2017年06月27日

自動車部品大手タカタ倒産で学ぶ「最先端技術と安全」

テーマ:経済

ニュースのポイント

 自動車部品大手のタカタ(本社・東京)が、欠陥エアバッグ問題から倒産することになりました。負債総額は1兆円を超え、日本の製造業で戦後最大の経営破綻(はたん)です。これを機に、企業の責任や、最先端技術と安全のあり方について考えてみましょう。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、1面の「タカタ 負債1兆円超/更正法申請/中国資本傘下で再建」、総合面(2面)「時時刻刻・創業家経営 保身重ね失墜」、経済面(6面)「タカタ会見 主なやりとり」、オピニオン面(14面)「社説・タカタ倒産/遅きに失したけじめ」(いずれも東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
(写真は、記者会見で頭を下げるタカタの高田重久会長兼社長ら)

安全部品の世界的メーカーが……

 経緯をまとめます。タカタは、世界有数の自動車安全部品メーカーです。1933年に滋賀県で織物製造業として創業。国内のシートベルトの草分けで、1987年には運転用エアバッグシステムの量産を開始し世界的なメーカーになりました。2008年、衝突したときにエアバッグが破裂し、金属片が飛び散る欠陥があることが発覚。2009年に米国で初めての死亡事故が起きてから、因果関係がはっきりしないものも含めて世界で17人が亡くなりました。しかし、タカタの対応は遅く、説明もきちんとしないことから自動車メーカーの不信を買い、米メディアからは「殺人エアバッグ」と非難されました。2015年になってようやく全米規模のリコールに同意。リコール対象は世界で1億個規模にのぼりました。

中国企業傘下の米部品メーカーに

 タカタは26日、東京地裁に民事再生法の適用を申請して受理されました。タカタグループ15社の負債総額は約3800億円で、自動車メーカーが肩代わりしている1兆円超のリコール費用のうちタカタ負担分を確定させて積み増すと、負債総額は1兆円を超えます。タカタの資産と事業は、中国企業の傘下にある米国の自動車部品メーカー、キー・セイフティー・システムズ(KSS)が約1750億円で買い取ります。KSSはタカタの約4万6000人の従業員を受け入れ、国内の生産拠点も維持する方針です。

完全自動運転に向けて

 エアバッグは、交通事故が起きたときに人の命を守るための機具なのに、それで命を落としてしまうなんて、あってはならないことです。万が一、起きてしまったら、すみやかに原因を究明するとともに、製品を回収・修理するリコールなどの対応をして、再発を防止するのがメーカーの責務です。ところが、タカタはこの対応が遅れに遅れ、破綻に追い込まれました。

 欠陥の原因となったのは、エアバッグが開かない「不発」を防ぐための独自の画期的な技術でした。いま自動車の世界では、自動運転の技術開発が急速に進んでいます。人が運転に関わらない「完全自動運転」は最先端技術の固まりです。そこには、自動車や部品メーカーだけでなく、これまで「安全」とは縁遠かったIT企業もたくさん参入しています。2面の記事では、企業の不祥事に詳しい郷原信郎弁護士が「自動運転化が進むと、だれが、どう責任を負うのか、いままでの構図とは変わってくる。いくつもの『想定外』が出てくる」と話し、技術革新と安全確保のバランスについて議論を深めるべきだと指摘しています。

 自動車は私たちの生活を便利にし、経済を活性化する一方で、常に事故の危険もあるモノでもあります。自動車に限りません。さまざまなモノづくりのメーカーを目指す人は、今回のタカタの例をもとに、最先端の技術や便利さの追求と安全のあり方について深く考えてみることをお勧めします。

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