(写真は、最近話題の政党党首たち。左から自民党・安倍晋三総裁、希望の党・小池百合子代表、立憲民主党・枝野幸男代表)
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(写真は、最近話題の政党党首たち。左から自民党・安倍晋三総裁、希望の党・小池百合子代表、立憲民主党・枝野幸男代表)
保守とリベラルの傾向は?
【保守】旧来の風習・伝統を重んじ、それを保存しようとすること。
【リベラル】個人の自由、個性を重んずるさま。自由主義的。
うーん、これだけだとよくわかりませんね。政治的なスタンスや具体的な政策への立場でざくっと分けてみましょう。
【保守】憲法改正に積極的(改憲派が多い)、集団的自衛権を行使できるようにした安全保障関連法支持、改正組織犯罪処罰法(「共謀罪」法)支持、原子力発電を維持、伝統的な家族形態が大事(選択的夫婦別姓に反対)、首相の靖国神社公式参拝に賛成
【リベラル】憲法改正に消極的(護憲派が多い)、安全保障関連法は憲法違反として反対、「共謀罪」法に反対、原発ゼロを主張、夫婦別姓に賛成、首相の靖国神社公式参拝に反対
ちょっと難しい言葉が並びましたね。保守が改憲派で、リベラルが護憲派というのもわかりづらいところです。実は、これらの前提には今の憲法のもとでの戦後民主主義への評価の違いがあり、どちらかといえば保守は否定的、リベラルは肯定的な立場です。保守派には米国からの「押しつけ憲法論」も根強くあります。さらに、保守は国の秩序や愛国心、自己責任を重視するのに対し、リベラルは個人の権利や多様な価値観を尊重し、共助、共生などの助け合いを大事にするという傾向もあります。だから、保守は国の権限を強める「共謀罪」法などに賛成し、個人の人権を犯しかねないとするリベラルは反対するという図式です。
ただし、線引きは明確ではありませんし、個々の政策への考え方は一人ひとり微妙に違います。たとえば、保守主義の小泉純一郎元首相は「原発ゼロ」を主張しています。あくまで傾向を表すものだと考えてください。
(写真は、札幌での講演で「脱原発」を訴える小泉元首相=2017年3月12日朝日新聞朝刊北海道版に掲載)
右派、左派、タカ派、ハト派は?
別の言い方では、保守は「タカ派」、リベラルを「ハト派」ということもあります。
広辞苑を見ると、
【鷹派】自分の理念・主張を貫くために、相手と妥協せず、強硬に事に対処していく人々。また、武力をもってしても主張を達しようとする人々
【鳩派】強硬手段をとらず、相手と協調しつつ事を収めようとする立場をとる人々
とあります。
タカ派は武力行使も辞さない強硬路線派、ハト派は何とか話し合いで収めようとする穏健路線派といったところです。
こちらも読んでみてください→「稲田防衛相は『タカ派』…政界のタカとハトって?」(2016年8月4日)
(画像は、日本国憲法を引っ張るタカとハト。憲法改正をめぐるタカ派とハト派を表現しています=2017年9月12日朝日新聞朝刊に掲載)
複雑な政界の構図
【保守】自民党、希望の党、日本維新の会、自由党、日本のこころ
【リベラル】共産党、立憲民主党、社民党
その中間の「中道」という言い方もあり、公明党はここに位置づけられます。
ところが、現実の政治はもっと複雑です。自民党にもリベラル派がたくさんいるからです。自民党は考え方の近い人たちが派閥というグループをつくっています。安倍晋三首相の出身派閥である細田派は党内で一番右側に位置します。安倍首相の祖父・岸信介首相はやはり保守派でしたが、その後の池田勇人首相はリベラル派でした。戦後、長く首相を出してきた自民党政権は、「軽武装・経済重視」を軸とするリベラル的な政権が主流でしたが、2000年代以降は小泉氏、安倍氏ら保守色が強い政権が多くなっています。最近は「世の中全体が保守化している」とも言われています。
前外相の岸田文雄・自民党政調会長(写真)は「ポスト安倍」の有力候補です。岸田氏は最近も「首相は保守、あえて言えばタカ派。私はリベラル、ハト派」と発言しました。昨年亡くなった加藤紘一元自民党幹事長は「最強最高のリベラル」とまで呼ばれました。
野党も両派が混在
分裂した民進党も両派が混在している政党でした。保守の前原誠司氏とリベラルの枝野幸男氏が立った代表戦は「保守対リベラル」の戦いと評されました。今回、リベラル色の強い人たちは立憲民主党に集まったため色分けがはっきりしました。ただ、民進党の岡田克也・元代表は「保守からリベラルまで幅広い支持層に支えられなければ、自民党に対抗できない」と語っています。
一方、小池氏の「希望の党」は「穏健な保守」を掲げました。リベラルにはもともと「穏健」の意味もありますが、民進党のリベラル派を「排除」したことで、保守色が鮮明になりました。
欧米ではどうなってる?
海外に目を転じると、米国の共和党は保守、民主党はリベラルです。共和党のトランプ大統領は保守、民主党のオバマ前大統領はリベラルです。米国は明確な2大政党制なので、わかりやすいと思います。英国では、今のメイ首相を出しているのが保守党ですから、こちらもわかりやすいですね。対する野党の労働党がリベラル派です。欧州では、フランスなどでは「極右」政党が勢力を伸ばし、「難民・移民反対」などを主張していることも頭に入れておきましょう。
保守もリベラルもかなり幅広いくくりですし、個々の政策については主張や立場が複雑に入り組んでいることもあります。ただ、どんな国がいいと思っているのかといった基本的な考え方にははっきりした傾向があります。自分の関心のある政策に対する賛否や、選挙中の発言などから、共感できる政治家を探してみてください。
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