2013年06月17日

アマゾンの脅威で変わる出版流通システム

テーマ:経済

ニュースのポイント

 雑誌や本の市場が縮むなか、長く続いてきた出版流通システムが揺らいでいます。インターネット書店大手アマゾンが巨大化する一方、街の書店は減り、書店と出版社をつなぐ問屋「出版取次会社」の経営が悪化。再編機運が高まっています。

 今日取り上げるのは、3面の「出版流通 再編幕開け/アマゾンの脅威 楽天とタッグも」です。
 記事の内容は――出版取次業界3位の大阪屋とネット通販大手・楽天との資本提携交渉が明らかになった。講談社など大手出版社や大日本印刷も出資を検討。大手出版社幹部は「楽天参入は第一幕」と、さらなる再編を予測する。大阪屋は、巨大倉庫など物流システムをもつ楽天の力を借り、アマゾンに負けないスピードで読者に届ける流通改革を目指す。取次会社の流通システムは、大量の本を全国の書店に一斉配送するために整備されたが、書店からの注文に細かく応じるには在庫管理コストなどから限界がある。一方、アマゾンは独自の需要予測システムなどで自社倉庫に多くのタイトル数を無駄なくそろえ、読者からの直接受注で当日配達まで実現。街の書店は約10年で2万軒から1万4000軒に激減(アルメディア調べ)し取次会社の経営が悪化した。大阪屋の今年3月期決算は売上高948億円で前年比2割減。業界トップの日本出版販売(日販)の売上はピークの7割、2位トーハンも7年連続前年割れだった。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 身近な本や雑誌の話題です。みなさんの中にも、本や雑誌をアマゾンや楽天を通じて購入したことがある人がいると思います。近所の書店には置いていない古い本や専門書でも、自宅のパソコンで発注すれば数日以内に届けてくれるので、とても便利ですよね。ただ、その背後では、戦後ずっと続いてきた書籍の取次の仕組みが根本的に変わる「地殻変動」が起きているのです。

 そもそも「取次会社」って何でしょう。メーカーがモノを作っても、流通システムがなければ消費者の手元には届きません。本の場合、個々の出版社が全国の書店から注文を受けて個別に配送していたら巨額のコストがかかってしまいます。そこで、出版社から仕入れた本を倉庫に保管し、書店に配送する取次会社が生まれました。取次業務は本に限りません。一般的には卸売業と呼ばれ、食品なら食品卸売業者がメーカーとスーパーをつないでいます。こうした流通の仕組みが、消費者からの直接受注というネット通販の出現によって変わろうとしているのです。

 楽天は、大阪屋の取引先の書店で電子書籍端末を売るなど、書店を対アマゾンの拠点にする狙いがあるといいます。ほかにも大阪屋には小学館、集英社が出資を検討しています。本に関わる業界は、出版、印刷、出版取次、運送、大手書店、ネット通販、コンビニなど、たくさんあります。こうした業界に関心のある人は、この記事をきっかけに業界のあり方や将来像を考えてみてください。それ以外の人も、読者や消費者の視点だけではなく、モノが作られてから消費者の手元に届くまでの流通システムの問題としてとらえる企業目線を養ってください。システムが変わるところには、ビジネスチャンスがあります。厳しい局面にある取次会社も新たな道を模索するでしょう。

※朝日新聞デジタルの無料会員は1日3本の記事全文を、有料会員になればすべての記事を読むことができます。ぜひ登録してください。

アーカイブ

テーマ別

月別