ニュースのポイント
知らないうちに、世の中を大きく変えてしまう技術が使われ始めていることがあります。1990年代、私がインターネットを知ったのはアメリカではもう普通の人が使い始めていた頃でした。今なら仮想通貨で使われている「ブロックチェーン」という技術がそれにあたるのではないでしょうか。この技術を使って、今秋から低コストで瞬間的に国内外に送金できるようになると、国内の47金融機関が発表しました。
ブロックチェーン技術は送金だけでなく、価値あるものを安全に低コストで移転させることができます。これからの社会を大きく変えるかもしれない技術が、そろりと実用化されようとしているのです。こういう最先端の技術の動向に関心を持っていると、使える人材と思われるはずです。(朝日新聞教育コーディネーター・一色 清)
今日取り上げるのは、経済面(9面)の「低コスト送金システム開発/りそな銀など、秋にも実用化」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。
(写真は、2016年11月に仮想通貨の実験が行われた山陰合同銀行の社員食堂。会計はスマホをタブレットにかざすだけ。ブロックチェーン同様の技術が使われました)
ブロックチェーンって何?
ブロックチェーンは、サトシ・ナカモトという謎の人物が2009年に考え出した仮想通貨
ビットコインに使われている中核技術です。ざっくり言うと、世界にある多数のパソコンをネットワークでつなぎ、参加者どうしで監視し合いながら取引をするシステムのこと。取引の全データはブロックごとに分けて暗号化され、参加者それぞれの「台帳」に記録されます。記録がブロックごとに鎖(チェーン)のようにつながる構造のため、ブロックチェーンと呼ばれます。この技術を応用すれば、安全性を保ちながら瞬時にお金の取引ができ、集中管理用の大型コンピュータも不要で、大幅に経費が節減できます。
朝日新聞の記事データベースを検索すると、「ブロックチェーン」という言葉が初めて出てくるのが2015年12月。まだ、一般の人は聞き慣れない言葉だろうと思います。
(図は、2016年7月23日朝日新聞朝刊掲載「ビットコインのしくみを理解」より)
ベンチャー企業も設立ラッシュ
ただ実際には、世の中は激しく動いています。昨年4月には、日本ブロックチェーン協会が誕生、昨年11月にはシンガポールの中央銀行がブロックチェーンを使った実験開始を宣言、12月には日本銀行も欧州中央銀行と共同で研究を始めると発表しました。そうした中で、実用化の第一歩として秋には、多くの金融機関が低コスト送金を始めるわけです。この技術をベースにしたベンチャー企業も雨後の竹の子のように設立されていて、投資ファンドなどからの投融資が盛んにおこなわれているようです。将来は、マネーを含めたあらゆる価値あるモノの取引や証明が、ブロックチェーン技術でおこなわれる可能性があります。経済産業省は、将来のブロックチェーン関連の市場規模を67兆円とはじいています。
「フィンテック」の中核になるかも
最近、ファイナンスとテクノロジーを合わせた「
フィンテック」という言葉がよく使われるようになりました。金融×ITの組み合わせで、新サービスが続々と誕生しているのですが、幅広すぎてよく分かりませんでした。ブロックチェーンなら具体的な技術なので、イメージがわきやすいですね。フィンテックの中核がブロックチェーン技術になってくるかもしれません。
ちなみに、ビットコインの値段は、2014年にビットコインの取引所が破綻したため一時低迷していましたが、最近ぐんぐん上がっています。これもブロックチェーン技術に注目が集まり、ビットコインの信頼性が高まっているためだとみられています。
知っておくといい知識
ビジネスは、社会に必要とされる新しい技術やサービス、モデルをいかに早く世に送り出すか、の競争という側面があります。そのためには、人がまだ知らなかったり、気づいていなかったりする技術やサービス、モデルの研究開発にいち早く取り組む必要があります。ブロックチェーンはビジネスとして今から取り組むには遅いかもしれませんが、就活にあたって知っておくといい知識だと思います。まだみんながみんな知っているわけではない技術ですので、勉強してみて、その可能性と重要性について話せると熱心に耳を傾けてくれる人がいると思います。
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