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安倍政権が最重要法案と呼んできた「働き方改革」の関連法が国会で成立しました。長時間労働を抑えるため残業時間の上限規制を強化する一方、年収が高い一部専門職の人は働いても働かなくても給料が変わらなくなります。この「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」に野党は「過労死を助長する」と反対してきました。これで、「ブラック企業」はなくなるのでしょうか。それとも過労死が増えるのでしょうか。みなさんも就職したらすぐに当事者になる話題をやさしく解説します。(編集長・木之本敬介)
(写真は、働き方改革関連法が可決、成立した参院本会議=6月29日)
(写真は、働き方改革関連法が可決、成立した参院本会議=6月29日)
残業は「月100時間未満」
電通の新入社員が過労自殺した事件を受けて、安倍首相は「過労死の悲劇を繰り返さない」と宣言。働き方改革を今国会の最重要法案と位置付けてきました。労働時間などの基準を定める労働基準法(労基法)など8つの法律がセットで改正されます(主な内容は表参照)。もっとも大きいのは、これまでは事実上上限がなかった残業時間に罰則付きの上限規制が設けたことです。「原則月45時間、年360時間」とし、忙しい時期(繁忙期)の上限は「年間計720時間」、単月では「100時間未満」と規定。違反した企業には罰則を科します。大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から適用されます。
これで、毎日毎日終電までというような働き方をさせる会社は減る可能性があります。ただ、「月100時間」は労災認定の目安になる過労死ライン。午前9時から午後5時までの勤務が定時の会社なら、月に20日間、午後10時まで働く計算になります。かなりきついですよね。立憲民主党は「月80時間」未満にするよう求めていました。
「勤務間インターバル」って?
「勤務間インターバル制度」は、仕事を終えて次に働き始めるまでに一定の休息時間を取らなければならなくする制度で、過労死防止策の「切り札」とも言われます。欧州では「11時間以上」が原則で、これを当てはめると夜11時まで働いた翌日は、午前10以降でないと仕事を始められなくなります。2019年4月に施行されますが、こちらは企業に課されるのは「努力義務」で、今のところ導入を予定している会社は数%にとどまっています。政府の「過労死防止大綱」に盛り込まれた制度導入企業の数値目標でも「2020年までに10%以上」ですから、当面は大きな期待はしないほうがよさそうです。「高プロ」は過労死助長?
一方、労働時間の規制をなくすのが「高プロ」で、国会審議でも最大の争点でした。働いた時間ではなく成果で労働の価値を評価し賃金を支払う仕組みで、残業や深夜・休日労働をしても割増賃金は払われなくなります。業務に費やした時間と成果の関連が薄いとして厚生労働省が省令で定める高度な一部専門職で、「年収1075万円以上」の人が対象です。無駄な残業を減らして労働生産性を向上させるのが狙いで、経済界が長く望んでいた制度です。一定の休日確保を義務づけるなど健康確保措置も盛り込まれましたが、適用された働き手には仕事の量を自分で決める権限はなく、「長時間労働をしないと終わらないほど大量の仕事を押し付けられるのでは」という心配があります。「多様な働き方を選択できるようになる」と主張する政府に対し、野党や過労死遺族らは「長時間労働に陥り、過労死を助長する」と猛反発してきました。具体的には、アナリスト、コンサルタント、為替ディーラー、研究開発、金融商品の開発などの仕事が想定されています。新入社員で入ってすぐに高プロの対象になる人はあまりいないと思いますが、こうした仕事を志望している人は、対象になった先輩社員らの話を聞くなど、調べておいたほうがいいでしょう。ただ、対象業務は法律ではなく省令で決められるため、いったん導入されると職種がどんどん広げられるのではないか、と懸念する声もあります。
(写真は、遺影を掲げ参院本会議を傍聴する過労死遺族ら。右から2人目は過労自殺した高橋まつりさんの母幸美さん、同3人目は全国過労死を考える家族の会の寺西笑子代表=6月29日)
同一労働同一賃金
もう一つの柱が「同一労働同一賃金」です。正社員と、パートや契約社員、派遣社員などの非正社員との間にある不合理な待遇格差をなくすための制度で、原則として同じ仕事には同じ給料を出さなければなりません。通勤手当、出張費、休暇や研修などは同じ待遇にしなければなりません。大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月から導入します。
「同一」と言っても、経験・能力、業績・成果、勤続年数などで、正社員と非正社員に差がつくことは認められます。ずっと正社員とずっと非正社員で働き続けたときの生涯賃金には大きな差がつきます。就活生は、正社員に徹底的にこだわってください。
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