2017年11月24日

サザエさんから「東芝」が消えるホントの理由【今週のイチ押しニュース】

テーマ:経済

 東芝が「サザエさん」(フジテレビ系)と、いま「陸王」を放映中の「日曜劇場」(TBS系)の番組スポンサーをやめます。米ニューヨークの繁華街「タイムズスクエア」のビルの看板から「TOSHIBA」の文字が消えます。経営再建のため経費削減の対象になりました。でも、理由はそれだけではありません。企業向けのBtoB事業が大半となり、もう一般消費者に東芝ブランドをPRする意味があまりなくなっているのです。パナソニックや日立製作所も同じ流れにあります。「サザエさんのスポンサー降板」から、電機業界の構造的な変化を学びましょう。広告業界志望者も注目です。(編集長・木之本敬介)

(米ニューヨーク・タイムズスクエアのワン・タイムズスクエアビル最上部にある東芝のLED広告看板。2016年の年末カウントダウンイベントで=東芝提供)

NYタイムズスクエアからも撤退

 サザエさん放送開始の1969年から単独スポンサーだった東芝は、1998年からは複数スポンサーの1社として提供を続けてきました。「半沢直樹」「下町ロケット」など人気ドラマを多く放映してきた日曜劇場は、1956年の放送開始から2002年に降板するまでは単独提供の「東芝日曜劇場」でした。2009年にスポンサーの1社として復帰しました。いずれも家族そろって見ることが多い番組で、家庭に東芝ブランドを浸透させてきました。

 タイムズスクエアは米国内外の観光客やニューヨークっ子ら1日数十万人が訪れる名所にあります。年末のカウントダウン中継や映画にもよく登場するため、宣伝効果が極めて高いといわれます。東芝は2007年末からビルの最上部に電飾看板を掲げてきました。

 2015年に不正会計問題が発覚した東芝は、米原子力事業での巨額損失も加わり、経営危機に陥っています。経費削減を迫られており、日米での広告塔を手放すことにしたわけです。

(写真は東芝本社=東京・港区)

もう「家電メーカー」じゃない?

 一方で、巨額の費用を投じてブランドを宣伝する意味が薄れてきた事情もあります。かつて東芝を代表する製品だった冷蔵庫、洗濯機などの「白物家電」の子会社は中国の家電大手「美的集団」にすでに売却済み。「レグザ」ブランドで有名だったテレビ事業も中国の大手「海信(ハイセンス)」グループに売ることが決まっています。パソコンも売却を検討中ですから、一般消費者に商品を直接提供する「BtoC(Business to Consumer)= 消費者向けビジネス」はほとんどなくなり、「BtoB(Business to Business=企業間取引)」の会社になっているからです。かつての家電メーカーではなくなっているのです。

 稼ぎ頭だった半導体事業の売却も決まり、東芝は残ったインフラ、エネルギー、電子部品やICT(情報通信技術)を柱に再建する計画です。いずれもBtoBですから、私たち消費者に売り込む必要はありません。

パナソニックは自動車・住宅

 この流れは東芝に限ったことではありません。日本のメーカーは、白物家電やテレビなどの家電製品、パソコンやスマホで韓国や中国勢との価格競争に敗れ、次々に事業を撤退・縮小してきました。日本を代表する家電メーカーであるパナソニックも、今では電気自動車(EV)向けリチウムイオン電池などの自動車関連事業や住宅事業などを柱に据えています。

 電機メーカーを志望する人は、各社が今どんな分野に力を入れ、将来どこで稼ごうとしているのか、企業研究を深める必要があります。「レグザ、ダイナブックの東芝」は昔の話。こうしたニュースをきっかけに、各社のこれからを見極めてください。

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