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非正規社員と正社員の格差解消を求めた裁判で、一部について違法とする判決が出ました。安倍政権は「働き方改革」で、非正社員の待遇改善をめざす「同一労働同一賃金」を掲げており、今回の判決は一歩前進といえそうです。ただ、手当の支払いを命じるなど格差を認めたのは一部ですし、多くの面で正社員が有利で安定していることに変わりはありません。就活生のみなさんは、まずは正社員としての就職にこだわることをオススメします。(編集長・木之本敬介)
(写真は判決後、記者会見する原告の浅川喜義さん=中央=と宇田川朝史さん=左=14日、厚生労働省)
(写真は判決後、記者会見する原告の浅川喜義さん=中央=と宇田川朝史さん=左=14日、厚生労働省)
「未来に希望をともす判決」
裁判では、日本郵便で配達などを担当する契約社員3人が手当や休暇制度に格差があるのは労働契約法に違反するとして、同社に未払い分計1500万円の支払いを求めていました。東京地方裁判所の判決は、一部を「不合理」として、日本郵便に計約90万円の支払いを命じました(表)。訴えた原告側は、控訴してさらに争う姿勢ですが、一部でも認められたため「日本の非正規労働者の未来に希望をともす大きな意義のある画期的な判決だ」と評価しています。東京高等裁判所でさらに裁判が続けば、どういう結論になるかは分かりません。ただ、日本郵便は社員約40万人のうち契約社員など非正社員が半数を占めます。今回の判決は、日本郵便だけでなく非正規社員に頼る多くの企業に格差是正を迫る内容ですから、産業界に大きな影響がありそうです。
非正規4割に
非正社員(非正規雇用)とは、期間限定の契約社員、派遣社員、パートタイマー、アルバイトなど正社員ではない働き方のことです。給料などの待遇が正社員よりも悪く、半年、1年などの短期契約が多いため、長く安心して働くことができません。企業にとっては、日常的に人件費を安く抑えられますし、業績が悪くなったらすぐにクビにできるから都合がいいわけです。バブル経済がはじけた1990年代から急増し、最近では働く人の4割を占めるまでになりました。(グラフは2016年1月23日の朝日新聞から)
「同一労働同一賃金」
今回訴えた契約社員は10年以上郵便配達に関わり、正社員と同じように夜勤や早朝出勤などのローテーションをこなしてきました。社員が総出で配達にあたる年賀状の時期は例年12月29日~1月3日にも出勤しますが、正社員がもらえる1日4000~5000円の「年末年始勤務手当」は契約社員には支給されません。判決は「多くの国民が休日の中で、最繁忙期の労働に対する対価を契約社員にまったく支払わないことに合理的理由はない」として支払いを命じました。
日本は欧米諸国と比べても、正社員と非正社員の格差が大きいといわれています。2013年には、非正社員の待遇を改善するため、正社員との不合理な待遇格差を禁じた労働契約法20条ができました。不合理かどうかは仕事の責任や内容を考慮して判断します。政府は2016年12月に、どのようなケースが不合理かを例示した「同一労働同一賃金」のガイドライン案を公表。間もなく開く臨時国会で実効性があるように法改正をする方針です。
「第二新卒」採用も盛んに
今回の判決もあって、非正規の待遇は少しは改善されるでしょう。それでも、就活生のみなさんには、できるだけ正社員にこだわってほしいと思います。基本的には多様な働き方から自分に合ったものを選べるのはよいことです。家庭の事情などから、転勤がある正社員を避けて、あえて非正社員を選ぶ人もいると思います。ただ、ずっと働くことを前提とした正社員と短期間が前提の非正社員では、給与体系が基本的に異なります。グラフを見てください。日本では、年齢とともに給料がアップする「年功序列」型の賃金制度をとっている会社が多いため、正社員の給料はぐんぐん上がる一方で、非正社員は何年働いてもあまり変わりません。加えて、転職の際には、正社員としての経験は他社でも大いに評価の対象になりますが、非正社員として働いた経験は重視されないのが一般的です。「正社員→正社員」が転職しやすいのに対し、「非正社員→正社員」はとてもハードルが高く、新卒で非正社員になってしまうと途中から正社員になるのは簡単ではありません。この数年、引っ越しを伴う転勤がない「エリア総合職」や、勤務地、仕事内容を限定した「限定正社員」など、新たな働き方や職種を設ける会社が増え、短時間勤務や自宅で働くテレワークが広がり、正社員の働き方も多様になっています。
結果的に正社員になれなかった、という人にも道は開けています。大学を卒業しても就職せず数年たった人や一度就職したものの転職を目指す人などを対象といた「第二新卒」の採用も盛んになってきました。学生有利の「超売り手市場」も続いています。就活は「あきらめない」が大切です。
(グラフは、2014年3月8日の朝日新聞から)
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