2013年06月18日

カリスマ経営者が語るJALの破綻と再生

テーマ:経済

ニュースのポイント

 日本航空(JAL)は、昔も今も変わらず就活生の人気企業です。3年半前に経営破綻しましたが、国による公的支援、リストラを経て業績が急回復し立ち直りました。会長としてJALを再生に導いた稲盛和夫さん(現名誉会長)の言葉に耳を傾けてみましょう。

 今日取り上げるのは、オピニオン面(15面)のインタビュー記事「JALの教訓/日本航空名誉会長 稲盛和夫さん」です。
 インタビューの概要は――(再建のためJALに入ってみると)非常に硬直化した官僚的な組織だった。権威主義的、縦割り、ピラミッド型で一部のエリートがすべてを取り仕切り指示を出していく。経営は数字がわからなければできないが、聞いても古い数字しか出てこない。組織、集計方法を変え、日々の路線ごとに収支が出るようにした。幹部社員に「人間として何が正しいかで判断する」「地味な努力を積み重ねる」「採算意識を高める」と繰り返し言った。何を言っているんだと言う顔をしていた一人がわかってくれて「部下にも話す」と言い出した。波紋のように広がり、何とかなると感じた。JAL再建には、①JAL消滅による日本経済へのダメージ②雇用を守る社会的意義③ANAによる1社独占を避ける――という三つの大儀があった。(病巣は)完治したとは思わないが、このまま続けてくれればと思う。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 コスト管理の甘さが指摘されてきたJALは、運行トラブルによる客離れとリーマン・ショックの影響を受け、2010年1月に会社更生法の適用を申請しました。その再建のためのリーダーとして当時の民主党政権が白羽の矢を立てたのが、京セラや第二電電(現KDDI)を創業したカリスマ経営者・稲盛氏でした。JALは、企業再生支援機構から3500億円の公的支援を受ける一方、部門ごとの細かい採算管理導入、社員の3分の1にあたる1万6000人の人員削減や給与カット、不採算路線の廃止を進め、法人税減免もあって業績は急回復。破綻からわずか2年8カ月で東京証券取引所第1部に再上場を果たしました。今年3月期の純利益1716億円は、全日本空輸(ANA)を大きく上回り世界の航空会社でも有数の水準にあります。

 JALの破綻は、日本を代表する大企業であっても決して安泰ではないということを教えてくれました。稲盛氏の手腕と、「非常に特殊なケース」(稲盛氏)である公的支援もあって立ち直りましたが、今日のインタビューを読むと、当時のJALには官僚主義、権威主義、縦割り、ピラミッド型など、「大企業病」が蔓延していたことがわかります。

 企業の経営状況については、発表資料などをもとにした業界・企業研究で、ある程度はつかめますが、体質や社風は会社案内や説明会ではわかりません。実際に働いてみないとわからないことが多いのも事実です。それでも企業選びで迷ったときなどに、同じ業界のA社とB社の体質、社風の違いは知りたいところです。OB・OG訪問、インターンシップなどで社員と直接接してみて、自分で感じ取ることが大切です。

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