男性産休」を新設
●母親も分割取得が可能に
●働いて1年未満の非正規雇用の人も取得可能に
●対象者には個別に取得を働きかけることを企業に義務づける
●大企業に男性の取得率の公表を義務づける
男性産休の新設は、母体にダメージが大きい出産直後に父母がそろって育児に向き合えるようにするものです。妻の出産時と退院後に分けて休むことも想定し、父親、母親を問わず、分割して2回まで取得可能にします。夫婦で交互に育休を取ることもでき、父親は「男性産休」と合わせれば最大4回まで分けて休めることになります。
丸井は男性育休100%
最近の朝日新聞の記事から、先行して男性の育休促進に取り組む企業の例を紹介します。【丸井グループ】子が生まれる男性社員に対する上司の声かけが徹底されています。2020年度は、社員約5000人のうち対象の男性45人全員が育休を取り、男性の育休取得率は3年連続で100%です。男性も育児をになう企業文化をめざし、取り組みを始めたのは2014年ごろ。当初14%だった取得率は翌年には5割超に。人事担当者は「男性も育休を取るのが当たり前という雰囲気が浸透している」と話します。2018年度に半年間の育休を経験した男性社員(45)は「遠慮なく取れた」と語り、同僚の負担が増えないか、キャリアに影響しないかと不安がよぎったが、上司が背中を押してくれたといいます。
積水ハウスの場合
【積水ハウス】営業職で、今は東京都内の住宅展示場で店長を務める細川昇さん(45)は、約2年前に計1カ月の育休を取るまでのことを、「仕事が忙しくて、(育休は)取れる休みじゃないと思っていました」と振り返ります。長男(7)や長女(5)と休日以外で過ごす時間はわずか。午前7時半には家を出て、帰宅は早くて午後8時すぎ。専業主婦の妻が子どもたちを寝かしつけた後でした。転機は2018年。会社が、3歳未満の子どもがいる男性社員に1カ月以上の育休を取るように強く勧め始めました。収入減を心配する社員のために1カ月間は有給に。スウェーデンに出張した仲井嘉浩社長が、公園でベビーカーを押しているのがほぼ男性だった光景を見たことがきっかけで、社内の雰囲気がトップダウンで変わり始めました。
一帯の展示場を束ねる上司の支店長らが「何でもバックアップする」と細川さんの店長業務を引き受けてくれました。育休を最大4分割できる会社の制度も活用。商談中の顧客への営業は、2人1組でチームを組む態勢にしていたためスムーズに引き継げました。今は、近く育休を取る予定の後輩社員と、育休中の仕事を調整しています。「一日中、一緒にいることで、子どもの成長を実感できる時間を大切にして」と伝えています。
人手が少ない中小企業にも先進的なところはあります。新潟市で学校アルバム製作などを手がける博進堂は社員約150人。2015年秋から2019年秋に子が生まれた男性6人全員が育休を取りました。出産が近いと伝えると、会社の担当者から上司と当事者に「育休を取得してください。応援しています」と必ずメールが来るといいます。
会社の本当を知る3つの方法
こうした例からもわかるように、法律が改正されても、育休の取りやすさは経営層の姿勢や職場の雰囲気によって大きく左右されます。「制度はあっても取りにくい」会社も多いのが実態です。どうやって見極めればいいのでしょうか。①コーポレートサイトや採用ホームページで取り組みを確認。積極的にアピールしている会社は本気で取り組んでいる確率が高い。
②インターンシップや説明会で質問し、回答内容や態度で判断する。ただし説明会では本音が見えないことも。
③OB・OG訪問で個別に突っ込んで聞く(できれば複数の社員に)。
この3つを地道にやってみてください。
かつては、残業の実態や働き方、育休の取りやすさなどについて、多くの企業は自ら積極的には話したがらないものでした。しかし、この数年で流れは変わりました。過労死やパワハラ、マタハラ(妊娠・出産をめぐる嫌がらせ)が社会問題となり、「働き方改革」が一気に進んだためです。育休を含む「働き方改革」に真面目に取り組んでいない企業は、就活生から敬遠され優秀な学生を採れない時代です。今では働き方について就活生が企業に遠慮なく聞くのが当たり前ですし、企業側も自社の取り組みや「育休からの復職率100%」といった実績を積極的にアピールするようになりました。それでも、この種の質問をいきなりすると、がっかりする社員もいます。仕事のことをしっかり聞いてからにしましょうね。
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