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安倍首相が内閣改造を行いました。誰もが驚くような「サプライズ人事」はなく、地味な顔ぶれのなか、目玉は「非主流派」の野田聖子総務相(写真)と「政界の異端児」河野太郎外相です。急落した内閣支持率は上向くのか、「ポスト安倍」は? 政治の注目ポイントを整理します。(編集長・木之本敬介)
イメージや求心力のアップ狙う
新内閣は「第3次安倍・第3次改造内閣」。衆院総選挙や内閣総辞職後に国会で指名された首相が新内閣をつくるときは「組閣」です。安倍さんの場合、2006年に初めて首相になったときに「第1次安倍」、その後退陣し2012年の衆院選で2度目の首相になり「第2次安倍」、さらに2014年の衆院選後と3回組閣しています。今回は「第3次安倍」の3度目の改造という意味です。内閣改造とは、大臣(閣僚)の一部または全部を一度に入れ替えること。大臣を任命したりクビにしたりするのは首相の権限です。多くの政治家は大臣になりたいと思っているので、閣僚任免権は首相の権力の源泉の一つでもあります。首相は、顔ぶれを一新してイメージアップを狙ったり、党内の不満を抑えて求心力を高めたりするために改造します。企業の人事異動は早くても2~3年おきですが、内閣は1年ほどで改造されることが多く、大臣がコロコロ替わる印象があるのはこのためです。
(写真は、初閣議後の記念撮影)
「失敗しない」内閣?
なぜ今だったのでしょう? 「加計(かけ)学園の獣医学部新設をめぐる問題」や大臣の失言などで内閣支持率が急落。7月はじめの東京都議選で自民党は惨敗しました。この厳しい局面を打開するため、首相は改造に踏み切りました。(「稲田防衛相が辞任、蓮舫・民進代表も!政治はどうなる?ポイント解説」7月28日の【今週のイチ押しニュース】参照)安倍首相は組閣後の記者会見で「結果本位の仕事人内閣」と胸を張りました。大臣(閣僚)は19人置くことができますが、初入閣は6人と少なめ。留任と横滑りが6人、閣僚経験者が7人と多く、女性はたったの2人で比較的地味な顔ぶれとなりました。財務相、官房長官を留任させて「骨格」を維持したうえ、ベテランを多く配し、「失敗しない」ことを重視した手堅い布陣といえそうです。かつては当選回数が衆院5回、参院3回以上になると「入閣適齢期」と言われました。今の自民党には70人ほどいますが、今回ほとんど入閣できなかったため、かえって不満がたまったとの見方もあります。
(写真は、組閣後の安倍首相の記者会見。おわびから始まった)
脱「お友達内閣」?
地味な中でも、注目大臣のプロフィルと起用された背景を紹介します。◆野田聖子・総務相 将来の「初の女性総理」候補の一人。2015年の自民党総裁選に安倍首相の対抗馬として立候補をめざしたものの、首相サイドに切り崩されて推薦人を集めきれずに断念。首相とは距離を置き「非主流派」を貫いてきました。首相は起用の理由を「耳の痛い話も言ってくれる」と説明。ライバルを取り込むことで「お友達内閣」との批判をかわし、「挙党一致」をアピールする狙いがあります。
◆河野太郎・外相(写真) 自民党総裁、衆院議長を務めた父洋平氏と親子2代で外相に。率直な物言いで「政界の異端児」と呼ばれ、自民党では珍しく「脱原発」が持論です。ただ「政府内では議論するが、外に向けては政府の方針を伝える」と言っており、当面、持論は封印するとみられます。麻生太郎財務相や菅義偉官房長官が「将来のリーダー候補」として評価しています。
「加計問題」を抱える文部科学相には、防衛相、経済財政相、農林水産相など経験豊富な林芳正氏が就きました。南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報問題の責任をとって稲田朋美・前大臣が辞任した防衛相には、小野寺五典氏が2度目の就任となりました。
三者三様の「ポスト安倍」候補
「ポスト安倍」の有力候補は今のところ、岸田文雄氏、石破茂氏、野田氏の3人ですが、対応が分かれました。岸田氏は第2次安倍内閣発足以来、4年半にわたり外相を務めました。今回も留任を求められましたが、外相は海外出張が多く党内での足場固めがしづらいため、比較的自由に発言できる党三役(幹事長、政調会長、総務会長)を希望し、自民党の政調会長に就きました。ただ「とことん政権を支える」と宣言したため「親安倍」路線で、首相からの禅譲を待つことになりそうです。石破茂・元防衛相は今回の内閣改造の「蚊帳の外」に置かれたため、今後は「反安倍」路線を鮮明にするかもしれません。一方で、これまで首相に距離を置いてきた野田氏は大臣として露出は多くなります。「反安倍」的なことは言いづらくなりますが、総務相就任後、記者団に次の総裁選には「必ず出る」と明言しました。三者三様の立場、手法で「ポスト安倍」を狙う3人の言動に注目です。
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