ニュースのポイント
世界最大級の石油産出量を誇るサウジアラビアの国王が12日、約半世紀ぶりに日本を訪れます。1000人を超える王族や企業幹部らが同行し、高級ホテルや高級ハイヤーが多数予約でおさえられる事態になっています。日本にとってサウジアラビアは大事な国です。石油を輸入に頼っている日本としては、その一番の調達先であるサウジアラビアと良好な関係を保つことは必要なことです。また、石油で稼いだ巨額のお金を運用している国でもあり、日本でもこのオイルマネーに期待する金融関係者もいます。日本とつながりの深い国としては、アメリカやアジアの国々などがすぐに思い浮かびますが、サウジアラビアなど中東の国も経済面でつながりが深いことを知っておきましょう。(朝日新聞教育コーディネーター・一色 清)
今日取り上げるのは、総合面(4面)の「サウジ国王1000人訪問団/都内高級ホテルやハイヤー『特需』/12日来日46年ぶり」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。
3分の1がサウジからの輸入
サウジアラビアは、石油で豊かになっている国です。石油生産量は、アメリカと世界1、2位を争い、石油輸出量はロシアと世界1、2位を争っています。埋蔵量はベネズエラに次ぐ2位とされていて、今のまま掘り続けても72年生産し続けることができるとされています。日本が石油を輸入している相手国としてもサウジアラビアがトップで、全輸入量の3分の1くらいがサウジアラビアから運ばれてきます。
(グラフは、2016年6月9日付朝日新聞夕刊に掲載された、アメリカ・ロシア・サウジアラビアの石油生産量)
OPECのリーダー
中東やアジア、南アメリカなどの石油輸出国は、
石油輸出国機構(OPEC)という組織を作って、生産量や価格の調整をしています。このOPECのリーダー格がサウジアラビアです。今から40年以上前にあった第1次石油危機(オイルショック)は、OPECが生産を減らし、値段を4倍近くに上げたことから起こりました。輸入に頼っていた日本は、石油が確保できなくなる恐れから大混乱が起き、夜のネオンやテレビが消え、経済も大幅に落ち込みました。その教訓から、輸入先を広げようとしてきましたが、それでもOPEC加盟国からの輸入が83%にも上るのが現状です。
(写真は、第1次石油危機の節電対策で、大型ネオンが消えた銀座の街の様子)
貿易黒字がオイルマネーに
サウジアラビアは、輸出額が輸入額の2倍くらいある貿易黒字国です。貿易で稼いだお金がオイルマネーとよばれ、世界に投資されています。日本の株式市場にも投資していて、理由がよくわからない株価上昇の時などに「オイルマネーが入った」などと噂されます。
サウジで活躍する日本人ビジネスパーソン
こうしたつながりがあるますので、日本とのビジネスは盛んです。戒律の厳しいイスラム教国ですが、それでも1200人以上の日本人が住んでいます。家族同伴で行っている人はごくわずかで、ほとんどは単身のビジネスパーソンです。特に商社や石油開発、石油化学、プラント建設、海水淡水化設備などのインフラ、金融などの関係者が駐在しています。熱い砂漠の国で娯楽は少なく、お酒も飲めません。日本人の生活環境としては快適とは言えないでしょうが、こうした人たちのビジネスのおかげで私たちの暮らしが成り立っています。サウジアラビアの訪日団のニュースに注目しながら、海外で働く自分の姿を想像してみてはどうでしょう。楽しそうなイメージがわくなら、海外勤務に向いていると言えそうです。
(写真は、サウジアラビアの首都リヤドの夜景。中央はキングダムタワー)
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