ニュースのポイント
現在は東京から金沢までの北陸新幹線を延伸するルートが決まりました。福井県敦賀市から同県小浜市を通って京都市に至るルートです。大都市と地方都市を結ぶ「整備新幹線」は、北海道から九州まで5線の計画(
地図参照)のうち、東北新幹線と九州新幹線・鹿児島ルートの2線が全線開通済みで、残りは3線です。新幹線が通ると人の移動が活発になり、流れも変わります。都市の将来の明暗を左右することもあります。業界への影響も考えましょう。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、総合面(7面)の「教えて!整備新幹線④フリーゲージトレイン、実現するの?」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。この連載記事などをもとに、整備新幹線の現状と課題などをまとめます。
整備新幹線とは
整備新幹線とは、全国新幹線鉄道整備法に基づき1973年に整備計画が決まった5線です。40年以上前に計画したのに、なぜまだできていないのか。JR各社の前身の国鉄が大きな借金を抱え、1982年に計画が凍結されました。沿線自治体などは反発しましたが、国も多額の予算を投入するため運輸省(現国土交通省)、大蔵省(現財務省)は抵抗しました。1987年に国鉄が民営化されてJRになったあと凍結が解かれ、1989年に北陸新幹線(当時の呼び名は「長野新幹線」)の高崎-軽井沢間の工事が始まりました。それから順次着工され、2010年に東北新幹線の盛岡-新青森間、2011年に九州新幹線・鹿児島ルート、2015年に北陸新幹線の東京-金沢間がそれぞれ開業。今年の3月、北海道新幹線の新青森-新函館北斗間が開業したのは記憶に新しいところです。
新幹線が通ると
新幹線が通ると、沿線自治体にはどんなメリットがあるのでしょうか。新幹線開通で、東京からかかる時間が約4時間から約2時間半に縮まった金沢市では、企業の進出や観光客が増えました。JR金沢駅前の路線価は3年前に全国の都道府県庁所在地で上昇率ナンバーワンに。2016年も13.6%アップして大阪、東京などに次ぐ5番目の上昇率でした。九州新幹線は乗客がほぼ右肩上がりで増え、北海道新幹線も乗客数はJRの予想を上回っています。
一方でルートから外れた都市は、新幹線開通でかえって不便になることもあります。新幹線はスピードを重視して中核都市をなるべく直線で結ぶようにつくられるため、駅が遠くにできたり、ローカル線が廃止されたりするためです。
航空業界にも影響
北陸新幹線のうち金沢から福井県敦賀まではすでに着工しています。今回決まったのは、敦賀から京都までの延伸ルートです。候補は3ルートあり、それぞれの自治体や地元財界が誘致合戦を繰り広げましたが、与党のプロジェクトチームが経済効果や所要時間などの費用対効果を検討し、「小浜・京都ルート」に決めました(
地図参照)。京都-新大阪間を東海道新幹線の北側と南側のどちらを通すかについては、今年度中に決める予定。ただ建設費のめどは立っておらず、開業は2046年ごろの予定ですが、着工を早めようという意見もあります。
各業界への影響を考えましょう。整備新幹線は国交省の
外郭団体が建設しJRが運営します。今回決まったルートはJR西日本ですが、東京からつながりますからJR東日本にとっても大きな決定です。一方で、東京-金沢間の全線開通で、羽田空港と小松空港(石川県)、富山空港の航空便は利用者が大きく減りました。全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)にとってはマイナスの影響です。石川県や金沢市が観光ブームに沸いたように、観光業界にとっては新たなチャンス到来です。みなさんも自分の志望業界との関わりについて考えてみてください。
※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みは
こちらから。