ニュースのポイント
生活雑貨ブランド「無印良品」の良品計画が、日本の小売業では初めてインドにお店を開きました。人口13億人の巨大市場は、経済成長で「
中間層」が急増し、注目度が上がっています。シンプルが売りのブランドが、カラフルで華やかさが好まれるインドでどこまで受け入れられるのか注目です。日本企業にとってのインドの魅力とハードルについても考えます。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、経済面(8面)の「けいざい+ 無印良品、インドに挑む/派手好きな市場、シンプルさで勝負/関税重荷 価格は日本の1.7倍」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
(写真は、MUJIニューデリー店で人気の文具コーナー)
MUJIは世界に400店展開
無印良品の海外ブランド「MUJI」は、中国の200店超をはじめ、海外26カ国・地域に400店以上を展開しています。次に狙ったのがインドで、昨年8月にムンバイで1号店をオープン。3店目を5月上旬にニューデリーに開店しました。
売れ筋にはお国柄が表れます。日本では、家具、化粧品、婦人服の順に売り上げが多いのですが、インドでは、はさみやペン、ホチキスなどの文房具類が一番売れています。無印良品といえばシンプルで利便性を追求した商品が売りですから「国や文化に関係なく様々な土地に受け入れてもらえる」(広報)のが強み。ただインドでは、日本で稼ぎ頭の一つである婦人服は他の商品に比べると苦戦しています。民族衣装サリーのようにカラフルで派手な衣服が好まれるうえ、スペインのZARA、米国のGAP、スウェーデンのH&Mなど欧米のファッションブランドがしのぎを削っているためです。それでも若者を中心にシンプルな服を着る人が増えているといい、良品計画は今後の伸びしろは大きいとみています。
中間層、世界最多の8億人に
インドは年率7%超の経済成長を続けています。英調査会社によると、インドで「中間層」と呼ばれる年間
可処分所得が5000~3万5000ドル(約55万~390万円)の世帯数は、2000年には全世帯の約6%でしたが、2015年に60%弱に急増。
世界銀行によると、中間層は2020年にも約8億人となって、世界最多の中国を超えます。この購買力は日本企業にとっても大きなチャンスです。
旭化成がつくる再生繊維「ベンベルグ」(
キュプラ)のインドでの需要はこの10年で倍増し、全販売量の3分の1を占める有力市場になりました。ベンベルグはシルクのような肌触りが特徴ですが、値段はシルクの半額。サリーを新調する中間層に受けました。
さらに、15歳から64歳までの生産年齢人口の比率が上がる「人口ボーナス」が2040年ごろまで続きます。新しい労働者が毎月100万人ずつ増えるため、若年層の所得が増えてさらに消費が拡大すると期待されています。
売れる高価格のSUV
自動車販売も急増しており、2016年度の新車販売台数(乗商用車の合計)は、前年度比8%増の376万959台。中国、米国、日本、ドイツに次ぐ5位でした。2020年には約500万台市場となって日独を抜き、世界第3位になる見通しです。
中間層が増えるとともに車も高価格帯が売れるようになりました。とくにSUV(スポーツ用多目的車)の売れ行きが急増。2016年度のSUV販売台数は30%増えて76万2000台になりました。このため、インドの乗用車シェアの5割近くを占める自動車大手スズキは、中高価格帯の車種を扱う新たな販売店網を展開中。店舗網を約250店に増やして価格帯を上方にシフトします。
富裕層も増えており、トヨタ自動車も3月から高級ブランド「レクサス」を売り始めました。環境意識の高い富裕層がターゲット。SUV「RX」のHV(ハイブリッド)は約1800万円と日本の倍以上の価格です。
(写真は、インドのデリー郊外のレクサス販売店)
インドの「壁」
ただ、インドは企業の参入規制が多く、手続きも極めて煩雑だといわれます。電力や道路などインフラも未整備で、土地収用をめぐるトラブルや、許認可が遅れてプロジェクト自体が止まるケースも多くあるようです。小売り分野では外資規制が特に厳しいため、良品計画のインド進出は準備だけで数年かかりました。関税も高く、輸入にかかるコストもかさむため、良品計画の商品価格は日本の1.7倍です。今は1%以下の現地調達品を増やして価格を抑えるのが課題です。
こうした「壁」はあるにしても、これから様々な業界でインドに進出する日本企業が多くなるはずです。志望業界とインドとの関わりを調べたり、考えたりしてみてください。
※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから。