ニュースのポイント
このごろニュースでよく話題になる「待機児童」問題。待機児童とは、自治体が認可した保育園(認可保育園)に申し込んだのに入れず、待ちの状態になっている子どものことです。子どもが保育園に入れないと、親は思うように働けません。
安倍首相は、保育園の受け皿を2022年度末までに32万人分増やし、「待機児童ゼロ」を目指す新計画を公表しました。当初は2017年末までに「ゼロ」にする予定でしたがとても及ばず、目標達成を3年先送りすることにしました。政府としては「一億総活躍」「女性活躍推進」などと目標を掲げ、少子化に歯止めをかけつつ働く女性を増やしたがっています。しかし、肝心の保育インフラを充実させなければ、実現はとても無理。
就活で忙しい時期は「子育てなんてまだまだ遠い先のこと」と他人事に思うかもしれませんが、保育園問題はみなさんの大事な未来に直結しています。ぜひ関心を持ってください。(朝日新聞あさがくナビ副編集長・山口 真矢子)
今日取り上げるのは、総合面(3面)の「保育受け皿32万人分追加/22年度末までに『待機児童ゼロ』新計画」「(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。
(図表は、待機児童が多い自治体の例です=2017年5月31日朝日新聞朝刊掲載)
待機児童はなぜ減らない?
なかなか思うように減らない待機児童。昨年4月1日時点で全国で約2万3000人、2年連続で増えています。ただ、保育園に子どもが入れず育休をやむなく延長する人などもいるので「隠れ待機児童」は約6万7000人いるといわれています。
待機児童が減らない理由は、いろいろあります。「土地が確保できず保育園を増やせない」「施設をつくれても保育士が足りない」「保育ニーズの予測が外れ、思ったより多くの利用希望者がいた」・・・。朝日新聞が自治体を対象に行った調査によると、待機児童問題が解消しない理由は「保育ニーズが想定を上回ったから」が最も多い回答でした。
また、今まで待機児童のカウント方法が、そもそも実態に合っていませんでした。待機児童=「認可保育園」に申し込んだけれど入れなかった子の数です。「認可外の園にいるが本当は認可に移りたい」「いま育休中で復職を控えている」「求職活動を休んでいるが実は働きたい」「家から遠い園なら入れるが家の近所で空きを待っている」場合は、カウントから外してもOKとされていました。これでは、実態に合わない数字がはじき出されるのは当然です。
(図表は「保育ニーズの予測が外れる理由」です=2017年5月31日)
各地で増えるさまざまな取り組み
待機児童問題の解消のため、最近、各市町村では「小規模保育園」を増やしています。空き店舗やマンションの一室など既存の施設を活用し、少人数の子どもたちを預かる仕組みです。以前は認可外でしたが2015年春から市町村の認可事業になり、全国各地で増えています。ただし対象は、待機児童の大半を占める0~2歳まで。3歳になったら転園しなければならないので、親子ともに大変です。
また、幼稚園と保育園の機能をあわせもつ「認定こども園」も各地で急増しています。親が働いているかどうかに関係なく入園でき、在園中に親が仕事を辞めても通い続けられるメリットがあります。また、企業内に保育所を設けるケースも増えています。(写真は、都内のある小規模保育園です)
保育の質の低下が心配
急ピッチで増える保育園ですが、子どもたちの大切な命を預かる場所ですから、保育の質を保つことが第一。しかし残念ながら、中には劣悪な保育園もあります。これはかなり極端な例ですが、最近、兵庫県姫路市のある私立認定こども園で、とんでもない実態が明らかになりました。「給食のおかずは大きめのスプーン一杯程度」「給食の残りは冷蔵・冷凍庫で保存し後日また解凍して出す」「冷暖房は使わない」「園児が定員46人なのに1.5倍の70人収容」「保育士の数を水増ししてウソの報告をし、給付金を不正請求」。その上、無届けで学童保育やベビーシッター事業もしていました。まさに売り上げ至上主義の“ブラック保育園”と言っていいでしょう。私自身にも保育園に通う小さな子どもがいるため、このニュースを知った時は、恐怖と怒りで震え上がりそうになりました。
みなさんが将来安心して働き続けるためにも、身近な地域での保育園の様子、自治体の保育行政にもぜひ注目してください。
(写真は、兵庫県姫路市の認定こども園で出されていた給食の例です=姫路市提供)
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