ニュースのポイント
連合と
経団連の労使トップが東京都内で会談し、今年の
春闘(しゅんとう)が本格的にスタートしました。春闘とは、春に賃金改定を巡って
労働組合(労組=ろうそ)が会社と交渉することをいいます。労働組合に入っている人は年々減り、働く人の17%に過ぎません。以前に比べて、春闘の持つ意味は小さくなりましたが、それでもここで決まる賃金が労働組合に入っていない人の賃金にも影響を与えますので、注目せざるを得ません。就職前から、賃金の決まり方くらいは常識として知っておきましょう。(朝日新聞教育コーディネーター・一色 清)
今日取り上げるのは、総合面(2面)の「春闘トランプ氏の影/労使が政策警戒/賃上げ不透明/日本型雇用も壁/長時間労働 是正に光/連合『方向性、かなりの部分一致』」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。
(写真は、会談前にあいさつを交わす経団連の榊原定征会長=左と、連合の神津里季生会長です)
春闘は1955年に始まった
ほとんどの会社は4月から新年度に入りますので、4月から賃金を改定しようとします。新しい賃金体系は、労働組合のある会社は労働組合と交渉して決めます。この交渉は2~3月におこなわれるのが普通です。労組側は、上部団体の
産業別組合やそのさらに上部団体である連合などの力を借りて、よりいい労働条件を会社から得ようとします。こうした一連の交渉を春闘と言います。
労働組合のない会社は、業績や世間の相場などを参考にしながら、会社が決めて従業員はそれに従うことになります。春闘は1955年に始まり、今も続いています。
(写真は、2016年の春闘で企業の賃上げ回答を集計する金属労協の様子です)
定昇とベアはどこが違う?
なぜ毎年賃金改訂が必要なのかというと、会社の業績は1年ごとにしめますので、業績を賃金に反映させようとすれば毎年新しい賃金体系にするのが合理的だからです。会社員にとって、上がる部分は2種類に分けられます。
定期昇給(定昇)と
ベースアップ(ベア)です。定期昇給は、1年たつと自動的に上がる部分です。日本のほとんどの会社は賃金に
年功序列の要素を取り入れていますので、1年たつと階段をひとつ上り、1年先輩が1年前にもらっていた金額をもらうことになります。この定昇は社員個人にとっては「給料が増えた」ことになりますが、毎年定年退職者がいるので会社全体の支払額は前年と変わりません。ベアは、それにプラスして上がる部分です。定昇にベアも加わると、会社全体の支払額が増えることになります。
ベアかボーナスか
定昇とベアをあわせた日本の賃上げ率は、1975年までは2桁の伸びも珍しくなかったのですが、それ以降下がり、特にバブル崩壊以降は5%以内となり、2000年代後半になるとベアゼロが続くようになりました。最近はベアが復活しましたが、それでも賃上げ率は2%程度にとどまっています。今年も大幅な賃上げは期待できそうにありません。労組と会社の論点は、ベアによる賃上げか
ボーナスによる年収増かに移っています。ベアは業績が悪くなっても下げることが難しいことや退職金の増加にもつながることなどから、労組はベアを上げるよう求めています。
一方、会社は、ボーナスなら業績が悪くなったときにはすぐに減らせるので、ボーナスを含めた年収増で対応したい考えです。このほか、長時間労働を是正するための規制や非正社員の処遇改善も論点です。
春闘から経済を知る
春闘は、背景に日本や世界の経済があります。もちろん、足元の経済がよければ会社は気前がよくなりますし、悪ければ渋くなります。加えてこれから先の経済も見ています。今は、アメリカにトランプ大統領が誕生したばかりで、経済の先行きはとても不透明です。アメリカの様子を横目で見ながらの春闘になりそうです。春闘はこうした経済情勢が詰まった闘いです。今、日本経済がどういう状況にあるかとか、これからどうなりそうなのかを知る材料にもなります。
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