2016年12月09日

来年度の税制改正まとまる・・・税金の全体像を知ろう

テーマ:政治

ニュースのポイント

 自民党と公明党は、税の仕組みを見直す2017年度の与党税制改正大綱をまとめました。翌年度からの税金については、毎年、予算編成と並行して12月に固められます。まず与党が決め、それをもとに政府が決め、それを年明けの通常国会にかけて最終的に決まります。ただ、与党が決めたものが最後まで残ることが多く、与党の税制改正大綱が注目されます。今回は、どちらかといえば小幅な変更が多く、大学生の生活が大きく変わるようなものはありませんが、税制は国の運営の要ですので、社会に出ようとする人は基本的なところは知っておいたほうがいいと思います。(朝日新聞教育コーディネーター・一色 清)

 今日取り上げるのは、1面の「税収減避け小幅な変更 与党、税制改正大綱を決定」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。

(写真は、与党大綱がまとまった後に会見する自民党・宮沢洋一税調会長=手前と、公明党・斉藤鉄夫税調会長です)

所得の再分配が大きな役割

まずは、日本の税金の種類をまとめます。

 税金には、かける主体によって2種類あります。
◇国税=国の収入(所得税、法人税、相続税、消費税など)
◇地方税=地方自治体の収入(住民税、固定資産税、地方消費税など)
日本の税収は国と地方を合わせると、約100兆円になります。

かける対象によれば3種類に分けることができます。
◇所得課税=個人や法人の所得に直接かけるもの
(所得税、法人税、住民税など)
◇資産課税=個人や法人が持っている土地などの資産に直接かけるもの
(相続税、贈与税、固定資産税など)
◇消費課税=モノやサービスの代金に含めて間接的にかけるもの
(消費税、酒税、たばこ税、ガソリン税など)

所得の再分配が大きな役割

 税金は現在、46種類もあります。その中で最も金額が大きいのが所得税・住民税で約30%、次が法人税・法人住民税で約21%、次が消費税で約17%となっています。

 税金の役割の大きなものは、「所得再分配」です。つまり、たくさんの収入のある人からは一定割合より多く、少ない収入の人からは一定割合より少なくとります。そして、集めた税金を収入の少ない人により役立つように使うことで、格差を小さくするのです。たとえば、所得税の税率は全部で7段階に分かれており、年収4000万円以上の所得が最高で45%ですが、年収195万円以下なら5%です。年収が上がるほど税率が高くなっています。このように年収が高くなるほど税率が高くなることを累進課税といいます。ただ、最高税率は今から33年前まで75%だった時期もあり、その後徐々に下がってきたため、お金持ちに甘くなっているという声があります。

配偶者控除の上限引き上げ

 今回の税制改正の中では、所得税の配偶者控除の見直しが、みなさんにも近く関係してくる可能性があります。これまでは、たとえば夫婦共働きで夫が正社員、妻がパートで働いている場合、妻が年収103万円までなら夫が納める所得税が少なくて済んでいました。ただ、このため妻は稼ぎを103万円までにセーブしようということになりがちで、女性活躍社会に逆行していると考えられました。
 当初、国は配偶者控除を廃止することも検討していましたが、専業主婦世帯の反発を避けて今回は廃止を見送り、上限を150万円までに引き上げるにとどまりました。一方で、これまでは対象者全員にあったこの特典を年収1120万円以上の人にはないか、より少なくすることにしました。これは、150万円まで引き上げることによって減る税収を、一定年収以上の人は納める税金が増えるようにして、トントンにしようという狙いです。

 他にも、ビール類の税率の違いをなくす方向をはっきりさせ、ビールは減税、発泡酒と第3のビールは増税となるなど、改正点はいろいろとありますが、例年に比べて小幅な変更になっています。

税金は大枠から勉強を

 まだ社会に出ていない大学生は税金についてピンとこないと思いますが、社会人になれば、自分自身が納税者になりますし、仕事の上でも税金を意識する機会があると思います。最初はとてもややこしく感じる税金の仕組みですが、知っていると知らないのとでは、自分自身の生活でも仕事でも大違いだと思います。ちゃんと理解するためには、遠回りのようですが、税金についての考え方や全体像など大枠から勉強するといいと思います。大枠が分かれば、毎年の税制改正の議論も、頭にすんなりと入るようになると思います。

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